表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
124/273

ベスト8の意気込みの巻

『それでは最初にユミ選手、お願いします』 


『新しい世界にも慣れてきて、いよいよ本格的に始動すべき時が来た。手始めにこの大会を順当に制覇する。優勝は間違いなく私のものだ。なぜなら勇者に負けはないからだ』


 ユミさんは自信たっぷりだ。自分が主役だと信じて疑わない。もちろんそれだけの力と立場ではある。


『そうなると、気になる選手も特にいませんか?』


『当然だ。誰と戦っても勝てるからな』


 優勝候補の一人だったオカ・チカに完勝したことで、神々からの加護が圧倒的なものであると確信したようだ。100回戦っても私では勝てない。




『次はサキー選手、お願いします』


『四年に一度のスーパー闘技大会……今回は特にハイレベルなメンバーが揃った。王者は永遠に語り継がれる存在になると思うし、それが私になるということも今さら語る必要はない』


 サキーも譲らない。優勝したら私との結婚を認めるとお父さんたちに言われて、やる気に満ち溢れている。


『誰と戦うことになっても構わないが……ジャッキーと当たってしまった時は話し合わないといけないな』


 私と戦うのが一番嫌だという。でも私は知っている。サキーが最も恐れているのはリョウオンだ。アンデッドをとても怖がるサキーだから、冥界と繋がっていると噂されるリョウオンは最大の天敵だ。




『続きましてキョーエン選手……』


『ベスト8?優勝?興味ねーな。俺っちが望んでいるのは刺激的な戦い、それだけだよ』


 思っていた通り、勝利や栄光よりも戦いそのものが目的のようだ。つまらない勝利よりも満足した敗北を求める、狂った人間だ。


『この中に戦いたい相手はいますか?』


『そうだな。面白そうなのは………ジャクリーン・ビューティかな。こいつとなら楽しめそうだ。もし対戦が決まったら、デスマッチでやろうや』


 一番嫌な相手に目をつけられてしまった。何を言われても絶対デスマッチはやらない。お金を積まれても断る。




『……フランシーヌ選手、どうぞ』


『私はかつて間違った方法で世界を正そうとしました。ですが今は王国と協力して平和な世を実現するために戦います。この大会の賞金も全て寄付させていただきます』


 危険な思想は消えてもフランシーヌさんが弱くなったということはない。王族やマキと力を合わせて多くの仕事を成し遂げていた。


『残念なことに、この中には野蛮で残虐な選手たちもいます。そう、これまでの私のように。闇から救われた者として、今度は私が正義を教え改心させる番です!』


『力強い宣言、ありがとうございました』


 フランシーヌさんが触れた人物たちは、名前を出さなくても想像がつく。フランシーヌさんの熱い気持ちはわかるけど、安全のためにもあまり関わってほしくない。




『次は……うっ!』


『……………』


 リョウオンは無言のままだ。顔は真っ白、パーティーだというのに穴がいくつも開いた布の服を着ている。


『……………フッ』


 誰もいないはずの空間に向かって笑顔を見せた。私たちには見たり聞いたりできないものとリョウオンは話ができるようで、サキーはやっぱり震えていた。もちろん私も人のことは言えず、顔が真っ青になった。




『えっと……先に進みましょう。マーキュリー選手!』


『………私の優勝はすでに決まっている』


 リョウオン以上に不気味な存在だ。シューター王子を必要以上に破壊したことよりも、マキの治癒魔法が無効化される謎の力を持っていることがとにかく不気味だ。


『優勝に向けて一番の難敵は誰だと思っていますか?』


『戦ってみなければわからない。しかし気になる者はいる………』


 そう言ったマーキュリーの指の先には………私がいた。まさか私ではないだろうと油断していたからびっくりだ。


(キョーエンの次はマーキュリー………)


 厄介な選手たちに目をつけられた。でももしかすると『こいつなら簡単に倒せそう』、そんな単純な理由かもしれない。




『エーベル選手、お願いします!』


『……つい最近まで私は極悪軍団の一人として皆さんに迷惑ばかりかけていました。罪が消えることはありませんが、償うためにはたくさんの人を救う……それが一番だと思い、修行を積んできました』


 先代大聖女の力がどれほどのものだったのか、全てが明らかになるのはこれからだ。一対一のリング上で通用するのか、エーベルさんにとって試練の時だ。


『優勝の自信はありますか?』


『私の力は日に日に増しています。明日の二回戦さえ突破できれば、決勝戦では最高の戦いを見せることができるでしょう』


 トーゴーの術やハウス・オブ・ホーリーの悪の連携がないほうが強い。正統派の難敵になった。




 最後はいよいよ私だ。言いたいことはだいたいまとまっているから、落ち着いて話すだけだ。


『では……全選手終わりましたので、ここからは質問の時間にしたいと思います』


「あれっ!?」


 あまりにも自然に飛ばされた。私の存在はなかったことにされていた。



「コラァッ!!うちのジャッキーがまだだろうが!」


「時間が押しているんだ、仕方ないだろう」


 お父さんと王様の喧嘩が始まった。私を無視する流れは王様の指示だとはっきりしていたからだ。


「いろいろ聞くことがあるだろうが!意気込みやライバルへの思い……」


「別にないな。ここまで生き残ったことすら奇跡、明日は誰と戦っても敗退確実だと皆がわかっている。くそっ、どうしてこんなやつがベスト8で私の息子たちは……」


 想像できた逆恨みだった。関わるだけ無駄だから私は大人しくしているつもりでいた。しかしここで我慢できたのは私だけだった。



「ほら、さっさと次へ進め………ぶっ!!」


 王様の顔に大きなケーキが直撃した。すごい勢いで飛んできたから、王様は近くにあったテーブルを巻き込んで倒れた。テーブルの料理も散乱した。



「あ〜あ、せっかくのケーキが臭い汚物といっしょになっちゃった……もう食べられないや」


 犯人はマキだった。相手が王様でもお構いなしのケーキ投げでダウンさせた。


「だ、大聖女様!?」


「何をなさって………ぎゃっ!!」


 王様の周りの兵士たちや進行役にも椅子やテーブルが投げられた。ラームとマユだった。


「妹様に続け――――――っ!!」


「ジャッキーさんを馬鹿にする連中を懲らしめろ!」


 お父さんはケーキまみれの王様を馬乗りになって殴り続けている。突然の騒ぎに招待客の王族や貴族たちは慌てて逃げ始めた。



「ジャッキーのために私も戦うぞ!」


「面白そうな遊びじゃないか!このキョーエンも加わらせろ――――――っ!」


 私はこの騒動の輪に入らず、遠くで小さくなっていた。私が原因と言えなくもないけど、ここまで派手な乱闘になってしまったら止めることはできない。離れたところから見ているだけだった。

 

(評価ポイントやブックマーク数がもっと欲しいのではないかという問いに)その問いかけ、愚問ではございませんか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ