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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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大聖女よりも強い力の巻

『ほ……本日最後の試合はマーキュリーが圧勝!シューター王子は力の差を見せつけられ、完全敗北を喫してしまいました……!』


「聖女隊、早くしろ!全力で癒やせ!」


「はいっ!」 「王子様!」


 全身を破壊されたシューター王子を治癒魔法で治す。最上級の回復薬もたくさん用意された。ところがリングがいつまでたっても騒がしいままだ。



「……治りません!骨や皮膚が修復されません!」


「なんだと!?死んだ人間には魔法の効果がないが、シューターは呼吸をしているだろうが!」


 聖女隊が一斉に魔法を唱えても回復しない。ついに兵士たちがマキを呼びに来た。


「大聖女様!あなたのお力が必要になりました!どうか王子を癒やしてください!」


 聖女が何人集まってもマキのほうが上だ。マキは席を立ち、リングに向かった。



「うわっ……近くで見るとすごいね。生きているのが不思議なくらいボロボロだ」


「おおっ!マキナ様!」


 マキが手を伸ばす。一瞬で痛みも傷も完全に治す、奇跡の力の持ち主の魔法が発動したことで皆が安堵した。直視できなかったほどの顔が元の美男子に戻っていった。



「これで助かる!よかった!」


「そのうち目を覚ますよ………えっ?」


 無事に治った……はずだった。ところが突然シューター王子が痙攣し、


「ごばっ!!」


 大量の出血と共に再び顔面が崩壊した。頬や鼻が陥没し、歯がなくなった。マキが魔法を唱える前と同じ状態になってしまった。



「……内臓や手足は治ったから死ぬことはないよ。でも顔や頭はわたしの魔法でも………」


「大聖女様の治癒魔法が効かないなんて!いや、一瞬回復したように見えた!何が起きている!?」


 マキはちゃんと王子を治そうとした。なぜ完璧に癒やすことができなかったのか、リング上は混乱していた。マーキュリーの使っていた魔力に理由があるのかもしれない。



「あいつは異常だ。リングを戦場と勘違いしている」


「戦場?一方的すぎて処刑場に見えたけどな。それに勇者だってオカ・チカを一発で仕留め、キョーエンはアブコを血祭りだっただろ」


 ベスト8が決まった。ユミさんやキョーエンに比べたらマーキュリーはまだ勝てそう、なんて試合前に考えていた私は甘かった。全員強敵でしかも危険だ。


「今日のメンバーだったら明日敗退だと断言できるのはジャクリーン・ビューティくらいだな」


「あれなら私でも勝てそうよ」


 観客にすら勝てると言われるくらいだ。選手たちはもっと楽勝だと思っていることだろう。二回戦は私と当たることを誰もが願っているはずだ。



『えっと……ゲンキ王は王子と共に裏へ向かってしまったので、王様の挨拶は中止とします。なお、優勝者を予想するくじは今から明日の朝まで販売します!』


 人気者のシューター王子が大聖女の力すら跳ね返すほどの傷を負った。命の危機は去ったとしても、その影響で派手なセレモニーの数々は全てなくなった。ただし夜にお城で予定されていたパーティーは開催されるそうだ。


『明日は前座試合が数試合、その後に決勝トーナメント二回戦となります!前座は予選や一回戦で敗退した選手たちで行われるはずでしたが、こちらも大きな変更を迫られそうです!』


 予選ではサキーが私のためにたくさんの選手を倒し、一回戦で負けたオカ・チカとシューター王子は明日試合をするのは難しそうという状況だ。死人が出ていないだけましか。


(……私が知らないだけで、どこかで……)


 一次予選の大乱闘で命を落とした選手もいるかもしれない。激しい一日だったけど、まだ初日だ。最終日まで私は残れるのか………トーナメントに、ではなく、この世に。






「大会後はぜひ我がギルドに来ませんか?」


「私の息子を紹介させてください!」


 パーティーにはジェイピー王国以外の国からも大勢の王族や貴族、各界の大物たちが出席していた。決勝トーナメント進出者たちはいろんな商談や縁談を持ちかけられている。



「……今回も私のところには人が来ないね……」


 私には一人も近寄らない。しかし前回とは違う理由でそうなっていた。



「ジャッキー様!お肉がなくなったから持ってきます!」


「あの魚珍しいですね。いっしょに食べましょう」


 今回はラームやマユ、ルリさんの参加も許されていた。みんなで私を囲んで、誰も寄せつけない。マキとサキーは私に近づこうとした人に先に話しかけ、私の前でカットした。それぞれが役割を果たしながら『私を守る壁』になっていた。


「ジャッキーさんと自分の息子や部下を結婚させようとする権力者たちはたくさんいることでしょう」


「断ることが苦手なジャクリーン様のためには、その機会を作らせなければよいのです。わたくしたちが強固な城壁となることで!」


 異国の地や他のギルドに行く気はないし、縁談を受けるつもりもない。それでも断るたびに申し訳ないという気持ちになるだろうから、みんなに守ってもらうのはありがたいことだった。


 だけど誰も近づけないようにするのはやっぱりやりすぎだ。徹底的なガードは逆に目立ち、「美少女を何人もそばに置いているあいつはいったい何者だろう」という声が何度も聞こえてきた。




(……あっちでもこっちでも偽物の愛ばかり。自分が得をすることだけを考えている……)


 彼女が探しているのは真の愛だった。この場にはないと諦めかけていた時、マーキュリーはそれを見つけた。


(………!!やはり彼女が中心に………!ジャクリーン・ビューティ………彼女なら………!)




 パーティーが終わりに近づくと、ベスト8の選手たちは前に出るように言われた。皆の前で抱負を語り、戦いへの期待を高めるためだった。互いへの挑発や悪口で小競り合いもこの舞台の名物だった。

 

 小説家になろうの朝はブックマーク&高評価から始まる!(ディック東郷のX風に)

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