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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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金の雨を降らせる一撃の巻

『ジャクリーン・ビューティがガーバアに勝利して二回戦進出!続く第2試合はユミ対オカ・チカ、異世界から召喚された勇者ユミが他国のS級冒険者オカ・チカ相手にどう戦うか注目です!』


 オカ・チカは経験豊富な男性冒険者だ。体格はユミさんより一回り以上大きく、筋肉質の締まった身体だった。


「神々に愛された勇者とはいえ、簡単に勝てる相手ではない。修行と実戦を重ねていけばやがては上回るだろうが、今戦うとなると……」


「オカ・チカが上………」


 私たちとしばらくの間訓練をして、ユミさんはとても強くなった。ただし訓練は訓練に過ぎず、互いに力を抑えながら戦っている。本気の試合は今日が初めてで、それが原因で負けることはありえる話だ。



『勇者ユミと共にリングに向かうのは同じく転移者、大賢者になれる資質を持つキヨ!ユミのサポート役として外から支えます!』


 キヨさんは大会に出場しなかった。自分が戦うよりユミさんを助けるほうがいいそうだ。


「サポートとはいっても……助言や指示を出すくらいしかやることはない。手助けしたら失格だ」


 リングでの戦いに長けた人間をそばに置くべきと言われても、キヨさんが譲らなかった。戦術や作戦の勉強はしっかりやったから問題ないと主張し、受け入れられた。


「しかしユミさんは初陣です。一方的に攻めて圧勝できれば問題ありませんが、もし苦戦したら……」


「適切なアドバイスが必要だ。やはり経験の浅いキヨにそれができるかどうか……」


 全てがやってみなければわからない一戦だ。ユミさんもオカ・チカも優勝候補だから、しっかり観戦しよう。



「わたくしの手作りサンドイッチです!激戦の疲れを癒やしてください!」


「お姉ちゃん!牛の串焼き買ってきたよ!」


 瞬きすらしないで試合を見るつもりだったのに、みんなが食べ物や飲み物をどんどん持ってきた。試合よりも家族や友人と大闘技場の雰囲気を楽しんでいる人たちと同じような感じになってしまった。


「おお、うまそうだな。私も何か食べるか」


「お酒を買ってきましょう」


 シード選手たちは真面目に観戦しているのにと思っていたら、サキーとフランシーヌさんを巻き込むことに成功した。


 

『試合開始!いきなり激しい打ち合いだ!』


「ジャクリーン様…はい、あーん」


「あむっ………おいしいっ!」


 ルリさんに食べさせてもらい、だらしない顔でだらしない声を出す私。熱気あふれる会場とは別の世界にいた。


「こっちもおいしいですよ!はいっ!」


「むぐぐ………」


 明日以降の戦いよりも目の前のごちそうに夢中な時点で、私に優勝する資格などないのかもしれない。




「はっ!てやっ!」


「……やはり勇者、なかなか手強いな。しかしこの程度ならどこにでもいる。ジャクリーン・ビューティみたいなダメ人間相手なら通用するだろうが……」


 オカ・チカはユミさんの攻撃を避けず、あえて受け止めたり食らったりしていた。威力が弱いから回避する必要がないというアピールだ。


『殺傷力の低い剣を使うのがこの戦いのルール!ならばと打撃技を中心にしてもオカ・チカは余裕!』



 まだ本気を出していないオカ・チカに対し、攻め疲れたのかユミさんは後退する。反撃を警戒していた。


『攻撃が当たっているのは勇者ユミのほうですが、あまり効いていない!一方のオカ・チカは超強力な一撃必殺技を持っているとのこと!魔法や防具で守りを固めていても簡単に貫通するそうです!』


「オレのパワーを恐れているのはわかっている。オレはお前のパンチなら1000発くらい耐えられるが、お前は一撃で失神負けだ。勝てないのがわかっただろう」


「………」


「勇者だからギブアップは許されないのか?悲しいな。だったらオレがお前を倒し、勇者の称号を引き継いでやるよ。これまでの転移者のように田舎で大人しく畑でも耕してろコノヤロー!」


 オカ・チカは勝利を確信していた。相手の攻撃が弱く、自分を倒す方法がないとはっきりしたなら勝ち誇るのも無理はない。



「ふあ〜〜〜っ………」


「眠くなっちゃいましたか?今日は朝から長い戦いでしたからね。しかもお腹いっぱいになるまで食べて……」


「おまけにリング上は弱すぎる連中が遊んでるからつまんないよね。あんな雑魚どもの試合は見る価値がないし……いっしょに寝ようよ、お姉ちゃん」


 ユミさんもオカ・チカも私よりずっと強い。どちらと戦っても必ず負けるのだから、確かに見なくてもいいのかもしれない。




「ユミちゃん!あいつの力は……」


「想像以上だ。このままじゃ勝てない」


 弱音がこぼれてまさかの降参かと思われた瞬間、それ以上に衝撃の言葉が飛び出した。



「全力を出す必要はないが……よし、半分だ。50パーセントくらい使おう、勇者の力を!」


「そうだね。負けちゃったら意味がない」 


 トーナメントを勝ち抜くためには最初から100の力を出すべきではないと言われている。奥の手をギリギリまで隠し、体力を温存しながら戦うのが理想だ。しかしこれはあくまで理想に過ぎず、毎試合全力でいかないと勝ち進めない。油断したら簡単に負ける。


 私たちのような並の人間と違うのが大聖女のマキ、そして勇者のユミさんだ。勝ち負けを争うのではなく、勝ち方を選べるのだから恐ろしい。



『これは驚いた!勇者ユミ、力を半分も出していなかったというのか!?』


「……フン!こんなの虚勢だ!黙らせてやる!」


 怒ったオカ・チカは必殺技の構えに入った。キヨさんと話していたことで背中を向ける形になっていたユミさんの腕を掴み、そのまま自分のほうに引き寄せた。


「終わりだ!『ゴールド・ラッシュ』!」


 この技で多くの魔物を倒し、オカ・チカはお金持ちになったという。本人が言うには、まるで『金の雨が降る』ほどに。



『至近距離のユミの首を狩る!これがオカ・チカのゴールドラッシュだ――――――っ!』


 腕が斧のようになった。ツミオさんやエンスケと似た必殺技だけど、威力はオカ・チカのほうが遥かに上だった。私だったら首が折れるどころか、もげていたと思う。



「よしっ!完璧な手応え………」


 オカ・チカの最高の一撃が炸裂した。ところが、


「………こんなものか。優勝候補の必殺技は」


「な……に………」


「だが悪いのは技じゃない。使い手だ」


 ユミさんは無傷だった。一度見ただけで覚えたのか、オカ・チカの腕を掴んで、ゴールド・ラッシュを使ってみせた。



「たあっ!」


 細い腕から放たれた攻撃は、とても威力があるようには見えなかった。しかし神々の加護と勇者の力は、鍛えられた筋肉や経験の差を軽々と打ち破った。


「ブゴォッ!!」


『ふ……吹き飛んだっ!リングの端の柱まで飛んで……頭を打ってダウン!審判が確認に向かいますが、オカ・チカは立ち上がれそうにありません!』


 すぐに試合は止められた。一撃で失神勝ちを決めたのはユミさんのほうだった。

 オカ・チカ……レインメーカー。次にAEWに引き抜かれるレスラーはどこの団体の誰になるのでしょうか。




 横浜DeNAベイスターズは王手をかけてからの連敗で窮地に。1敗目は守備の乱れ、2敗目は併殺祭りに采配ミスと我々のよく知っている横浜が帰ってきました。調子が悪いというよりは明らかにガス欠になっている選手もいて、いよいよ限界なのでしょうか。

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