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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第一章 大聖女マキナ・ビューティ編
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新加入メンバーの巻

「あなた方がマユに薬草を譲っていただき、共に運んでいただいたおかげで窮地を凌ぐことができました。皆を代表して私から感謝申し上げます」


 薬草による治療が落ち着くと、私とラームはこの集落の『女王』と呼ばれるスライムのもとに呼ばれた。とても美人で豪華な冠やマントを着けてはいるけど、それ以外はマユたちと同じで何も着ていない。スライムだから服なんかいらないのは当たり前と言えば当たり前だ。


 成人、しかも立派な身体の持ち主が全裸なのにどうしてほとんど何も感じないのか。いくら美人でも全身ぷるぷるボディで鮮やかな体色、理由としてはこれで十分だ。まあこういうのに興奮する珍しい趣味の人も少しはいる。



「お二人にお礼の品を差し上げたいのですが……」


「いや、お気遣いなく。見返りが欲しくてやったことではありませんから」


 私がやりたいからやった、それだけだ。なのに何かを貰うなんて間違っている。


「それよりも気をつけてください。敵はまた近いうちに襲ってくるかもしれません。今度はしっかり備えをして、いつ現れてもいいように待ち構えているべきです」


「ご忠告ありがとうございます。では平和が戻ったとき、改めてもてなしの場を設けたいと思います」


 もてなし、か。スライムの考えるごちそうとはどんなものだろう?どんなパーティーになるんだろう?これも気持ちだけ受け取ったほうが安全なはずだけど、見てみたい気もした。




「この薬草は必要とする者全員に行き届きましたが、まだ余っているほどです。どうぞ必要な分を持ち帰ってください」


「また何かあったときのために備蓄しておいたほうが………あっ!!私たちもこれを集める仕事の最中だった!」


「特別な薬草ならギルドに報告しないといけませんからね………あっ!!ギルドの時間が……!」


 私とラームは同じ瞬間に大事なことを思い出した。私たちのギルドはサンシーロさんが一人で事務仕事をしている。交替要員がいないから普通のギルドより営業時間が短めで、開いているうちに戻らないと次の受付はまた明日だ。


「で、ではこれだけもらって帰ります!またいつかお会いしましょう、さようなら!」


 まだ間に合うかもしれない。私たちは大慌てでスライムの集落を出た。





「……迷ったかもしれない!」


「どこも似たような景色ですからね……」



 マユに先導されて初めて来た場所だ。地図も目印もなしに戻れるほど森は甘くなかった。


「一度スライムたちのところに戻りますか?足跡を辿ればどうにかなるはずです」


「それしかないか………あっ、マユ!」


 薬草の生えている場所か表の道に出るまでは案内人をつけてもらうべきだったと後悔していると、マユが走ってくるのが見えた。


「ジャッキーさん、ラームさん!急いでいるんですよね!私についてきてください!近道で行きます!」


「た、助かったよ!私たちが迷子になってると察して追いかけてくれたんだね!じゃあよろしく!」


 いくら時間内に戻る必要があるとしても、ここから走っていたら体力が続かない。早歩きでギルドへ向かう。



「女王様がジャッキーさんたちと行くように命令を出し、私も喜んで従いました。言われなくてもそうしたいと思っていたからです」


「マユも女王様も素晴らしいね。戻ったらありがとうって伝えておいてね」


 案内役として遣わされた、私たちはそう受け取っていた。ところがマユたちの思いは違った。


「いいえ、私は戻りません!しばらくはこのままジャッキーさんたちと共に行動します!」


「……え!?」 「なんだって!?」


「女王様はどうしてもお二人に何かお礼がしたかった。私は成長したいと願っていた。それならやるべきことは一つ、ジャッキーさんに仕えながら腕を磨く!絶対に損はさせません!」


 仲間たちから離れて修行の旅、そのために私たちと合流したのか。やる気に満ちているようで、全身が炎のように赤かった。



「いやいや、いらないよ!ジャッキー様にはぼくがいればいい!お前なんか……」


「迷惑はかけません。それに……強引な手段になってしまいますが、もし断られた場合は案内をするなと女王様から言われています。この森は闇雲に歩いても抜けられないようになっていて、夜になると足跡すら見えなくなります」


「ええっ!?」


 さすがはスライムたちの頂点にいる女王か。望み通りに事を進めるために、私たちが応じるしかない条件を用意していた。



「さあ、行きましょう!お二人は我々スライム族の恩人、何でも申しつけてください!」


「ジャッキー様、こいつ………」


 自分と似た新しい仲間の加入をラームは嫌がっている。家では私の従者、冒険者としては私の相棒という役目を奪われると不安に思っているのかもしれない。


「心配しないで。これからも私の隣にいるのはラームだよ。マユには別の仕事を与える」


「……ジャッキー様がそう仰るのなら……」


 なんとか納得してもらえた。マユの仲間入りを認めない限り私たちは森から出られない。ギルドの終了時間や家の夕食に間に合うかよりも、遭難して命を落とすことを心配する必要がある。


 マユが加わればできることが増える。マユから学ぶこともたくさんあるだろうし、私はすでに新しい仲間を受け入れていた。




「あれ?おかしいな、こんな岩あったかな?」


「なんでお前まで迷ってんの!?ジャッキー様、やっぱりこいつスライムの群れに帰ってもらいましょうよ!」


 マユを信じて森の中を歩いている。加入して初日で追放の危機だったけど、突然私たちが知っている道に出た。マユの反応を見る限りただの偶然だ。

 

「おお、本来出ようと思っていたところより先に出た!近道大成功です!」


「………そうだね………」


 一歩間違えば大惨事、でも今はそれを責める時間も惜しい。最後の力を振り絞ってギルドに急いだ。全部渡したはずの薬草が戻ってきて、結果的に近道で時間を短縮できた。この流れなら………!




「……あっ………」 「あ………」 「…………」


 運は尽きた。ちょうどサンシーロさんが鍵を閉めていて、私たちの今日の仕事は失敗に終わった。

 こんな作品……誰も見てないのはわかってるよ。俺は弱い。でも諦めねーから。総合ランキング上位入賞、弱い俺だけど本気で狙ってるんだよ。何があっても諦めない、俺は絶対……諦めないから(某こけし風に)

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