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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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ガーバアの杖の巻

 ガーバアは腰の曲がったお婆さんで、杖をついて立っているのがやっとという感じだ。


(これなら楽勝……いやいや!何を考えているんだ、私は!試合なんかできないって!)


 魔力が回復するのを待って、若い姿のガーバアと戦うべきだ。試合順を最後の第4試合にしてもらえばいい。それでも魔力が足りなければ主催者たちの判断に任せよう。



「若返る魔法が切れてしまったのはあたしの落ち度だから、皆さんに迷惑はかけられん。このまま試合を始めましょ」


「え?しかし………」


 ガーバアは今やると言いだした。観客たちも驚きの声を上げる。


「この杖だけ使わせてもらえたら試合はできる。あまり年寄りを舐めるでないぞ?」


 そっちがやる気でも私はやりづらい。杖がないと歩くのも難しいお婆さん相手にどう戦えばいいのか。



「信じてないのう……どれ、あたしの実力を見せてやろう。まずはあたしをロープに上げてくれ」


「ロープに……わ、わかりました」


 審判と二人がかりでガーバアをロープの上に立たせた。当然足もとはぐらぐらしているから、私はガーバアの左手を持っている。


「どうじゃ、このバランス!」


『お……おお!ガーバアが杖をつきながらロープを渡っている!ジャクリーンの介護はあるものの……』


 とてもゆっくりだけど、この細いロープを渡れるのはすごい。このまま一周できるかもしれない。



「確かに見事ではあるんだが……」


「私たちは何を見せられているんだ?」


 皆が疑問を感じ始めたあたりだった。私とガーバアの呼吸が微妙にずれた。


「あっ!」 「ありゃっ!?」


 ガーバアが足を滑らせて、私のほうに落ちてきた。うまく支えてあげることができず二人揃ってリングに倒れた。


『あっと、ロープ渡り失敗!ガーバアは腰を痛打、ジャクリーンも頭を打ったか!』



 大闘技場は爆笑に包まれた。ところが王様は怒っていた。実況席を立ちリング下まで走ってきた。


「いつまでふざけてんだ馬鹿ども!さっさと試合を始めろ!二人とも失格にするぞ!」


「いや……やっぱり無理かと………」


「本人がやると言っているんだ、ババアはそのまま試合をさせろ!リングで大往生しようが知ったことか!」


 神聖なるスーパー闘技大会が汚されたと思っているようで、まさに激怒だ。こうなったらやるしかない。




「え―――……始めっ!」


 試合開始の合図と同時に鐘が鳴る。時間は無制限で、3カウントによる勝利も認められるルールだ。引き分けの場合両者敗退となる。


「えっと……ていっ」


 軽く肩を押す。さすがにパンチやキックは使えない。


「おおお………ああっ」


 それだけでガーバアは倒れてしまった。枯れ葉のように弱々しい。



(弱すぎる……もう終わらせよう)


 老人虐待、弱いものいじめだとブーイングが起こる前に決着させる。ガーバアの肩をマットにつけて押さえ込んだ。


「ワン!ツー……」


『瞬殺か!?ガーバアに返す力は……』


 何事もなく勝ててよかった、そう安心したのが失敗だった。ガーバアの杖が私の背に伸びていた。



「うああっ!?」


『な、なんと!電撃だ!ガーバアの杖は雷の杖だった!』


 反撃されるとは思わず、無防備だった。その分ダメージが大きい。痛みのあまり転げ回って悶絶させられる。


「ほっほっほ……もう一撃!」


「………!」


 しかしガーバアの動きはとても鈍い。追撃をあっさりと避けることができた。そのまま距離を取って、安全な場所で治癒魔法を唱えてから仕切り直しだ。



『本来なら自分の力を使わないマジックアイテム、それこそガーバアの雷の杖のようなものは使用禁止なのですが……審判が認めてしまいましたからね』


『若い相手と戦うのだからこれくらいのハンデがあってもいいという気もするが……いきなりくだらん試合になったな』


 ガーバアのゆっくりとした攻撃、それをゆっくりと避ける私。スーパー闘技大会とは思えない低レベルな戦いになった。


「ジャッキー様!無理して近寄る必要はありません!そいつはそのうち疲れて動けなくなります!」


「放っておけば腰か足を痛めて棄権しますよ!」


 いくら時間無制限の戦いとはいえ、あまりにも両者決定打のない時間が続いたら無気力試合として引き分け、失格の裁定が下りるかもしれない。攻める姿勢は見せよう。



「ほりゃっ……おや?」


「てや――――――っ!!」


 杖攻撃をかわしてガーバアの左腕を掴む。そしてロープに向かって走らせようとした。


(跳ね返ってきたところを攻撃だ!)


 この勢いでロープに振れば相手は止まれないはず。普通の選手ならそうだった。



「おおおっ……ううっ」


「ええ〜〜〜っ………」


 ガーバアが走れるわけがないことを忘れていた。背中を押した瞬間に足がついていかず、前のめりに倒れた。技を出すための動きが立派な攻撃になってしまった。



『ガーバア転倒!骨がぐちゃぐちゃになったかもしれません!聖女隊が治癒のためにリングへ走ります!』


 街中でお婆さんを倒して大怪我をさせたら私は重罪だ。ただしここはリングの上、私は悪くない。そもそも倒す気もなかった。


(これで終わり……いや、罠だ!)


 倒れたガーバアが一瞬だけ視線をやり、こちらの様子をうかがっていた。私が3カウントを取るために密着した瞬間、また雷の杖で攻撃してくる。


(あの杖をどうにかすれば!)


 放っておいても勝てそうだけど、杖を遠くにやってしまえば盤石だ。ガーバアは何もできなくなる。



「とうっ!」


「ああっ……」


 ガーバアは私を油断させるために杖を放しているように見せかけていた。実際は指で軽く押さえていて、いつでも私に向かって振りかざすことができるようにしている。だから私も裏をかき、ガーバアを押さえ込むふりをして杖を蹴り飛ばした。


『ガーバア万事休す――――――っ!唯一の攻撃手段であり、歩くためにも必要不可欠な杖を失った!』


『もうギブアップしかないな……ジャクリーン・ビューティが二回戦に進むのは忌々しいが、あの婆さんよりはマシだろう……』


 私は押さえ込みにいかず、ガーバアを優しく起こそうとした。杖がないのだから大人しくギブアップしてくれると疑わなかった。



「いい戦いでした。ありがとうございます、ガーバアさん。この経験は………」


 まだ決着していないのに勝ったつもりでいた。それは確かに失敗だけど、仮に油断していなくても驚いてしまっただろう。とんでもないことが起きた。



「あれ?重くなった?それに大きく………」


「……………」


 ガーバアが若くなっていた。さっきまでは背中が曲がっていたのに、まっすぐ立つと私よりも背が大きかった。


『魔力が戻ったのか!?若く美しい女になっている!』


 肌や髪の艶、目の力、歯の本数……若返って完全に別人だった。

 横浜DeNAベイスターズ、強すぎです。ザコの阪神と貧弱な巨人に圧勝するのは最初からわかっていましたが、投手戦を堅守で制するという勝ち方を予想できた横浜ファンははたして何人いたのでしょうか。守備の人・牧秀悟なんてこれまでなら冗談でも出なかった言葉です。


 起用している投手も自前で引き当てた助っ人たち、戦力外から拾った中川や堀岡、現役ドラフトの佐々木にトレードの森原、終わったと思われていた山﨑康晃と伊勢………普通なら勝てる戦力ではありません。某福岡の品がない球団とは正反対で、対決が今から楽しみです。

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