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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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地獄のレースの巻

『選手たちが大闘技場を出ていきます!まだ一団となっていますが先頭は『マーキュリー』!その直後にシューター王子、オカ・チカと続きます!』


 スタート直後の危機は脱出したものの、私は最後方を走っていた。後半の逆転に賭けるしかない。


「頑張れ頑張れジャッキー!」


「ジャッキー!ジャッキー!ジャッキー!」


 この熱い声援はもちろんお父さんたちだ。それ以外の観客はおそらく誰も私を応援していない。魔玉投げで見せたまぐれは続かないと思っているようだ。まああれはマキの力がほとんどだし、正しい反応だ。





「……最初のチェックポイント………」


「何か置いてある……大きなパンと牛乳だ!」



 50人分の食事が置いてあった。兵士が説明を始めた。


「第一の試練だ。完食したらサインをしてあげよう!」


「げっ!長いレースが始まったばかりだぞ!?」


「悪趣味な競技だ!」


 走っているうちに気持ち悪くなりそうだ。食べたらしばらく休んでそれから出発、なんて時間もない。



「あまりうまくないな……どこかの残り物か?」


「途中で吐くかもな……」


 食べて飲むだけだからここでの脱落者はいない。私は少しだけ順位を上げて46位で通過した。




「ふぅ、ふぅ、ふぅ………あっ、あれだ」


 数分走ると二つ目のチェックポイントが見えた。今度はたくさんの黒い箱があって、選手たちはその中に手を入れている。


「これは………」


「箱の中身を当てていただきます。一人に一箱用意されていますが中身は全員同じです」


 手触りだけで答えを見つけるしかない。生き物だったら嫌だな。


「わかりましたら他の選手に聞こえないように耳打ちでお知らせください。正解するまで何度でも解答できますが、次に答えられるのは30秒後。早くしないと取り残されてしまいますよ」


「……焦りますね」


 周りを見ると、すぐに正解している選手もいればなかなか先へ進めない選手もいる。この大会のために厳しい訓練を続けてきたのに、こんなゲームで順位を落としたらがっかりだ。



「よしっ………ん!?」


 嫌だと思っていたら生き物がきた。しかも……。


「わ、わかりましたっ!」


「早いですね。では小声でどうぞ」


 この触り心地は間違いない。あとは数だ。



「スライム。3匹います」


「正解です。この先も頑張ってくださいね」


 マユがべたべたしてくるからスライムの感触は完璧に覚えた。マユの故郷でスライムたちと遊んだ経験も大きく、数もすぐに正解できた。


(マユに感謝だな。好きなだけ甘えさせてあげよう)


 私が無事決勝トーナメントに進めたらその余裕もある。だけどもし敗退となったら私のほうが慰めてほしくて甘える側になるかもしれない。



「………マッチョ王子、どうしたのかしら?」


「箱に手を入れたまま全く動かない。このままじゃ最下位まで落ちちゃうぞ」


 実はここにも私を脱落させるための罠があった。50個の箱のうち一つだけ、全身を痺れさせる強い毒を持つクモが入っていた。私にはこの箱を出すように指示が出ていた。


 ところが直前になって怪物二人に私の始末を頼み、それが確実に成功すると思ったせいでこっちの作戦は中止になった。しかもクモはそのままだった。誰かが捨てただろうと皆が考えていた。その箱は偶然にもマッチョ王子のもとにいってしまった。


(動けない……声も出せない………た、助けて)


 一気に順位を上げたとはいえ、まだまだ12位には遠い。マッチョ王子の異変に気がつく余裕もなく、先を急いだ。




「次はどんな面倒なのが……」


「ここは何もありません。サインだけです」


「あれ!?そ、そうですか……」


 何もないと前を追い越すチャンスもない。口では面倒と言いながら、心の中ではとんでもないものが出てくるのを期待していた。



『ここまでの順位、1位は我が王国の未来を担うシューター王子!2位に異世界からの勇者ユミ、3位はマーキュリー!二次予選で大暴れしたジャクリーンは20位以下です!』


『ガハハ!ようやくあいつの運も尽きたか!』


『なお、マッチョ王子は途中棄権したそうです』


『うごぁっ!!』


 大笑いしていた王様が椅子から転げ落ちて大闘技場は大盛り上がりだったそうだ。その中でチーム・ジャッキーだけはそれどころではなかった。


「そんなに速くないからな、ジャッキーは……」


「挽回不可能な差だとしたら………」


 マキが外に出ようとしたから、お父さんが止めたそうだ。私のために先行する選手たちを全員消そうという気配がしたからだ。そんなことしないよとマキは笑ったらしいけど、はたして………。





 レース後半になるとチェックポイントでの変なゲームはほとんどなかった。だから順位も全然変わらない。たまに最初に食べたパンのせいで走れなくなった選手がいるくらいで、前の集団とはどんどん離されていった。


(そろそろゴール……まさかもう12人……いや!)


 すでに終戦していてもおかしくない。それでも最後まで全力を尽くそう。残った体力を振り絞って走った。



『ついに選手が戻ってきました!先頭はマーキュリー!謎の長髪美女が優勝候補たちよりも先にゴールしそうです!』


「ああっ………」 「ジャッキー様は!?」


『マーキュリー、ゴール!続いてシューター王子、エーベル、ユミにフランシーヌ!このあたりはもう団子状態!』


 一人ゴールするごとに決勝トーナメント進出の枠が一つずつ埋まっていく。私とビューティ家の終わりが迫っていた。

 棚橋社長が引退を表明しました。真の社長であるEVILが強襲して会場の熱気を取り戻したのは大ファインプレーでしたが、闇の王もどこか寂しそうな感じがしました。

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