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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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二人の転移者の巻

 しばらくの間、またよろしくお願いします。

「………そういうわけだ。この二人についてどうするべきか、お前たちにも意見を求めたい」


「なるほど……確かに秘密にすべきだな、これは」


 王様が私たちに紹介した二人の女の子。私やサキーと年齢は同じくらいで、これといって目立ったところはない。


 二人が特別なのは、異世界から来た転移者だということだ。世界を揺るがす大事件が起きた。



「異世界での記憶は二人とも半分程度しか残っていない。名前は一部だけ覚えていて、肉親のことは全て忘れてしまった。それなのに民の間で流行した遊びや菓子についてははっきり話せる……」


 残しておきたい記憶を選ぶことはできなかったようだ。忘れてしまったほうが幸せなこともあるだろうけど、転移者にとって何がいいのか私にわかるはずがない。


「私は『ユミ』。ほんとうはもっと長い名前だったはずだけど、これでやっていく」


「『キヨ』です。気がついたらこのお城にいたのが一週間前……まだわからないことばかりですが、よろしくお願いします」


 ユミさんとキヨさんは私たちと会話ができ、言葉の読み書きも不自由なくこなす。記録に残っている過去の転移者たちと同じだった。



「前回転移者が現れたのはかなり昔のこと……私やそこのバーバ・ビューティが生まれる前だ。なぜ今の時代に……」


「理由などないのでは?異世界からの転移者たちが我々の世界を変えたことなど、初代トーゴーを除けば一度もありません。偶然何らかの力が働いただけでしょう」


 身体能力や頭脳は平凡、異世界の技術を再現することもできず……何を成し遂げるでもなく生涯を終えた人たちばかりだと言われている。元の世界に帰りたくてもその手段はなく、絶望して自ら命を絶った人もいる。


 だからこの二人も意味があってここにいるわけではないと思っていたら、今回は事情が違った。



「いや……彼女たちは何者かによって召喚された。おそらくは神か精霊か……」


「え?」  


「ユミには勇者の力と加護があることが確認された。そしてキヨも魔法の素質が人並み外れていて、大賢者になれるのは確実だ」


 王の間は騒然とした。勇者や大賢者は100年に一人現れるかどうかという貴重な存在だ。大聖女には及ばないものの、世界に大きな影響を与える力を持つ。しかし大聖女と同じ時代に勇者と大賢者まで現れたことは、素直に喜べる話ではなかった。



「勇者、大賢者……しかもわざわざよその世界から連れてきた。そうなると……」


「近づいている。大きな戦争が」


 おそらく相手は魔王軍。初心者向けのダンジョンの最深部に強力な魔物たちが潜んでいたのは私たちのギルドのそばだけでなく、他の地域でも報告されていた。


「大聖女様一人に全てを押しつけるのも問題ですが、いきなりそのお二人を戦いに巻き込むのは……」


 恵まれた能力を与えられたとしても、無理やり命の奪い合いをさせていいはずがない。私だってやりたくないし、マキにも戦いの最前線に出てほしくない。


 それを違う世界からいきなり連れてこられた人たちに任せるなんてひどい話だ。断りにくく感じても、嫌なら嫌だとはっきり言うべき、私はそう思った。そのせいでお城を追い出されたらビューティ家で暮らせるようにしてあげたらいい。



「いや、私たちなら心配ない!この力を使って英雄になれるのなら、戦いはむしろ大歓迎だ!」


 気遣いは無用だった。神々から愛される勇者に選ばれたユミさんは乗り気で、自分から魔王のもとに乗り込もうとしているほどだった。


「元の世界のことを全て覚えているわけじゃないが、平凡な人生だったのは確かだ。それが今はどうだ!救世主となり、名声と富に満ちた勇者として生きるチャンスがある……私たちを連れてきた神様には感謝しかない!」


 本人がそう言っているのならまあいいか。死ぬかもしれない危険な戦いをチャンスだと張り切っているのなら、好きにさせよう。



「私はパン屋でも開いて穏やかな生活がしたかったのですが……」


「何言ってるんだキヨ!どうせこの世界の技術じゃ大したものは作れない。私たちにしかできないことをやるべきだ!」


 キヨさんは戦うことに消極的だった。これが普通の反応だろう。同じ立場なら私もそうする。



 黒髪のユミさんは身長が高く、引き締まった身体をしている。体格と性格はサキーに近い。キヨさんは穏やかで優しそうな雰囲気の人で、いろんなところでルリさんそっくりだった。


(サキーのほうが強くて頼れるし、ルリさんのほうが美人だけどね)


 当然口には出さなかった。初対面の相手に喧嘩を売ってどうする。いや、初対面ではなくても失礼すぎる。



「なるほどね〜。なかなか強そうだね、二人とも。でもお姉ちゃんには大きく負けてるね。見た目も実力も」


「はい。全てにおいてジャクリーン様が上です。勇者や大賢者とはこんなもの……いいえ、ジャクリーン様が素晴らしすぎるだけでしょうね」


「………は?」 「………!?」


 マキはともかくルリさんは信頼していたのに、早速先制攻撃だ。そばにいるサキーたちも二人を咎めず、同意して頷いている。まともなのは私だけか。



「………異常者の集団なのはわかった。しかし国王、あなたはあの連中に私たちの面倒を見させるつもりだ。助けるどころか足を引っ張る存在になるのでは?」


 ユミさんは明らかに怒っている。私が大した人間ではないことも付け加えて、あとで謝っておこう。


 この世界で生きていくための勉強は一週間で終わらせたようだし、私たちが教えられることがあるのか疑問だ。皆がそう思うことを当然王様はすでにわかっている。


「ひたすら敵を剣で斬り魔法で消し飛ばす、それだけならいらなかった。しかし……」


「………?」


「リングでの戦いは単純ではない。神に愛されているだけでは勝てないとすぐにわかるだろう」



 魔族もリングを重視している。戦争になってもこの方法で白黒をつけるのではと言われていて、これなら普通の戦いよりも命を落とす可能性は低い。


 ただし圧倒的な力で押し切ることは難しく、リングに慣れていないと勇者でもあっさり負ける。ユミさんとキヨさんを更に強化するために、私たちが必要だった。

 グレート-O-カーン様のIWGP挑戦は残念な結果に終わりましたが、YouTubeも始めた支配者の勢いはまだまだ落ちません!KOPWは今年で廃止濃厚なほど影が薄いので、最後の保持者として永遠に名を残してほしいものです。

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