【異世界】悪役令嬢寿司
パシャ、パシャ、パシャ!
「お客様、店内で写真を撮るときは、許可を受けて下さい!それに、撮って良いのはお寿司だけです!」
「サイテー、パパさん。こんな店出ましょう!」
「ああ、出よう、ヒック」
「塩、まいとけ!」
ガラガラガラ~~
あたしは、湊系女子よ!
今日は、パパさんとお寿司屋さんに来たら、とんでもない目に遭わされたの。
Yでツブヤイテやる!
「あら、こんな所に、お寿司屋さんがあるわ。何々、『悪役令嬢寿司』って、ウけるんですけど~~、パパ、行ってみよう」
「ヒック、ピー子ちゃん。行こうか」
ガラガラガラ~~~
「キャ、お寿司屋さんなのに、石畳の店、まるで、西洋居酒屋みたいだわ」
「ヒック、大将!いるか、お客様だぞ!」
奥から出てきたのは、赤紫のドレスにエプロン、腰まで黒髪を伸ばしている女性であった。
髪は束ねている。
目はつり目で、若干、意地悪な印象を与える。
「平民?ね。好きな席に座って、ここのルールよ。写真、動画は、許可を受けてから撮りなさい。良いわね」
「何よ。偉そうに!」
「何だと、俺たちは客だぞ!」
「あら、私は貴族よ」
キラリ!
女は、長い包丁を手に取った。
「ヒィ」
「な、悪かった。あれ」
女は包丁を丁寧に洗い。
「クリーン!」
ピカッ!
一瞬、包丁が、青い光に包まれた。
そして、
「マクロイン近海ものマグロ!召喚!!」
と叫ぶと、空間から、マグロが一匹出てきた。
マグロは宙に浮いている。
女は、マグロの解体を始めた。
何だか。美味しそうだ。
「キャー、イリュージョン!!」
パシャ、パシャ!
無許可で、写メを撮る。マグロを撮影しているが、女の顔が映り込んでいるのは明白だ。
「・・・・お客様、強制退店ですわ」
「ちょっと、こっちは、客よ!Yであげてやるんだから!」
「こちらは、悪役令嬢ですわ。悪役令嬢は何にでもなれる。聖女、カフェのオーナ、
そして、寿司屋!
私は貴族だから、客を選べるのよ!出て行かないと、カジキを召喚しますわ!」
ニョキ!
空間から、カジキが頭を出した。
角が長い。
(ギョ!ギョ!)
「ヒィ!こんな店、こちらからお断りだわ。脅されたって、Yで言うのだから!」
バシャ!
写真を撮って逃げて行った。
しばらくすると、客が二人、入ってきた。
初老の女性と、20代前半の男だ。親子のようだ。
ガラガラガラ~~~
「・・・いらっしゃいませ」
「あの、実は、今日、初任給で、お袋に、ごちそうしたいのですが、何も分からないのです・・・」
「よろしく御願いします」
「まあ、こちらに、座って、丁度、マグロを解体していましたの。マクロイン海産のマグロですわ」
「うわ~、写メ撮っていいですか?」
「ええ、どうぞ」
・・・・
「お値段は、お一人様、1200円ですわ」
「安~」
「まあ、いいのかしら」
「ええ、実は、マグロは、魔法で召喚しましたの。無料ですわ」
・・・私の魔法は、魚しか召喚できない欠陥魔法と言われたわ。
それで、婚約破棄をされ、追放されましたの。
しかし、異世界には、魚料理が尊ばれる国があると聞いたわ。
異世界に行って、修行して参りましたの。
そこのネット小説で悪役令嬢ものを読みましたわ。悪役令嬢は何にでもなれる。
勇気をもらいましたの。だから、屋号を、『悪役令嬢寿司』にしましたの。
時々、異世界の方の口に合うか。店の入り口を異世界に転移するようにしていますのよ。
「ごちそうさまでした。また、来ます」
「どうぞ、また、来て下さいな」
ガラガラガラ~~
「あれ、外の景色が違う」
「まあ、申し訳ございません。空間転移魔道装置の魔石が枯渇していましたわ。今、すぐ、交換するので、しばらく、お待ちくださいませ」
「え~と、イリュージョンかな、大丈夫ですよ」
「まあ、馬車が通っているわ」
☆マクロイン王国
「ヒィ、ここはどこよ」
「分からない。君、ここはどこだね?」
「はあ?また、けったいな奴らが来たな」
「おい、ここは、冒険者ギルドだ。迷子?なら、道案内を依頼しな」
「はあ?紙の金?どこの田舎者だよ」
「キャー、アンテナ立っていないわ!」
・・・・
そして、二人は、あの寿司屋を見つけることが出来ず。
異世界のレストランで、働くことになった。
「ちょっと、私は貴族よ。このメイドとボーイ、何も知らないわ。変えて下さらない」
「申し訳ございません。少数民族なので、何も分からないのです。いますぐ、交代します」
「「ヒィ」」
二人は、情報ギルドで、異世界転移装置を持っている女の捜索を依頼するのが目標だ。
依頼金が貯まるには、まだ、時間がかかりそうだ。
最後までお読み頂き有難うございました。