カラオケ店で
私、上地絵里(仮)が高校の時に実際に経験した話。期末テストが終わったその日はたまたま全部活が休みだったので、友達の千里佳と麗美と
「やっとテスト終わったー!帰りにカラオケ行こうよ!」
「賛成ー!」
「いいね!」
学校帰りに制服のままカラオケ店に行く事になった。しかし店舗に着いてみると、同じことを考えていた同じ学校の生徒が多くいた訳で。
「満室ですので1時間半待ちです」
と受付で言われてしまう。平日の14時という微妙な時間。フリータイムを予定していた私達はできるだけ早く部屋に入りたかったのだが、
「まぁしょうがないか。どっかの部屋が空くまで待とう。」
しぶしぶ店内ロビーで空きを待つことにした。そのカラオケ店のロビーは広く開放的で卓球台が置いてある。私と麗美が下手っぴ同士でピンポンを楽しむ。千里佳は暇だからと何気なく知り合いがいないか広いロビーをうろついたり、遠目で部屋の中を見ようと通路を散策していたところ、明らかに誰も使っていない部屋を発見したとのこと。私と麗美の元に駆け寄って来て
「空いてる部屋あったよ!行けるかも!」
「えっ!それマジ?」
私達3人はその勢いのままに受付に向かい
「すぐにでもあそこの空いてる部屋に入りたい!機種とか何でもいいから!」
と受付に伝えると
「えっと、、あの部屋は準備が整っていないので…」
「実は、、音が途切れる場合が…」
と店員が乗り気でない様子。しかしそこは女子3人で力を合わせてごり押しでその部屋を店員に準備させることができ、10分程待った後で部屋に案内してもらえることになった。
「言ってみるもんだね!」
「これ1時間くらい早く入れたんじゃない!?」
「千里佳まじグッジョブ!」
私達は喜んで案内された部屋に入った。さっそく曲を入れて順番に歌う。しばらくしても他の部屋との違いは全く感じられない。店員が入室を渋っていたやり取りがあったことはあっさり忘れてしまっていた。1時間程歌って騒いで踊って、と満喫していたのだが、1曲歌う間に1回、ないし2回ほど
ドンッ!
と音と衝撃があることに気づいた。
「ウチらうるさいかな?隣の部屋の人が壁ドンしてきてない?」
「壁にもたれかかっただけじゃないの?」
「どっちの部屋から叩いてるんやろう?探そっか!」
と曲を入れるのを一旦止め3人で壁際に耳をつけしばらく。
店内に流れる有線の曲や両隣からのおそらく同じ高校の生徒が歌っている声が小さく聞こえる。
「ウチら何やってんだろね」
「それな」
と笑いながら話していた時に
ドンッ!
「あっ、鳴った。でもこっちじゃない」
「え?こっち側でもないよ」
「え、、どこから?」
と隣の部屋で鳴っていたと思っていた壁ドン(?)は左右の壁に耳をつけ備えていた方向からでは無かった。部屋にいる3人ともがドンッ!と鳴る音を認識していることから幻聴ではないのは明らか。それからしばらく3人はどこからその音と衝撃が来ているのかを探した。
すると千里佳が
「あっ…、地面から聞こえる。けどおかしくない?」
このカラオケは1F建ての建物で地下は無い作りなので地面からドンッ!と衝撃が来ることはありえない。
「え、下から聞こえるのってありえなくない?」
「いや・・そういうことじゃなくて」
最初に地面から聞こえたと言った千里佳が言う。
「…なんか足音が聞こえる」
「え?」
それを聞き私と麗美の2人も床に耳を当ててみた。するとほんの数cm下を逆さに歩いている人間がいるかのようなトンッ、トンッ、トンッ、という足音が規則正しく聞こえてくる。そして足跡が消えたと思った1秒後に
ドォンッ!!!!
と下から突き上げるような衝撃と音がやってきた。
「ちょっ!」
「ヤバィ!!」
「早く出よう!!」
私達は一目散にその部屋を出た。床の直下に逆さまの人がいて思い切り飛びあがり着地する様子が3人の脳裏に浮かんだ。
後に分かったことだが…、、
そのカラオケ店で夜にワンオペをしていた女性店員がその部屋で自殺をしており、改装という名目で部屋のリフォームを行ったのだが、不思議な出来事が立て続けに起き続け、その部屋は使わないということになっていたらしい。それから15年くらい経つ現在でも3回経営者と名前が変わったそのカラオケ店は営業しているが、あの部屋はどうなっているのだろうか。一度もその店には行けていない。