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第8話:内政チートへの挑戦

「王子ぃ、ずっと部屋に篭ってますけど何をしてるんですかぁ?」

「あぁ? ちょっとこの国の法律についてな」


 奴隷、兼従士であるキリエの問いにぶっきらぼうに答え、各分野ごとの法律書について目を通している。


 流石に六法全書ほど分厚くは無いが、所々に日本でもあったような法律があった。

 それと、何故か個人で転売をする者への罰がかなり厳しくなっていることから、これの原案を出した奴は絶対に日本人だろう。


 さて……発明もできなければ冒険者になることもできない。

 そして学園ものでチートを発揮することもできない現状だが、まだ俺には道が残されていた。

 それがこの法律書である。


 法律というものは時代に応じてアップデートされていくものだが、このナーロッパ世界は変化が乏しいせいか、消されず形骸化したまま残っている法律もある。


「おいタイロック、例えばお前が決闘でキリエをぶっ殺したとしよう」

「……王子、それ、悲しい、タイロック、キリエ、殺さない」

「例え話だつってんだろ。 でだ……正式な手続きを踏んだのであれば無罪になるんだが、有罪になる場合もある。 どういう場合か分かるか?」


 仏頂面をしているタイロックが静かに首と尻尾を横に振るので答える。


「勝敗がついたあとだろうと、代理人が決闘書状を撤回した場合、お前は殺人犯になる。 ひでぇもんだぜこりゃ」


 ―――とまぁ、最初は決闘が決まった後でも最後の最後までそれから逃げられる制度を後付けでくっつけたせいで、こんなことになっている。

 こういったものが他にもいくつもあることを見つけた。


 つまり、こういったところを直していく内政チートルートが残っているということだ!


「あー、なるほどね。 うん、没」


 ―――が、クソ親父に見せて5秒で没判定を受けた。


「なんでだよッ!!」

「先ず法律を変えるっていうのは凄く大変だ。 そもそも法律を全部覚えてる国民はいないのに色々変えたら混乱が発生する。 次に法律を変える必要があるなら、優秀な官僚がやってくれる。 我々の仕事というのは、それにウンウンと頷くことだ」


 つまるところ、このクソ親父は王として国民を導くことを放棄しているのだ。

 優秀ではないのだから優秀な人材に任せる、それは当たり前であり間違っていない。


 だが、何もしないでいることが果たして正しいのか?

 ただ何も成さない日々を暮らし続けることが王族なのか?

 少なくとも、今のこの姿を王として見ることはできない。


「それとな、ショウ。 お前の修正案は目の付け所はいいのだが、他の箇所と齟齬が発生しているぞ。 ちゃんと見直しをしたらどうだ?」


 そう言って俺の原稿にペンでサラサラと追記をしていく。

 返された原稿を見ると確かに齟齬が発生している箇所にチェックが入っており、それどころか俺の考えたものよりも完成度の高い案が盛り込まれていた。


「まぁ、なんだ。 確かにショウのように完璧さを求めれば有能な人達にとって楽園のような国になるだろう。 だがな、私はそんな息苦しい楽園よりも、無能や役立たずと言われる人だろうと笑って暮らせる酒場のような国の方がいいと思うよ」


 そう言って、親父殿は呆気にとられている俺を置いて去っていった。

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