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第1話:ショウ15世の誕生

 時代に似合わない高度な文明社会と問われれば、昔はムー大陸のアトランティスだと言われていたが、今はナーロッパ世界だと言われることだろう。

 え? 創作上の世界だって?

 いいや違う、なにせ自分が今そこに転生したのだから実在しているのだ。

 それもただ転生しただけではない、チート能力まで持っている。


 剣を握れば剣聖、魔力は最高のSランクを超えたSSランクだと言われ戦うことに関しては誰にも負けない自負があった。

 更に血統チート、遺伝として受け継がれたチート能力として相手を自分に惚れさせる"ニコポ"と"ナデポ"も持っている。

 この力で、ナーロッパと呼ばれる世界で成り上がってみせる……それができると信じていた。

 だが出来なかった。


「王子、手が止まっておりますよ」


 家庭教師の男、シールに注意されたので歴史書の書き写しを再開する。


 そう、今の俺はティファレト国の王子……ショウ15世なのである。

 何もしなくとも勝手に親父は死に、俺は国王になる。

 つまり、最初から成り上がっていたせいで力の使い道がないのだ。


 いや、もちろん俺だって最初は自分の力を誇示する為に剣を握り、鋼鉄の扉を切り裂いたこともある。

 その場にいた家庭教師のシールも舌を巻き、親父であるショウ14世に騎士団長も褒め称えてくれたさ。


 これで俺の力を認めさせて世界最強の男として名を馳せることになるだろうと期待していた。

 しかし……。


「王子に戦わせて何かあっては騎士の名折れ。我らは王と王子に迫る牙を防ぐ盾であり、剣であります故」


 ―――と騎士団長に言われてしまった。


「俺に勝てる奴など何処にもいない、騎士団全員を相手して証明しよう!」

「なんと恐れ多い! 騎士たる我々が王族に剣を向けるくらいならば、自害いたします!」


 騎士団どころか国と戦っても勝てるというのに、その機会すら与えられなかった。


 とはいえ、そこで諦められるほど素直な生き方はしていない。

 ならばお約束である現代品の再現による発明チートに切り替えることにしたのだが……。


「王子、失礼いたします。間食をご用意いたしました」


 侍女がお菓子を運んできた。

 そこにはケーキにアイス、チョコフォンデュに抹茶ラテまである始末だ。


「王子、少し休憩にいたしましょう。確か紅茶は苦手だったのでしたね」


 シールはポットからカフェオレと紅茶を用意する。


 そう、このナーロッパには先人である異世界転生者がさんざんやってきたせいで大体のものが揃ってしまっているのだ。

 砂糖の量産は序の口で、マヨネーズ、醤油、紅茶、コーヒー……本当にここは異世界なのか、実は日本じゃないのかと錯覚するほどの料理や調味料が溢れかえっていた。


 娯楽もそうだ。

 オセロ、スゴロク、将棋……それどころか野球にサッカーまで普及している。

 物語も桃太郎やシンデレラ、果ては劇場で時代劇すらやっている。

 先人どもが好き放題やったせいで、完全に元の文化が埋もれてしまった。


 更には俺が知っている技術も全部実装されている。

 上下水道の完備はもちろん、アイスボックスという名の冷蔵庫にクーラーまである。

 どうやら過去にそういったチートを持つ異世界転生者が好き放題にやったせいらしい。


 ありがとよ、お前らのおかげで俺は今凄く快適に過ごせてるよ。

 そのせいで俺は何も発明できねえ、くたばれクソッタレ!

 ……いや、もう死んでるんだったな。


 やけになって侍女の運んできたものを手当たり次第に口に入れる。

 日本の味を知っているからこそ馴染みのあるもので、新鮮味なんてものは一欠片もなかった。


「覚えてやがれ、異世界転生者のチート共め。周回遅れだろうと、俺ぁ異世界転生の醍醐味を見つけ出してやる!」

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