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95話

 ※報告が遅くなりましたが、新人発掘コンテスト2の最終選考進出作品に選ばれました。

95話


「……なるほど。実に興味深い話ですね」


 『救世主』信仰の話は、聖剣クラウスの誘導的指摘から始まった。


 つまり『ボス、アンタは女神ユーグレナ様が遣わした伝道の使徒である救世主なんだろ?』とハリマンを利用して、暗に言いたいのだろう。


 おそらく俺がどんなに必死に否定しようが、聖剣クラウスたちは俺が女神ユーグレナ様が遣わした伝道の使徒である『救世主』だと信仰心から確信するだろう。


 そりゃ確かに『俺の意志とは無関係』に俺はユーグレナ様から『使徒の祝福』を受けた『使徒』だけどさ。


 俺、生まれも育ちも単なるパンピーなんすけどね?


「タロウ殿が『救世主』では無いことに我々は落胆したが、それでも女神は我々を見捨てずに『オリハルコンの神像』をハリスに齎してくださった。後ほど我々の『要望』をタロウ殿に正式に伝える予定であったが、今、伝えよう。本日、私と『鑑定スキル』を持つミリスをタロウ殿の宿にある『オリハルコンの神像』に礼拝させて貰えないだろうか?」


 ん?


 さっそく今日来るの?


 まぁ、暴力沙汰が無いなら別に良いけど、今はハリス南部のニホン村に『オリハルコンの神像』があるしなー。


「ハリマン様、もちろん大丈夫ですが……こちらも少し所用がありますので、遅めの昼過ぎから夕刻の鐘がなる前に訪れて頂ければ助かります」


「タロウ殿、我々の『要望』を聞いてくださり、心から感謝する。ではタロウ殿、本日その時間帯に向かうようにする。ミリスも良いな?」


「ハリマン様、かしこまりました」


 ハリマンもミリスさんも物凄く嬉しそうにしているが、『鑑定スキル』で『真名』が分からなかったら、どうしよう?


 まぁ、その時はその時か。


 何とかなるでしょ。


「タロウ殿、そろそろ贈答品と返礼品に移ろうか」


「ハリマン様、かしこまりました」


 お互いに会談が無事に終了したことを現す為に握手する。


 やっと会談が終わった……。


 これからは何度も王族や貴族と会談を重ねるんだろうな……。


 はぁ……ホンマ憂鬱だ。


 その後、憂鬱な気分を抱えながらもミリスさんの案内でハリマンと雑談しながら贈答品を置いた部屋へと向かう。


 部屋に入ると、先ほどまで無かった高級感が漂う長方形の長いテーブルに、6人ぐらいが座れる高級感漂うソファーを上座に、下座ではあるが中立的な位置に1人用のソファーが用意されていた。


 まずハリマンが6人ぐらい座れる上座のソファーの真ん中に座り、俺は中立的位置のソファーに誘導され、座った。


 もちろんクラウスたちは俺の護衛で後ろに立つ。


「タロウ様、ハリマン様、奥様と嫡子様並びに嫡子様の奥様、そしてマリア様をお呼び致しますので、少々お待ちください」


 そう言ってミリスさんが部屋を出て、ハリマンと雑談しながら暫し待つ。


 『コンコンコン』と部屋の扉からノックが鳴り、俺は近隣諸国有数の貴族たちを出迎える為にスッと立ち上がり背筋を伸ばす。


 入室してきたのは明らかに『私、奴隷のメイドですけど?』と主張する美人でおっぱいの大きい奴隷の女性だけだった。


 素知らぬ顔で俺は座る。


 ………………。


 …………。


 ……。


 無言。


 無言のまま、気まずい空気が辺りに漂う。


 その気まずい空気を打破するかのように『クックック。さすが俺たちのボスだ』と聖剣クラウスたちが『ぷー、クスクスクス』と俺を嗤っている。


 頬をピクピクさせながら頑張って素知らぬ顔をしている奴隷のメイドが気まずそうに紅茶を入れ、毒味してからハリマンに、次いで同じく毒味してから俺に紅茶を薦める。


 深く一礼してから、素知らぬ顔のまま部屋から退出する出来たメイドさん。


 でも、たぶんこの後みんなで俺を嗤っているだろう。


 俺とハリマンはお互い無言のまま紅茶を飲み、ほんの暫し待つと『コンコンコン』と部屋の扉からノックが鳴り、俺は近隣諸国有数の貴族たちを出迎える為に再度スッと立ち上がり背筋を伸ばす。


 今度こそ頼むぞ……。


 まず入室してきたのは30歳後半ぐらいの妖美で美人の金髪碧眼のお姉さん。


 フェロモンムンムンで、おっぱいが大きい。


 次いで入室してきたのは、20歳ぐらいだろうか?金髪碧眼のイケメンと、同じく20歳ぐらいの金髪碧眼のお姉ちゃん。


 お姉ちゃんも、フェロモンムンムンでおっぱいが大きい。


 次いで入室してきたのは、15歳ぐらいの金髪碧眼の美少女ちゃん。


 おっぱいは二人に負けているが『まだまだ成長期なんですぅ!!これからなんですぅ!!』と主張している。


 次いで入室してきたのはミリスさんと、茶器一式を乗せたワゴンを引く先ほどの美人の奴隷メイドさん。


「タロウ様、こちらがハリマン様の正妻ソフィア様になります。そしてハリス子爵家嫡子ハミルトン様、ハミルトン様の正妻サラ様、そして本日の主役マリア様になります」


 ミリスさんからそれぞれ紹介された後、左手を腰に当て、右手は胸に、そして深く一礼をする。


「ソフィア様、ハミルトン様、サラ様、マリア様。本日はお目にかかれて光栄です。近隣諸国一帯の『全権大使』として、ニホン国の代表を任されているタロウ・コバヤシと申します。以後、よしなにお願い申し上げます」


「タロウ様、ソフィア・メッヘル・ハリスです。こちらこそ、よしなにお願いします」


 ん?


 名前の間にメッヘル侯爵家の名が……。


「タロウ殿、ハミルトン・ハリスだ。こちらこそ、よしなにお願いする」


「タロウ様、サラ・ドルシー・ハリスです。こちらこそ、よしなにお願いします」


 なるほど。


 貴族家では、他家に嫁ぐと名前の間に『何処の貴族家の嫁なのか?』が分かる様になってるのか……。


「タロウ様、マリア・メッヘル・ハリスです。こちらこそ、よしなにお願いします」


 ん?


 マリアちゃんもメッヘルを名乗るの?


 未婚は『何処と何処の貴族家の子』を表すのかな?


 それとも男系だけハリスだけを名乗るの?


 よく分からん。


 それぞれと挨拶をした後、まずソフィアさんが座り、次いでハミルトンとサラさん、次いでマリアちゃんが座る。


 それを見届けた後に、俺が座る。


 贈答の儀式だから、俺が序列の最後になるのは自然だな。


 だが、ハリス子爵家には護衛が一人もいない。


 つまり形式的序列ではハリス子爵家、実質的序列では俺が上だと暗に示している。


 これが貴族家の暗黙的マナーの一つなんだろうな。


 クソ面倒くさそう。


 美人の奴隷メイドさんが、それぞれに紅茶を薦めた後、深く一礼してから退室する。


「ミリス、始めてくれ」


「ハリマン様、かしこまりました。タロウ様、それでは私ミリスがタロウ様の代理としてハリス子爵家に贈答品をお渡し致します」


「ミリスさん、お願い致します」


 道中の軽い打ち合わせ通りに、ミリスさんが贈答の儀式を進行する。


 ミリスさんには贈答品の目録を先に渡しており、上から順に贈答品を渡す手筈になっている。


 贈答一発目は、マリアちゃんが希望した『シャンプー』だ。


 木箱の蓋には糊でコピー用紙が貼られており、そこには贈答品の名前が書かれており、ミリスさんが目録を読みながら目当ての木箱を探し当て、木箱の蓋を開ける。


 おそらく『シャンプー』が20個入れてる木箱だろう。


 ………………。


 …………。


 ……。


 無言。


 無言のまま、ミリスさんが固まっている。


「あの?ミリスさん?」


「…………」


「ミリスさーん?」


「ハッ!!……た、大変失礼を致しました。それではまず『シャンプー』から贈答を致します。こちらがニホン国から贈答される『シャンプー』になります」


 そう言ってから、非常に美しく芸術的なガラス製の『高級デカンタ』に入れられた『シャンプー』をハリス子爵家に見せる様に丁寧に持ち上げる。


 ポンプ式は技術の塊だから、ガラス製に移し替え『複製』した。


 あの『高級デカンタ』、美咲先輩からの誕生日プレゼントなんだよな。


 ある年の誕生日に『高級デカンタ』を30種類ほど貰ったけど、デカンタなんて全く使わないから飾ってるだけだった。


 いやー、やっと役に立ったよ。


 ありがとう、美咲先輩。


 青い顔をしたミリスさんが『高級デカンタ』に入れられた『シャンプー』を優しくそっとテーブルの上に置く。


「ハリマン様、こちらが『我々』ニホン国が誇る『シャンプー』になります。ニホン国とハリス子爵家の友好の証とし、同じ品を20個ハリス子爵家に贈答致します」


 ………………。


 …………。


 ……。


「あの?ハリマン様?」


「…………」


「ハリマン様ー?」


「ハッ!!……た、大変失礼をした。そ、それで何でしたかな?」


「……ハリマン様、こちらが『我々』ニホン国が誇る『シャンプー』になります。ニホン国とハリス子爵家の友好の証とし、同じ品を20個ハリス子爵家に贈答致します」


「た、タロウ殿、に、ニホン国の大変素晴らしい品を贈答してくださり、感謝する。お、同じ品を20個と言われたが、この素晴らしい品を20個も?」


「ハリマン様、もちろんです。『我々』ニホン国はハリス子爵家との友好と共存共栄を望んでおります」


 青い顔のハリマンがチラリと青い顔のミリスさんを見る。


「は、ハリマン様、あちらの木箱に同じ品が19個あります……」


 それを聞いて、驚愕するハリス子爵家の面々。


「クックック。ハリス子爵、『その程度』の品で驚いてると、後が大変だぞ?」


「く、クラウス殿、ま、まさかこれ以上の品が?」


「あぁ、もちろんだ。『その程度』の品は、ボスの資産からすれば1クローネの価値も無い。いや、今日ハリス子爵家に贈答する品々は、ボスの資産からすれば1クローネの価値も無い」


 ちょっ!?


 おまっ!!


 ハードルを上げんな!?


 しかもニホン国からの贈答じゃなく、俺からの贈答になってるだろうが!?


 つーか、王太子の話を暗に蒸し返すなよ!!


「……クラウスさん、喋り過ぎです」


「おっと、これは失礼をした、ボス」


 お前、全然悪気が無いだろ?


 くそー、護衛の権限で俺の身の安全の為もあるのだろうが、コイツ絶対に俺を揶揄って楽しでるだろ?


 いつか必ずお前に復讐してやるからな!!



タロウ・コバヤシ

※クローネ

約43億クローネ

※ユーグレナ

約230万ユーグレナ


ニホン村

※クローネ

約40億クローネ


ユーグレナ共同体

※魔石ポイント

約900万MP

※通貨供給量

1億ユーグレナ


ユーグレナ軍

※軍事予算

330億クローネ


所有奴隷

男 325人

女 184人



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