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93話

93話


「タロウ殿、それは明らかにおかしい。ニホン国には迷宮が無いのに、なぜオリハルコンの神像が複数体もあるのだ?秘匿されているが、近隣諸国の女神信仰では迷宮とオリハルコンの神像は一対だ。例外は無い」


 安易に『嘘』を塗り固め続けると、大抵は矛盾が発生し『真相』は『嘘』へと簡単に剥がれ落ちる。


 その好例が現在である。


 ど、どうしよう……。


 と、とりあえずまだまだ知りたいことがあるし、話題を逸らしながら時間を稼ぐか。


「ハリマン様、それを答える前に一つ伺いたいことがあるのですが、近隣諸国またはハリス聖教の教義に『使徒』または『使徒の祝福』はございませんか?ニホン国の宗教的慣習では、ハリス聖教の始祖ハリスは女神ユーグレナ様から『使徒の祝福』を授かった『使徒』と定義され、オリハルコンの神像を通して女神ユーグレナ様と直接的に会話や交信、または『啓示』が与えられるとされております」


「そ、そこまで知っているのか……。ミリス、本当に秘伝を流してないのだな?」


 ハリマンはスッと目を細めて、疑惑の眼差しをミリスさんに向ける。


「ハリマン様、始祖ハリス様と女神ミルフィーユ様に誓って、その様な恥ずべき行為は決してしていないと宣誓します」


 真っ直ぐな瞳で、ハリマンを直視するミリスさん。


「ミリス、二度も信仰を疑いすまなかった。無礼を承知で尋ねるが、クラウス殿も主人であるタロウ殿にメッヘル聖教の秘伝を流してないのだな?」


 疑惑の眼差しを、そのままクラウスに向けるハリマン。


「ふん。本来ならそんな無礼な戯言など答える気もしないが……ハリス子爵、始祖メッヘル様と女神『ユーグレナ』様に誓って、有り得ないと宣誓する」


 反射。


 反射的に後ろを振り返り、驚愕の眼差しでクラウスたちを見る。


 クラウス、ペロシ、マイク、ピーター、ビル、5人ともが『ニヤリ』と笑っていた。


 いつからだ?


 いつから俺が『使徒』だとバレていた?


 違和感。


 違和感はあった。


 クラウスたちの誰もが『複製スキル』が迷宮の何階層で入手できるのか?それを全く聞いて来なかった。


 本来なら興味津々どころか最高機密の情報に近い情報だ。


 誰もが知りたいに決まっている。


 なのに質問すら、してこなかった。


 俺が知らないだけで、この世界はユニーク・スキルのオーブが大切に大切に一族の命運を賭けてまで保護され、現在まで残っていた世界だ。


 つまり『複製スキル』をクラウスたちに見せた『最初の最初』から、クラウスたちは俺が『使徒』だと判断していたのか……。


「タロウ殿、どうされた?」


「ハリス子爵、ボスは俺が女神の『真名』を唱えたことに驚いただけだ」


 あぁ、本当に驚いたさ。


 心底驚いた。


「く、クラウス殿、ほ、本当に女神の『真名』なのか!?」


「あぁ、本当だ。少なくとも俺たちは『真名』だと確信している。秘伝通り『真名』を唱えてオリハルコンの神像に礼拝すると、心に平安が訪れる。秘伝が真実ならば、あとは『鑑定スキル』でオリハルコンの神像を『鑑定』すれば『真名』かどうか確定されるだろう」


 そろそろ正面に向き直りたいんだけど、俺を無視して二人で話してるから空気を読んで動き辛い……。


 というか、『鑑定スキル』を使えば『真名』が分かるのかよ……。


 オリハルコンの神像は迷宮産扱いなのか?


 よく分からん。


「お、オリハルコンの神像に礼拝したのか!?ま、まさかここハリスにオリハルコンの神像があるのか!?」


 あ、当然そうなるわな……。


 もしかしてオリハルコンの神像目当てに、襲撃される?


「あぁ、もちろん俺たちは敬虔なメッヘル聖教徒だ。跪き、頭を垂れ、『真名』を喪失したことを心から深く女神ユーグレナ様に謝罪し、オリハルコンの神像に礼拝した。そしてオリハルコンの神像はハリスというか、ボスの宿に普通にあるぞ?」


 おいおいおい。


 バラして大丈夫なのか?


 大丈夫と判断しているから、バラしてるんだろうけど……。


「わ、我々も、オリハルコンの神像に礼拝しても良いのか!?いや、させて貰えるのか!?」


 まぁ、暴力沙汰にならないなら、別に良いよ?


「そりゃそうだろ?何の為にボスがわざわざ遠い異国の地であるハリスにまで貴重なオリハルコンの神像を持って来たと思ってるんだ?女神ユーグレナ様の『真名』を広める為だろ?それ以外にあるのか?」


 おお、クラウスは本当に敬虔なメッヘル聖教徒なんだな。


 俺の『使徒』としての役目を正確に理解している。


 というか、俺の知らない所でクラウスたちも女神ユーグレナ様への信仰を深めてたのか……。


 さすがユーグレナ様です。


「な、ならばオリハルコンの神像が複数体あるのも、ほ、本当の話なのか!?」


「ボスから聞いたが、ニホン国にはオリハルコンの神像が本当に複数体あるらしい。オリハルコンの神像を貰う約束も俺はボスとしたしな。ボスから貰う女神ユーグレナ様のオリハルコンの神像を、俺はメッヘル聖教に寄贈する予定だ」


 そんな約束、していません。


 でも、許す。


 ナイスアシストだ!!


「だ、だが、なぜ迷宮も無い国にオリハルコンの神像が複数体もあるのだ!?秘伝に偽りがあるのか!?」


「さぁな。秘伝では迷宮とオリハルコンの神像は一対だが、迷宮とオリハルコンの神像の両方を女神は使徒に与えるのか?それとも元々世界には女神が迷宮を創り、オリハルコンの神像を与えられた使徒が女神の啓示を受けて迷宮に向かうのか?秘伝では2つに分かれている。後者ならば、迷宮が無い地域でも女神からオリハルコンの神像が与えられても矛盾はしないし、どうやら後者が真実なのだろう」


 た、単なる軍事馬鹿の暴力大好きな野蛮人だと思っていたクラウスが、知的なインテリだと!?


 でも、ナイスアシスト!!


 クラウスさん、カッコいいっす!!


「うーむ……。確かに……」


 フハハハハ!!


 さすがクラウスさんっす!!


 パないっす!!


 ハリマンを論破したぞ!!


「ハリス子爵もボスに頼めば、ハリス聖教の為にオリハルコンの神像を提供すると思うぞ?」


 うむうむ。


 クラウスさんも商売上手じゃないか。


 きちんとした『対価』があれば、ユーグレナ様の為にいくらでも提供しますよ!!


「ほ、本当か!?だ、だが、なぜ『全権大使』とは言え、タロウ殿にそこまでの権限があるのだ!?」


 た、確かに……。


 ん?


 んんん?


 あれ?


 なんか雲行き怪しくないか?


 話の筋的に、全権大使以上の権限と身分が俺にあるってことだろ?


「そりゃあ、ボスは超大国ニホンの王族の嫡子だからな。あ、ボス、これ言って良かったのか?」


 おい!?


 貴様!!


 いい加減にしろよ!?


 誰が王族だ!?


 しかも嫡子だと!!


 全権大使ですら荷が重いのに、王族の嫡子とかふざけんなよ!!


 俺は根っからのパンピーだぞ!?


 しかも『あ、言っちゃった♪』と、オッサンのテヘペロとか誰得なんだよ!!


 ふざけるのも大概にしろ!!



タロウ・コバヤシ

※クローネ

約43億クローネ

※ユーグレナ

約230万ユーグレナ


ニホン村

※クローネ

約40億クローネ


ユーグレナ共同体

※魔石ポイント

約900万MP

※通貨供給量

1億ユーグレナ


ユーグレナ軍

※軍事予算

330億クローネ


所有奴隷

男 325人

女 184人



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