86話
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86話
「クラウスさん、どう思います?」
門を抜けると、ハリス子爵家の財力を誇示するかの様に美しく幾何学的な庭園が広がっていた。
ジロジロと観光目的で美しい庭園をゆっくりと眺めていたいが、それどころでは無い。
なぜならミリスさんの護衛奴隷は垣根の中に入らず、クラウス率いる護衛部隊は帯剣しているのに何も注意されずに垣根の中に入っているのだから。
俺は違和感を解消する為にクラウスにヒソヒソと話しかける。
「ボス、俺も分からない。分からないが、貴族の慣習として護衛の帯剣を許可することはある」
「そうなんですか?」
「例えば王族が来た時、護衛者の武器は取り上げない。また基本的に上位の貴族家の護衛の武器も取り上げない」
なるほど……。
確かに王族の護衛なら、武器は取り上げられないよな……。
王族の護衛の武器を取り上げたら『あぁん?ワシを舐めてるのか?ええぞ。戦争や。お前ら全員、晒し首や』ってなるよな。
そして自分よりも上位の貴族家の護衛の武器も、取り上げないよな。
つまり、自分よりも身分が低い者は、自衛だろうが護衛だろうが武器の持ち込みは許さない。
不平等。
それが身分社会の掟なのだろう。
「……でも、私は貴族でも王族でもありませんよ?」
「ボス、だから分からないと言っている。門番の行動からハリス子爵家よりもボスが上位であると示しているのは分かる。だが、その理由が分からない。ボス、何かしたのか?」
「何もしてませんよ。紅茶を売っただけですよ?それだけで上位者扱いにするのですか?」
「ボス、有り得ない。序列は、結局は軍事力に基づく。俺たち程度の軍事力では上位者には成れない」
「では、なぜ?」
「ボス、だから分からないと言っている」
クラウスとヒソヒソとあーだこーだと話している内に、宮殿の前まで辿り着く。
宮殿の前にも護衛の門番が40人ほどおり、ミリスさんが辿り着く前から左右に分かれて隊列を作り、ピシッと最敬礼をしていた。
「タロウ様、本日のことはみなが知っておりますので、このまま宮殿の中に入ります」
そしてスタスタと宮殿の中に入るミリスさん。
は?
マジで?
さすがに宮殿内では帯剣は許されないでしょ?
困惑しながらもおそるおそる皆で宮殿の中に入るが、護衛の門番たちは誰も止めない。
いやいやいや。
武器を持ち込んどるんやぞ?
誰も止めないのか?
クラウスたちを見ると、さらに困惑した顔をしている。
もはや、どっかの宇宙の猫だ。
ミリスさんは勝手知ったる我が家なのか、スタスタと宮殿内を歩いて行く。
豪華絢爛な宮殿内を観光気分で眺めたいが、護衛部隊を含めてそれどころでは無い。
スタスタと歩くミリスさんに付いて行くと、ピタリと扉の前に立つ。
「タロウ様、こちらの部屋に贈答用の荷物を置いてください。またタロウ様、クラウス様、副官の3名、ペロシ様以外は、あちらの部屋でお待ちください」
俺たちの困惑を余所にミリスさんがテキパキと指示を出す。
贈答用の荷物を部屋の中に全て入れ、護衛部隊や下級兵士も部屋の中で待機する。
「それではタロウ様、本日ハリス子爵様と談笑する部屋までお連れします」
「えっと、帯剣したままのクラウスさんたちも一緒で大丈夫なのですか?」
「タロウ様、許可を得てますので、大丈夫です」
ホンマかいな?
帯剣してることを理由に『コヤツ、無礼者じゃ!?晒し首にせよ!!』とか、ならんよな?
疑心暗鬼になりながらも、スタスタと歩くミリスさんを追いかける……。
タロウ・コバヤシ
※クローネ
約43億クローネ
※ユーグレナ
約230万ユーグレナ
ニホン村
※クローネ
約40億クローネ
ユーグレナ共同体
※魔石ポイント
約900万MP
※通貨供給量
1億ユーグレナ
ユーグレナ軍
※軍事予算
330億クローネ
所有奴隷
男 325人
女 184人




