85話
※更新がストップし申し訳ありません。プライベートが忙しくなり、こちらに集中できなくなりました。時間が出来たので、連載を再開します。
85話
「それではタロウ様、ハリス子爵家に参りましょうか」
ミリス商会の客室で紅茶を飲みながら少し待っているとミリスさんが入室し、直ぐにハリス子爵家へと向かった。
道中、歩きながらもハリス子爵家での打ち合わせを軽くする。
まずはハリス子爵家の当主と顔繋ぎという名目で談笑する。
顔繋ぎと談笑が終わればマリア様に美容品と各種商品を説明しながら贈答し、代わりにハリス子爵家から俺に返礼品としてクローネが貰えるらしい。
それで本日は終了とのこと。
貴族に対するマナーとかも聞いてみたが『本日は非公式の場ですから、気になさらなくて大丈夫ですよ』とミリスさんは言うが、本当に大丈夫なのか?
相手、貴族だよね?
いきなり問答無用でクビが物理的に飛ばない?
ビクビクしながらもミリスさんと談笑していたら、土地が限られた壁内にも関わらず遠くまで垣根に囲まれた美しく巨大な『宮殿』が遠目に見えて来た。
ヤバい……。
ハリス子爵家を舐めてた。
どー考えても、王族並みの財力と権力を持つ貴族家だ……。
俺みたいなパンピーが会って良い一族じゃないでしょ……。
というか、なぜ子爵を名乗ってるんだ?
公爵とか侯爵とか名乗れよ……。
「み、ミリスさん……。本当に大丈夫なんですか?」
「タロウ様、何度も申し上げておりますが、大丈夫ですよ」
いやいやいや。
大丈夫なわけないでしょ……。
「……ハリス子爵家はあの宮殿ですよね?」
「タロウ様、その通りです。あちらが近隣諸国有数の一族であるハリス子爵家が住まう宮殿になります」
だよね。
見るからに『ココがハリス子爵家やぞ?』と主張してるし……。
「その……なぜハリス子爵家は子爵家なのですか?公爵家や侯爵家、それどころか王家も名乗れるのでは?」
「歴史的な問題もありますが、ラーネル王国において公爵家や侯爵家、また伯爵家は王家との結びつきが強い分、王国に対する強固な責任と義務が伴います。身分に応じた責任と義務を全うするからこそ、高い身分を王家から与えられているとも言えます。言い換えると、ラーネル王国では子爵家は自治権が強い分、王国や王家からの加護が少なく自力救済が求められます」
「な、なるほど……。つまりラーネル王国からの干渉を避けるのに都合が良いのが子爵家だと……」
「タロウ様、その通りです。男爵家では近隣諸国では身分が低すぎ、伯爵家だと王国からの干渉が強くなります。そしてラーネル王国とハリス子爵家は、あくまでも『同盟関係』です。ハリス共和国の当時は近隣諸国に対して中立を貫いておりましたが、囲まれる様にハリス周辺をラーネル王国が取りましたからね。地政学的に貿易権が侵害されることを恐れたハリス共和国はラーネル王国に頭を下げた形になります」
なるほど。
つまり貿易の自由の為にラーネル王国に従属したが、公爵家や侯爵家だと王国に都合良く使われるから、半ば独立国の様な子爵家を選んだ感じか……。
「不思議に思うのですが、これだけの財力があるならラーネル王国との戦争は選ばなかったのですか?むしろ周辺地域を侵略したり」
「そうですね……。おそらく興味が無かったのでしょうね。大規模な水運と迷宮で発達したハリスは、不効率な陸路に興味がありません。例えば、ハリス南部は未だに未開発地です。農奴や行商を発展させるよりも、冒険者や水夫を発展させるのが古来よりハリスの指針です」
な、なるほど……。
つまり周辺地域を侵略しても不効率で儲けが無いから、興味が無いのか……。
そして農奴や行商は周辺地域が発展させれば良いと……。
迷宮都市ハリスのアレコレを考えている内に、とうとう垣根の門にまで辿り着いた。
10名ほどの門番がミリスさんを見た瞬間、ピシッと最敬礼をする。
……庶子分家とは言え、どー考えてもハリス子爵家の血の効果ですよね……。
「タロウ様、本日のことは門番たちも知っておりますので、このまま宮殿まで向かいます」
え?
いいの?
荷物を改めたり、武器を預けたりしなくて良いの?
「えっと……ミリスさん、大丈夫なんですか?」
「タロウ様、大丈夫ですよ。さ、参りましょう」
ホンマかいな?と思いクラウスたちを見てみると、みな困惑した顔をしている。
やっぱ、そうだよな。
荷物はともかく、武器の持ち込みとか有り得ないよな。
違和感を持ちながらも、スタスタと歩くミリスさんを追いかける様に歩く。
タロウ・コバヤシ
※クローネ
約43億クローネ
※ユーグレナ
約230万ユーグレナ
ニホン村
※クローネ
約40億クローネ
ユーグレナ共同体
※魔石ポイント
約900万MP
※通貨供給量
1億ユーグレナ
ユーグレナ軍
※軍事予算
330億クローネ
所有奴隷
男 325人
女 184人




