81話
※赤い狐と緑の狸
※七生様から素敵なレビューを頂きました!心より感謝申し上げます。ペコリ
81話
「それでタロウ様。いつ頃にはマリア様に美容品等を贈答できますでしょうか?」
交渉が無事に『成立』し、後は細々とした実務の話し合いが始まった。
「そうですね……本日はマリア様に贈答する商品を一度精査したいので、こちらは明日以降でしたら大丈夫ですよ」
何が戦争に使われるか全く分からんからな。
一度聖剣クラウスたちに精査してもらわんと。
「タロウ様。それでしたら明日の昼にハリス子爵家に共に参りましょうか」
ん?
共に参る?
え?
俺もハリス子爵家に行くの!?
ゴリゴリの封建社会の貴族家の家なんて、絶対に行きたくないんすけど……。
「あ、あの……私もハリス子爵家に参らないとなりませんか?」
「ええ、もちろんですわ。ハリス子爵家御用達となったユーグレナ商会を率いるタロウ様には一度ハリス子爵様に顔繋ぎしたいと思っておりましたし、丁度良い機会かと思います」
いやいやいや。
俺は別にハリス子爵家と顔繋ぎしたいと全く思ってないんすけど。
というか、もちろんとか丁度良い機会って何の話なんだよ……。
「えーと……私は異国の人間ですので、まだ迷宮都市ハリスの価値観や常識も分かりませんし、貴族家に対する礼儀作法なんて全く分からないんですが……」
ハリス子爵家に行って『なんやコイツ?ワイを舐めとんのか?問答無用でこのクソガキを晒し首にしろ』とかならんよな?
俺の首、物理的に大丈夫なの?
「タロウ様、ご安心ください。ハリス子爵家を率いる御当主様は気さくな方でございます。それに御当主様は遥か遠い異国出身のタロウ様に大変ご興味を持たれておられ、遥か遠い異国の話を是非とも聞きたいと楽しみにされておられます。また私もタロウ様の傍で御当主様と面通ししますので、何かありましたら必ずタロウ様をサポート致しますわ」
チッ。
つまり『情報を抜く』って、話だろ?
何とかこの話から逃げたいんだが、ミリスさんが徐々に『逃げ道』を塞ぎ始めている。
というか、明らかに『首に縄を付けてでもオメーを必ずハリス子爵家に連れて行くからな?何をビビっとるんや?男やろ?玉付いとんのか?ガタガタ言わずに、さっさと尻尾振ってハイと言えや』って、感じのギラギラした瞳で俺を見てるんすけど……。
さて、どうやって『凄腕の商人』から逃げようかな……。
「……クラウスさんたちを連れて行けるのでしたら、ハリス子爵家に参りますが……」
とりあえず無理目な条件を出して逃げる。
圧倒的な『暴力』を貴族家の敷地内に招くわけねーしな。
というか、この条件が無理なら絶対にハリス子爵家には行かんぞ。
「もちろん構いませんわ。御当主様はタロウ様がクラウス様を連れて来ることは『当然』予測されておられましたから、既に許可は頂いております」
なるほどな。
近隣諸国随一の迷宮都市を抱えるハリス子爵家だ。
『頭お花畑』の物語のようなバカ殿では無いよな。
既に最初から『逃げ道』を塞いでるのか……。
さらに駄々をこねても良いがこの条件を先に塞いでいるのなら、どうせ『全ての逃げ道』は塞がれているんだろうな。
はぁー。
ゴリゴリの封建社会のハリス子爵家に行くしか無いか……。
「……分かりました。明日、贈答用の商品を持ってハリス子爵家に伺います。ハリス子爵家の場所が分かりませんので、昼前にミリス商会に伺えば良いのでしょうか?」
「ええ、タロウ様。明日の昼前にミリス商会に来て頂けましたら、私ミリスが責任を持ってハリス子爵家までご案内致します」
「分かりました。それでは明日の昼前にミリス商会に伺います。……ああ、そうだ。ミリスさんの『お願い事』を聞きましたから、こちらの『お願い事』も聞いて欲しいのですが、宜しいでしょうか?」
こんなクソみたいな『お願い事』をして来たんだ。
タダで帰れると思うなよ?
「……タロウ様、どの様な『お願い事』でしょうか?」
「ミリスさん、そんなに警戒されなくても大丈夫ですよ。ニホン村に行く馬車に、毎日私の獣人の奴隷5名も一緒に乗せて頂けませんか?昼前の馬車に乗ってニホン村へと向かい、昼後の馬車に乗ってこの宿まで送り迎えして欲しいんですよ。もちろんお手数をお掛けしますので、代金は支払います」
アンナさんと獣人ちゃんたちの『安全』の為に、ハリス子爵家と御三家とミリス商会の『社会的信用』を利用させてもらうよ。
何処の馬鹿タレがハリス子爵家に連なるミリス商会に喧嘩売るんだ?って話だからな。
「タロウ様、その『お願い事』でしたら可能でございます。馬車は客人用馬車と荷馬車がありますが、どちらの馬車をご希望されますか?」
「もちろん客人用馬車でお願い致します」
そりゃ客人用一択やろ。
「かしこまりました。ミリス商会が責任を持ってタロウ様の『性奴隷』をニホン村まで送り届け、またこちらの宿にまで送り届けます」
チッ。
どうせバレる情報だが、先に『見抜く』か。
『ミランダ商会の最高傑作』は、本当に油断ならない商人だな。
まぁ、これでアンナさんと獣人ちゃんたちの『安全』は確保できた。
何よりもアンナさんと獣人ちゃんたちの『安全』を第一にする。
オリハルコンのユーグレナ様の神像は、最悪略奪されても『複製』すれば良いし。
「……ミリスさん、ありがとうございます。代金はペロシさんに請求してください」
「かしこまりました。タロウ様、そう言えばメアリー様の為に『奴隷契約』のスキルオーブは無事落札されたのでしょうか?」
「ええ、もちろんですよ。約32億クローネで落札しました」
クソほど粘った馬鹿タレがおったけどな!!
「……32億クローネでございますか?相場から些か離れておりますね……。タロウ様、御助言を一つ申し上げますと、おそらくモルモン商会の『子狸』に騙されておられますよ?」
ん?
モルモン商会の子狸?
モリスさんのこと?
騙されている?
俺はモリスさんに騙されたの?
「えっと……どういうことでしょうか?」
「タロウ様。『奴隷契約』のスキルオーブは第一種迷宮産アイテムですから、取り仕切っているオークショニアは『子狸』のモリスです。そして『奴隷契約』のスキルオーブは近隣の迷宮都市からも大都市ハリスに集められ毎回オークションに出品されるほど安定性のある商品ですので、オークションでも相場から離れないのです」
ふむふむ。
オークションで高く売る為にラーネル王国3番目の経済規模を持つ大都市ハリスに『奴隷契約』のスキルオーブが集められ、毎回安定的に供給されるから相場を離れたら『次の機会で良いか』と誰も買わないってことか。
なら、なんで今回は相場から離れたの?
騙しって、何だ?
「ですので、安定性のある商品がオークションで相場から離れているのなら、何らかの『騙し』があると推測できます。おそらくですが……タロウ様は『子狸』に購入したい商品を伝え、『子狸』の配下が素知らぬ顔でBidを徐々に吊り上げ相場から離れたかと思われます。落札価格の10%がオークショニアの仲介手数料になりますので、配下を用いたBidの吊り上げはオークショニアが使う『騙し』の一つですね」
な、なるほど……。
確かに俺はモリスさんに落札したい商品を伝えているし、変に粘ったヤツもいた……。
モリスさん、何が『銀馬車の紙商人殿には大恩があります』だよ。
もう絶対に『子狸』は信用しねーからな。
俺は異世界の商人たちの逞しさに戦々恐々しながらも、人を化かす異世界の妖狐と妖狸を『義』と『利』で仕分けする。
タロウ・コバヤシ
※クローネ
約35億クローネ
※ユーグレナ
約200万ユーグレナ
ニホン村
※クローネ
約40億クローネ
ユーグレナ共同体
※魔石ポイント
約850万MP
※通貨供給量
1億ユーグレナ
ユーグレナ軍
※軍事予算
230億クローネ
所有奴隷
男 325人
女 184人




