74話
74話
「では、ペロシさん。後はよしなにお願い致します」
異世界7日目。
昨夜はいつも通り収支報告を終わらせ『給与』50万ユーグレナと108億クローネをペロシさんから預かり、夜の会議も終わらせた。
またもやペロシさんが『ニタリ』と笑いながら軍事予算にと100億クローネを分捕りに来たが、本日の迷宮産オークションの為に資金が必要だと懸命に説得し、事無きを得た。
隙あらば暴力派のペロシさんが泡銭のクローネを虎視眈々と狙っているのが、怖いんですけど……。
朝はいつも通りペロシさんと全ての打ち合わせを終わらせ、ペロシさんをお留守番にして聖剣クラウスたちとオークション会場へと向かう。
オークション会場は商業ギルドの裏手側にある。
商業ギルドの裏手側をトコトコと20分ほど進むと、言葉通り『バカデカい』建物が見えて来た……。
こんな文明度にしては、デカ過ぎる建造物でしょ……。
まるで迷宮都市ハリスの繁栄と富を象徴するような巨大な建造物の高さは3階建てぐらい。
そんなに建造物としての高さはないが、とにかく横幅が広い。
商業ギルドが簡単に3つ4つは入りそうなほどの幅広い建物だ。
いったい何人ぐらい収容できる施設なのだろうか?
そんなことを考えながらオークション会場の入り口へと向かう。
「ようこそ、オークション会場へ。身分証明書の提示をお願い致します」
身なりが良く、緑色の髪が特徴的な男性の従業員が聖剣クラウスたちをジロジロと見ながらも、オークション会場の入り口で身分証明書の提示を求めて来た。
なるほど。
『暴力こそ全て』の壁外だからこそ、セキュリティー意識が強いんだろうな。
「分かりました」
ゴソゴソと大き目の皮袋からユーグレナ商会の証明書とハリス子爵家御用達商会の認可状を取り出す。
もちろん『複製』品。
「……や、やはりユーグレナ商会様でしたか。お噂の『銀馬車の紙商人』殿とお会い出来て光栄です。私はモルモン商会に連なるモリスと申します。オークション会場はモルモン商会が取り仕切っておりますので、何かありましたら私モリスにお伝えください」
モルモン商会?
確か御三家の一つだったよな?
あー、なるほどね。
ジロジロと聖剣クラウスを見てたのは、ラーネル王国で超有名人だからか。
そりゃ超有名人の聖剣クラウスを一目見れば、『俺』が誰だか分かるわな。
ミリスさん曰く、聖剣クラウスとの奴隷契約の成功はハリス中で噂になってたらしいし。
このやり取りはこれからも有りそうだから、覚えとこ。
「かしこまりました。モリスさん、宜しくお願い致します」
「いえ、こちらこそよしなにお願い致します。モルモン商会に連なる全ての者は、モルモン商会にも紅茶の葉を定額で卸して頂いた『銀馬車の紙商人』殿に大恩がありますので、オークションのことで何かありましたら気軽にお申し付けください」
ふむ。
きちんと『毒』は御三家にも巡っているようだ。
「いえいえ。喜んで頂けて何よりです」
モリスさんと暫しオークションのことなどで雑談し、オークションや迷宮産アイテムの知識をインプットして行く。
迷宮産アイテムは1階層から10階層までのアイテムを『第一種迷宮産アイテム』と呼び、11階層から20階層までのアイテムを『第二種迷宮産アイテム』と呼ぶ。
つまり近隣諸国は31階層から40階層までの『第四種迷宮産アイテム』までしか入手できず、ここ迷宮都市ハリスのみが41階層目からの『第五種迷宮産アイテム』を入手し、そして独占している。
近隣諸国における迷宮都市ハリスの国力の優越性が、この『第五種迷宮産アイテム』の独占から発生している。
近隣諸国からの多大なる嫉妬心を伴いながら……。
モリスさん曰く、俺たちが狙っている奴隷契約のスキルオーブは『第一種迷宮産アイテム』であり、午前の部のラスト付近でオークションに出品されるとのこと。
そして奴隷契約のスキルオーブはオークションでの相場がだいたい30億クローネ前後らしい。
さすがオークションを取り仕切っているモルモン商会に連なるモリスさんだ。
オークションの知識が豊富でめちゃくちゃ便利だから、仲良くしとこ。
ちなみにモリスさんとの雑談でミリスさんの話も出て来て、紅茶の葉をモルモン商会に定額で卸す代わりに、モルモン商会が握っていた小麦の利権の一部やその他の細々とした利権も『交換』というか豪腕で奪われたらしい……。
モリスさんが『あの女狐が』と吐き捨てたのが印象的だった。
ミリスさん、アンタ紅茶の葉の利権で『親族』に何したのよ……。
タロウ・コバヤシ
※クローネ
約149億クローネ
※ユーグレナ
約150万ユーグレナ
ニホン村
※クローネ
約40億クローネ
ユーグレナ共同体
※魔石ポイント
約850万MP
※通貨供給量
1億ユーグレナ
ユーグレナ軍
※軍事予算
130億クローネ
所有奴隷
男 325人
女 184人




