71話
71話
「いくら何でも全然『割りに合わない』話ですよね」
ミリスさんが部屋から出て行った後、ペロシさんがいないことが少し不安だが聖剣クラウスと副官3人で話し合う。
シャンプーやリンスなどの美容品は、容器にさえ気を付ければハリス子爵家に卸しても大丈夫とのこと。
良かった。
さすがにシャンプー1つで戦争は一変しないみたいだ。
「ボス、その通りだ。問題の重さが全然違う。それが分かっているのなら、俺からは何も無い」
コチラは、メアリーちゃんをミリス商会に加盟させてもらうこと。
アチラは、ハリス子爵家とウィリアムズ王国の関係改善と関税を引き下げてもらうこと。
問題の『重み』が全然違う。
「了解、クラウスさん。マイクさん、ピーターさん、ビルさんは何か意見はありませんか?」
何も意見はなさそうだな。
「それじゃミリスさんを呼びますね……っとその前に、クラウスさん、ハリス子爵家とウィリアムズ王国が仲違いした原因や理由をご存知ですか?」
「ボス、もちろん知っている。むしろ近隣諸国で知らない人間はいないほど、有名な話だ」
へー。
そんなに有名なんだ。
泥沼の戦争でもしたのか?
「クラウスさん、詳しく教えてもらえますか?」
「了解、ボス。ペロシ、がいないから……マイク、お前がボスに説明しろ」
「ハッ!!ボス、事の発端は20年ほど前になります。当時、ハリスも含めた近隣諸国の迷宮の攻略階層は40階層が限界階層でありました。近隣諸国の歴史上、それまで40階層を越えた人類はおりません」
ふむ。
現在は49階層が限界で、20年前までは40階層が人類の限界だったと。
「しかしここハリスで、一人の冒険者が率いる『クラン』が40階層を突破し、人類未踏の41階層に辿り着きました。41階層目の魔石を持ち帰ることで階層更新の証明がなされ、近隣諸国全てがその偉業に驚愕し、冒険王オリバーと讃えられました」
ふむふむ。
魔石はポイントにより何処の階層の魔石か分かるから、簡単に階層更新の証明が出来たと。
たぶん魔石ポイント4001から4100の間の魔石を持ち帰ったんだろうな。
んで、オリバーという冒険者が未踏の階層を更新したことが証明されて、近隣諸国がお祭り騒ぎになったと。
「ハリス子爵家は、すぐさま冒険王オリバーと独占契約を行い、冒険王オリバーの迷宮攻略の手法を秘匿化させました。そしてハリス子爵家の支援の下、たったの5年間で限界階層を49階層まで伸ばしました。ハリス子爵家が迷宮攻略の手法を秘匿化していることにより、近隣諸国は未だに40階層で足踏みしております」
ふむふむ。
迷宮攻略の情報を特許化して、秘匿させたんだろうな。
んで、迷宮都市ハリスだけが41階層から得られる新たな種類の魔道具やスキルオーブを独占して、ウハウハしていると。
「迷宮都市ハリスだけが41階層以上の迷宮産アイテムを独占し、さらには51階層以上の迷宮産アイテムを独占することを恐れた近隣諸国とラーネル王国の王族たちは、偉業達成と引き換えに平民である冒険王オリバーに不毛の大地である『マーティン島』を与え、マーティン準男爵に任じました」
ふむふむ。
オリバーさんが限界階層をどんどん更新するから、それを恐れた近隣諸国とラーネル王国の王族が偉業達成の名目でオリバーさんを貴族にして、さらには『島流し』にして迷宮攻略から遠ざけたと。
限界階層の更新で新たな迷宮産アイテムが手に入り、社会や生活が一新し便利になることよりも、政治的判断でこれ以上の階層更新を邪魔したと。
「冒険王オリバーがマーティン準男爵となり迷宮攻略から外れると、ピタリと迷宮の限界階層が止まりました。おそらく迷宮攻略の手法以上に、冒険王オリバーの『迷宮に対する勘』が優れていたのではないのか?と近隣諸国では噂になりました」
ふむふむ。
オリバーさんは美咲先輩並みに『野生の勘』があったんじゃないのか?って話だよな。
美咲先輩も『んー?こっちかもー』でゲームの迷路とかに全然迷わなかったし。
ふーむ。
今まで話を聞いていたけど、ハリス子爵家とウィリアムズ王国が喧嘩する理由、全く無くね?
「ボス、ここからが重要です。冒険王オリバーが王族の命令で準男爵としてマーティン島に向かう際に、一人の女性を伴侶として連れて行きました。その女性は、迷宮の限界階層更新により近隣諸国で話題沸騰中のハリス子爵家に遊学しに来ていたウィリアムズ王国の王女です。『冒険王オリバーと賢女ミネルヴァの身分を越えた純愛』と吟遊詩人が巷で奏で唄い、これまた近隣諸国中が大騒ぎになりました」
ふむふむ。
オリバーさんとウィリアムズ王国の王女のミネルヴァさんが『駆け落ち』同然に、マーティン島に向かったと。
「冒険者であるオリバーが近隣諸国から冒険王と讃えられマーティン準男爵になったとしても、所詮は平民の血です。誰の血が流れているのか全く分からぬ平民に、尊き血が流れる王女が家出同然に嫁いだことに激怒したウィリアムズ王国は、ハリス子爵家に遊学の管理責任を問い関税を引き上げました。もちろんハリス子爵家は関税の引き上げに激しく抗議をし、逆にウィリアムズ王国の王族教育の非を訴えたようですが、戦争まではしておりませんね」
あー、なるほど?
つまりウィリアムズ王国としては『お前を信じて儂の大切な愛娘を預けてたんやぞ?それやのに何処の馬の骨か分からんヤツに口説かれとるやないけ。お前んとこの管理はどないなっとるんや?近隣諸国から嗤われたやろが。赤っ恥を掻かされた責任を取ってもらおうか』って感じか。
んで、ハリス子爵家としては『八つ当たりするのもええ加減にしろよ?お前んとこの躾と教育が間違っとるから、アバズレ王女が何処ぞの馬の骨に股を開いて駆け落ちしたんやろが。近隣諸国から嗤われた?そらそやろ。儂らもアバズレ王女の奇行にクソ嗤ったわ』って感じか。
ガキの喧嘩かよ。
ミリスさんも喧嘩の原因の説明を省くわけだわ……。
タロウ・コバヤシ
※クローネ
約41億クローネ
※ユーグレナ
約100万ユーグレナ
ニホン村
※クローネ
約40億クローネ
ユーグレナ共同体
※魔石ポイント
約850万MP
※通貨供給量
1億ユーグレナ
ユーグレナ軍
※軍事予算
130億クローネ
所有奴隷
男 325人
女 184人




