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70話

 ※119話までストック中

 (2022年9月29日16:00時点)

70話


「ご相談をする前に伺いますが、タロウ様は近年の迷宮都市ハリスの歴史と政治的課題をご存知でしたでしょうか?」


 ギラギラとギラついた瞳に戦慄しながらも、ミリスさんの話を聞く。


 近年のハリスの歴史と政治的課題?


 こっちは異世界6日目やぞ?


 知るわけねーだろ。


「……先日、異国から来たばかりなので、まだハリスのことは全然分からないんですよね」


「かしこまりました。少しハリスのことを説明致しますね。ハリスの北部には豊富な水源を誇る『河』があり、この『河』を利用する水運により都市を発達して来た歴史があります」


 河?


 川じゃなくて、河?


 大きな川のことだよね?


「近隣諸国ではこの『河』を『レミング河』と呼び、東西に伸びる河を西に進めば大内海と呼ばれる『レミング海』に辿り着きます」


 あー、なるほどね。


 ハリスには海が無いのに流通が発達するのか?と疑問に思っていたが、河と海を利用して流通が発達していたのか……。


 盲点過ぎるやろ。


「近隣諸国との流通を支えるレミング海のちょうど中心に大きな島があり、『ウィリアムズ王国』と呼ばれる王国があります。ウィリアムズ王国はレミング海の中継地点であり、近隣諸国はみなウィリアムズ王国に商品を積み降ろし、また他国の商品を積み入れて自国へと戻ります」


 ふむふむ。


 なるほどね。


 中継地点で商品をやり取りすれば『わざわざ』遠い相手の国に直接行く必要がなく、輸送費を節約できるってことか。


 いわゆる中継貿易。


 商品を右から左に流すだけで金が手に入る。


 ウィリアムズ王国は中継貿易で相当儲けてそうだな……。


「このウィリアムズ王国とハリス子爵家が15年ほど前から関係が悪化し、ハリスの商品に対して関税を引き上げました」


 ふむふむ。


 ウィリアムズ王国とハリスの仲が悪くなったと。


 なんで?


「このウィリアムズ王国の関税を引き下げることが、現在のハリスの政治的な最重要課題となっております」


 ふむふむ。


 つまりミリス商会もウィリアムズ王国の関税に悩んでいるってことだろ?


 話を聞いたけど、俺には何も出来なくね?


「現在ウィリアムズ王国はウィルソン王七世の嫡子である第一王子の婚約者候補を近隣諸国から募っております」


 ふむふむ。


 ウィリアムズ王国は未来のお妃様を近隣諸国から集めていると。


「ハリス子爵家はウィリアムズ王国との関係改善と関税を引き下げる為に、ハリス子爵様の子女であるマリア様を第一王子の婚約者にさせたいと考えておられます。しかしウィリアムズ王国は大内海の中継貿易で栄える近隣諸国随一の富裕国でもあり、近隣諸国から大挙して婚約者候補が集り競争が激しくなっております。また、15年ほど前からハリス子爵家との関係が悪化しておりますので、ウィリアムズ王国からのマリア様の印象も非常に悪いでしょう」


 ふむふむ。


 ハリス子爵家は子女のマリア様を第一王子の婚約者にさせたいが、家同士の関係も悪いし、マリア様が婚約者になるのは難しいって話か。


 話を聞いたけど、やっぱり俺には何も出来なくね?


 ん?


 んんん?


 おいおいおい。


 まさか……。


「そこでタロウ様にお願いしたいことがあります。先日メアリー様に詳しく見させてもらい大変驚愕を致しましたが、メアリー様の髪をサラサラと艶やかに麗しくさせ、さらに高貴で甘い香りを体全体から漂わせる『シャンプー』や『リンス』などの美容品をマリア様にも贈答出来ないでしょうか?もしマリア様がウィリアムズ王国の第一王子に見初められ婚約者と成られた暁には、ハリス子爵家はもちろんのこと迷宮都市ハリスの商家全体がタロウ様に深く感謝されることでしょう。タロウ様、如何でしょうか?」


「へ、返答は……ユーグレナ商会の幹部と相談してからでも宜しいでしょうか……?」


 日本人のお家芸『その案件は一度持ち帰って、相談してから答えます』でも喰らえ!!


 とにかく『獰猛な肉食獣』から逃げろ!!


 ココは敵地で危険だ!!


 知恵袋のペロシさんもいない!!


 さっさと宿に帰るぞ!!


 というか、そもそも身内以外に商品を卸す時は聖剣クラウスたちの許可が必要だし!!


 なんせ意味不明に戦争に利用されるからな!!


「ええ、もちろん大丈夫ですわ。私は部屋から出ておりますのでクラウス様たちとの相談が終わりましたら、部屋の外にいる奴隷にお伝えください。タロウ様、ハリス子爵家と御三家に連なる全ての者が、タロウ様の『色好い返事』をお待ちしておりますわ」


「か、かしこまりました……」


 『ハリス子爵家の血が流れるワイの話を、いちいち宿に帰ってから相談するとか無いよな?部屋の外で待ったるさかい、さっさと相談を終わらせろよ?もしこの話を断ったら……ん?そういや腹を空かせた野犬が餌を欲しがっとったな』とぶん殴ってきたぞ……。


 に、日本人のお家芸を即座に封じるとは……。


 さすがミリスさんだ……。



タロウ・コバヤシ

※クローネ

約41億クローネ

※ユーグレナ

約100万ユーグレナ


ニホン村

※クローネ

約40億クローネ


ユーグレナ共同体

※魔石ポイント

約850万MP

※通貨供給量

1億ユーグレナ


ユーグレナ軍

※軍事予算

130億クローネ


所有奴隷

男 325人

女 184人

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 過剰な要求で押しきられる同じ展開が、序盤から何度も繰り返されると読んでてストレスばかりたまっていく。
[良い点] 読み応えがある 程よくキャラが立ち、ストーリー展開も違和感がない [気になる点] 主人公が周りの強キャラに押されてばかり、の流れが続くとワンパターンさを感じなくもない 情に絆される判断が多…
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