67話
67話
「ボス、1年だ。1年で戦争の準備を終わらせ、俺たちは迷宮都市へと進軍する」
『異世界のクロスボウ』の試し撃ちを終えた後、俺たちは3階の会議室へと向かった。
「は?1年?1年で戦争を開始するのですか?クラウスさん、いくら何でも早急過ぎるのではないですか?」
何を言ってるんだ?コイツは。
最低でも3年の猶予はあるハズだろ?
「ボス、王族も貴族家も馬鹿ではない。今から1年後には王族も貴族家も『急激に勢力を拡大する』俺たちを危険視して、軍備の準備を始めるだろう」
えーと、つまり……。
1年以内なら言葉通り全く何の準備もしていないどっかの迷宮都市を簡単に陥落できるってこと?
はぁー。
本当に嫌になる。
俺たちが行うことは、自衛戦争ですらない。
単なる侵略戦争。
このままだと必ず聖剣クラウスたちは侵略戦争を行う。
そして侵略戦争にブチ切れた周辺諸国と泥沼の大戦が発生する。
祖国である日本が辿った、破滅への道だ。
何とかして回避せねば……。
でも、どうやって?
分からんなら、軍事のプロに聞くか。
「……何とか戦争を回避することは出来ませんか?」
「それを考えるのはボスの役目だろ。ボスの商品とスキルは必ず戦争を発生させる。なら『勝てる戦をする』のは当然だろ。違うのか?」
そりゃそうだけどさ……。
教えてくれても良いじゃん?
「ち、違いませんが……それでも最大限の努力で戦争を回避しようとするのが、在るべき人の道では?」
平和と繁栄こそが、人類の永遠の願いじゃないか。
そうだろ?
「はぁー。あのな、ボス。とことんボスは勘違いしているよな。ここはボスの国じゃない。ボスの大好きな理想を掲げても、誰もが鼻で嗤うだけだ。ボス、いい加減理解しろ」
さすが異世界。
常識が全く通じない。
そしてすまんな。
まだ異世界5日目なんだ。
それも来たくて来たわけじゃない。
半ば強制的にここに来たんだ。
理解もクソもねーよ。
分が悪いし、話をすり替えるか……。
「……1ヶ月以内に対案を出せば、必ず戦争を回避しますよね?」
さて、釣れるか?
「ボス、それは俺たちの言葉だ。1ヶ月以内に対案を出せないなら必ず戦争を許可しろよ?二言は無かったハズだよな?」
たぶん釣ったな。
「ええ、二言は無いです。もちろんクラウスさんも二言は無いですよね?」
「ああ、もちろんだ。二言は無い。だがボス、対案を出せそうなのか?軍事の素人のボスに対案が出せるとは到底思えないけどな。ハッハッハ!!」
そんなことは薄々と分かってるよ。
俺のことは俺が一番理解してるさ。
でも『言質』は取ったぞ。
ざまぁみろ!!
「……煩いですね。1ヶ月も悩み苦しんだら、何か一つぐらいはアイデアが生まれますよ」
「そしてペロシが素人のアイデアを論破する。ボス、命を賭けて戦う男たちを……男たちが命懸けで築き上げて来た『軍事という存在』を舐めるなよ」
『ガーランド王国の英雄』が俺を睨む。
舐めてねーよ。
舐めてんのは、オメーの方だろうが。
俺も『ガーランド王国の英雄』を睨み返す。
「別に舐めてませんよ。ただこれまでの人生で軍事関係に触れることが無かっただけです。でも、これからはクラウスさんとの関係から私は軍事にも触れますね。そして近隣諸国を圧倒的に凌駕している『先進的な教育』を受けた私は必ず成長します。私を……世界有数の経済大国である『我々』を舐めないで頂きたい」
「……これは失礼をした。ボス、そろそろ良い時間だが、会議を続けるのか?」
チラリと『時計』を見ると、確かに良い時間だ。
「クラウスさん、そろそろ会議を終わりましょうか。みなさん、最後に何かありませんか?」
何も無さそうだな。
「それでは本日の会議を終わります。みなさん、おやすみなさい」
聖剣クラウスたちと別れの挨拶をし、私室へと向かう。
やはり『ガーランド王国の英雄たち』は、大戦の敗北の『傷』が癒えて無いな。
敗北と屈辱は、勝利と栄光でしか『上書き』出来ない。
聖剣クラウスたちが戦争を望むのは、敗戦のトラウマを克服したい部分もあるハズだ。
あの邪悪な笑みは敗北者である賊軍の人生から、勝利者である官軍の人生へと舞い戻れること……。
それを心から喜び、讃える笑みだった。
たとえ世界に呪いと厄災をもたらそうとも……。
タロウ・コバヤシ
※クローネ
約41億クローネ
※ユーグレナ
約100万ユーグレナ
ニホン村
※クローネ
約40億クローネ
ユーグレナ共同体
※魔石ポイント
約850万MP
※通貨供給量
1億ユーグレナ
ユーグレナ軍
※軍事予算
130億クローネ
所有奴隷
男 325人
女 184人




