66話
66話
「タロウおにーちゃん、おいしーです♪」
宿の店主モーリスさんとの話し合いが終わり、ペロシさんの収支報告書が書き終わるまで3階の私室でしばしの癒されタイム。
アンナさんと獣人ちゃんたちに極上のお菓子とジュースで餌付けする。
もちろん俺の『給与』からユーグレナ紙幣をペロシさんに支払って、それらを複製したが……。
やっぱり何かがおかしい……。
ミーナちゃんが嬉しそうに金色の尻尾をフリフリ♪フリフリ♪しているので、優しく頭を撫でてあげる……ごくり。
「タロウにい様、こちらも美味しいです」
「それも美味しいよね。ラティアちゃんは大人の味が好きなんだね」
少し苦味のあるチョコレートクッキーを頬張るラティアちゃんの頭を優しく撫でてあげる。
銀色の尻尾が嬉しそうに可愛らしくフリフリ♪フリフリ♪している……ごくり。
「……タロウにい様、このお飲み物もとっても美味しいです……」
「それも美味しいよね。カティアちゃんは苺味が好きなんだね」
コクコクとゆっくり苺ミルクのペットボトルを飲むカティアちゃん。
頃合いを見計らい頭を優しくゆっくり撫でてあげる。
嬉しそうに銀色の犬耳と尻尾が奥床しくピクピク♪フリフリ♪と動いている……ごくり。
「タロウおにいさん!!これすごくおいしーです!!」
「ケイトちゃんはポテトチップスが好きなんだね。サクサクしてて美味しいよね」
はむはむとポテトチップスを頬張るケイトちゃんの頭を優しく撫でてあげると、嬉しそうに目を瞑ってゴロゴロ♪と可愛らしく唸る……ごくり。
みんな物凄く可愛いくて、モフモフを我慢してる理性がそろそろヤバいんですけど!?
アンナさんもアンナさんで、獣人ちゃんたちの面倒を見ながらもジュースやお菓子を頬張り、尻尾をブフォン!ブフォン!と振っている。
アンナさんはちょっと尻尾を振り過ぎでは……?
そんなこんなで獣人ちゃんたちと癒されタイムを満喫していると、ドアから『コンコンコン』とリズミカルにノックが鳴る。
「それじゃ、ちょっと仕事をしてくるよ。自由に寛いでてね」
「はい。タロウさん、いってらっしゃい」
「「「「いってらっしゃーい」」」」
用意していたリュックサックを持ってからドアを開けると、ペロシさんが待っていた。
「ボス、お待たせしました。会議室へどうぞ」
「かしこまりました」
会議室に入り、下級兵士が購入して来た魔石をディスプレイにポイポイと放り投げる。
今回も魔石ポイント500万だ。
クローネはコピー用紙やハリス子爵家などへの紅茶の葉の定額卸売りで約108億クローネ以上も稼いだが、ペロシさん曰く『宿の拡張もありますので、軍事予算100億クローネを頂きます』とのことで、100億クローネも分捕られて約8億クローネほど個人資産が増えた。
個人資産が億単位で増えたんだが、どー考えてもペロシさんに全資産を把握され、軍事予算に吸い取られて行く……。
身の安全の代金として高いのか安いのか、さっぱり分からん。
「ボス、こちらが本日の取り分である50万ユーグレナです。お納めください」
「ペロシさん、ありがとうございます」
なぜ雇用主である俺がペロシさんに感謝を述べているのか良く分からんが、とりあえず『給与』をペロシさんから頂く。
聖剣クラウスたちも喜んでいるし、まぁ良いけどさ。
よし。
これでまた獣人ちゃんたちに美味しいお菓子とジュースを余裕でいっぱいあげれるぞ!
『給与』を貰った時特有のザワザワとした雰囲気が少しずつ治まって来たので、そろそろ本日の会議を始める。
「クラウスさん、そろそろ本日の会議を始めましょうか。まず、私から議題を提案します」
持って来たリュックサックからガサゴソガサゴソと魔石ポイント約20万を用いて複製した『フルサイズ・コンパウンド・クロスボウ』を取り出す。
「本日ドワーフ族の機械技師に見せたのが、こちらの『クロスボウ』です。私の国は治安が非常に良く、平民が武器の所持をすることは基本的に規制されています。その上で平民が武器を所持できる中で簡単に使え、尚且つ強力な威力を持つのがこちらの『クロスボウ』です。矢はこちらです」
「ふむ。見たことも無い形の『クロスボウ』だな。ボス、性能を把握する為に今から庭で試し撃ちしても良いか?」
「ええ、もちろんです。どうぞクラウスさん、お使いください。夜も深くなりましたし、庭の灯りは私が用意します」
「了解、ボス。マイク、部隊長全員を庭に集めろ。あと試し撃ち用の鎧も用意しておけ」
「ハッ!!」
聖剣クラウスの号令一つで、宿が一気に騒がしくなる。
聖剣クラウスたちに『異世界のクロスボウ』の使い方を教え、仕事場からLEDランプを持ち出して庭へと向かう。
「ボス、とりあえず鎧とこの場所だけ灯りがあれば十分だ」
「クラウスさん、分かりました」
聖剣クラウスたちが集まっている場所と、椅子の上に鎮座し試し撃ちされる憐れな鎧の近くにLEDランプを置く。
鎧との距離は20メートルぐらいだろうか?
ビルさんが『異世界のクロスボウ』の弦を引き、矢をセットする。
そして高品質レーザーポインターのスイッチを押し、憐れな鎧へと狙いを定めた。
「ビル、心臓を狙え」
「ハッ!!」
レーザーポインターが心臓の辺りを指し示すと『ビンッ!!』とクロスボウから音が鳴り、瞬時に『カッ!!』と鎧からも音が鳴る。
その様子を目の当たりにした部隊長全員が響めき、場が騒然となる。
30メートル圏内での射撃だ。
矢は当然の如く、レーザーポインターが狙った場所に寸分の狂いもなく突き刺さっている。
「ビル、使い心地はどうだ?」
「ハッ!!クラウス将軍……驚愕の一言であります……。まさかクロスボウでこれ程までの精密射撃が出来るとは……戦場が一変します」
「だろうな。ボス、戦場でのクロスボウの特徴は知っているのか?」
知るわけねーだろ。
こっちは80年もの平和を誇る日本人やぞ?
「……いえ、私は商人ですから存じてませんね」
「だろうな。ペロシ、説明してやれ」
「ハッ!!本来、クロスボウは精密射撃は出来ません。戦場で精密射撃を行うのは何年も毎日繰り返し弓の練習をした熟練の弓兵にしか行えませんが、戦場では大量のクロスボウを用意して一斉に矢を放つことで熟練に必要な時間と精密性の弱点を補います」
ほへー。
だからクロスボウは大量生産して、大量に放つのか。
この世界でも『数撃ちゃ当たる』ってのは、真理なんだろうな。
「……なるほど。このクロスボウは迷宮でも使えそうですか?」
「ボス、当然だな。モンスターは弱いが大量にいる。コイツが『大量』にあれば迷宮の攻略も戦争も楽になるだろう。ボス、会議室へと向かうぞ。お前らは、コイツの痕跡を残さずに全て片付けろ」
「「「「ハッ!!」」」」
聖剣クラウスの号令一つでテキパキテキパキと部隊長たちが動く。
俺は聖剣クラウス、そして副官3人とペロシさんを率いて3階の会議室へと向かう。
ん?
何だ……?
鳥肌が……。
会議室へと向かう途中、背筋に悪寒が走り『ゾワゾワゾワ!?』と鳥肌が一斉に湧き立つ。
嫌な気配を感じ恐る恐る振り返ると、この世のものとは思えぬほどの邪悪な笑みを5人ともが浮かべていた。
タロウ・コバヤシ
※クローネ
約41億クローネ
※ユーグレナ
約100万ユーグレナ
ニホン村
※クローネ
約40億クローネ
ユーグレナ共同体
※魔石ポイント
約850万MP
※通貨供給量
1億ユーグレナ
ユーグレナ軍
※軍事予算
130億クローネ
所有奴隷
男 325人
女 184人




