65話
65話
「お前さん、ちょっと良いか?」
宿に戻ると夕刻の鐘がなり、夕飯を食べた後は人間族と聖霊族の下級兵士たちが迷宮へと向かった。
迷宮1階層目ですら攻略するのに最短距離で約8時間もかかるらしい。
一般的に倍の16時間も攻略にかかるようだ。
最短距離で攻略するのに、迷宮3階層目で1日がかり。
迷宮30階層目で10日。
49階層目で約16日。
睡眠時間を足せば、もっと時間がかかるだろう。
そして物資の計算を間違え、迷宮で迷えば衰弱死。
迷宮、怖すぎだろ……。
そんな恐ろしい迷宮に潜る下級兵士たちを見送り聖剣クラウスたちと宿の中に入ると、宿の店主であるモーリスさんから声をかけられた。
何やら少し眉間に皺を作り考え込んでいる……。
何かあったのかな?
「ええ、もちろん大丈夫ですよ。ペロシさんも一緒に聞いてもらえますか?」
「了解です、ボス」
ペロシさんとモーリスさんと共に食堂の席に座る。
「モーリスさん、どうかされましたか?何やら考え込んでおられるようですが……」
「ちょっとな、二つほど問題を抱えている」
ふむふむ。
二つの問題の相談っぽいな。
なんだろ?
「どうかされましたか?我々に解決できることなら解決しますので、どうぞお気軽に話してください」
「……そうか。なら話をさせてもらおうか。まず一つ目なんだが、お前さんの護衛奴隷たちにウチが貸し出している性奴隷を抱かせないのか?」
は?
えーと……。
いやいやいや。
そもそも誰が抱いたか分からない女性を軍人たちに抱かせて、性病が蔓延したら怖いんですけど……。
「……え、えーと……。今のところは考えておりませんが……何か問題でもありましたでしょうか?」
「あるだろ。ウチは性奴隷を貸し出して商売をしていた。高い金を払ってまで性奴隷を買った意味が無くなるだろうが」
えーと……。
あぁ、なるほど。
つまり『10トンダンプを購入したけど、全く運搬の仕事がない!!仕事がないなら10トンダンプを買った意味がねーじゃん!!』的な資産の運用利回りが悪くなってる、ってこと?
んで、ウチの軍人たちに抱かせて女性の奴隷という資産の運用利回りで儲けたいと……。
軍人の間で性病が蔓延したら怖いから断りたいんだけど、角が立つしどうすっかな……。
「ボス、少し宜しいでしょうか?」
お、ペロシさんが何か案を出してくれるのかな?
しめしめ。
「ええ、もちろんです。ペロシさんの意見を聞かせてください」
「ボス、まず確認ですが、店主の性奴隷を下級兵士に宛がうことには反対で宜しかったでしょうか?」
ダイレクトに聞くなよ!!
角が立つだろうが!!
もっとオブラートに包めよ!!
完全にイエスかノーかで答えるしか出来なくなっただろうが!!
「……出来れば」
何とか濁す日本人の俺。
「ボス、了解です。店主、問題の原因は我々が宿の部屋を長期間借りていることに原因があり、それにより他の宿泊客がいないことです」
お?
ペロシさんがモーリスさんと交渉するのか。
「そりゃそうだな。だがお前さんたちが金を払ってウチの性奴隷を抱けば問題が簡単に解決する話だろ。ウチはそういう宿だ」
「ええ、店主その通りです。ですが我々のボスはそのことに反対しております。性奴隷を抱かせることになぜ反対しているのかは意味不明ですが、ボスは性癖が歪んでいるのでおそらく下級兵士を虐めて楽しんでいるのでしょう」
ド変態のロリコン野郎が!!
んなわけねーだろ!!
性癖が歪んでいるのは、お前の方だろうが!!
「じゃあ、意味不明な理由でウチが我慢しろってのか?お前さんたちの願いを聞いたら、この有り様だぞ?」
ほら!!
モーリスさんが少し不機嫌になったじゃん!!
「店主、そうではありません。別の解決策を模索するべきです。そうですね……例えば、宿の2号店3号店を出してみては如何でしょうか?」
ん?
んんん?
3号店?
2号店だけじゃなく3号店も?
おいおいおい。
まさか……。
「そんな金があるなら、とっくに2号店も3号店も出してるよ」
「店主、そこは安心してください。たった一人意味不明な理由で反対している我々のボスが資金を全て出します。ですよね?ボス」
「……ええ、もちろんです。モーリスさん、2号店だけじゃなく3号店も4号店も作ってみませんか?もちろんそれ以上も。資金なら宿の全部屋を100年先でも200年先でも先払いで支払います。必要であれば1万年先まで先払いします。それを元手に宿をどんどん作ってみませんか?」
「3号店?4号店?あぁ、なるほどな。お前さんたちが庭に泊めてる護衛奴隷の宿が必要なんだろ?」
「ええ、モーリスさん、その通りです」
「だが、2号店なら未だしも、3号店以降は人手が足らんぞ?」
「モーリスさん、そこは大丈夫です。3号店以降はこちらの女性の奴隷たちが宿の維持をします。もちろん1号店であるここも、こちらの女性の奴隷が維持します。我々が必要なのは雨露を凌げる部屋だけですので、従業員は必要ありませんよ」
「なるほどな。お前さんたちの目的は分かった。3号店でも4号店でも100号店でも作って、ウチの商会の『名義を貸す』よ。ただし、先祖代々の『名義を貸す』んだ。それなりの金は貰うぞ?」
やっぱり『名義貸し』だと分かるよね。
俺たちユーグレナ商会はなるべく『表に出ない』方が良い。
既に市外で大規模な土地権利を購入しているからこそ、市内ではなるべく大人しくすべきだ。
ユーグレナ商会は、ひたすらにひたすらに『隠れ蓑』を探して王族や貴族家の監視から逃れる。
そして満を持しての電撃戦だ。
それがペロシさんが描いた『絵』だろう。
「ええ、もちろんです。資金の管理はこちらのペロシさんがされているので、彼に必要な資金を伝えてください」
「あぁ、分かった。ここまでお前さんたちの願いを聞くんだ。もう一つの問題も解決してもらいたい」
そういや、もう一つ問題があったな。
なんだろ?
「ええ、もちろんです。我々が解決できることなら解決します」
「お前さんのせいでもあるんだが、馬鹿娘が商人になってミリス商会に加盟したいとクソ煩い。女が商人の真似事をしても世間は誰も相手にせんが、ハリス子爵家御用達商会となったミリス商会は別だ。アレでも可愛い馬鹿娘だ。メアリーをミリス商会にコネで加盟できないか?」
「み、ミリスさんに相談してみます……」
完全にメアリーちゃんがミリス商会に取り込まれているよ!!
「おう、頼むぞ。そうだな……馬鹿娘がミリス商会に加盟できたら、3号店以降もウチの名義を貸してやる」
「わ、分かりました……頑張ります……」
こうして俺は意味不明に『私をミリス商会に加盟させてね!!』という異世界クエストを受注した。
マジで、どうしよう……。
タロウ・コバヤシ
※クローネ
約33億4400万クローネ
※ユーグレナ
約77万ユーグレナ
ニホン村
※クローネ
約40億クローネ
ユーグレナ共同体
※魔石ポイント
約750万MP
※通貨供給量
1億ユーグレナ
ユーグレナ軍
※軍事予算
30億2000万クローネ
所有奴隷
男 325人
女 184人




