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63話

 ※後書きに告知があります。


 ※112話までストック中

 (2022年9月24日17:00時点)

63話


「それではタロウ様、ご機嫌よう」


 会議が終わり気分転換に少し休息を取ってから食堂に向かうと、メアリーちゃんとミリスさんが百合の如くキャッキャウフフしていた。


 ……しまった。


 またもやメアリーちゃんがミリスさんに取り込まれている。


 また餌付けをしないと……。


 どうもミリスさんは高級シャンプーなどで艶やかになったメアリーちゃんの髪に興味津々のご様子。


 女性だから特に気になるよね。


 ミリスさんに手櫛で髪を触られているメアリーちゃんがうっとりと頬を染めていて、まるで何処ぞの百合学園の甘い雰囲気を醸し出しているんだが……。


 情報を抜かれるのは仕方がないけど、メアリーちゃん、ミリスさんに完全に取り込まれていないよね?


 メアリーちゃんもミリスさんも食堂に来た俺に気が付いたのか、サッとお互いに離れてから『……ミリスお姉様、またお待ちしております……』とメアリーちゃんが艶やかで甘い声でミリスさんに別れの挨拶を述べる。


 完全に恋に恋する乙女の瞳だ……。


 ……気を取り直して俺とミリスさんは、ハリス子爵家と市外南部の土地権利の購入の契約を交わす。


 地代は年間120億クローネ。


 ハリスの税制上、地代の支払いは毎年6月に納めるらしく、2ヶ月分の20億クローネをミリスさんに渡す。


 つまり現在は4月ということ。


 この地代の中にミリス商会の仲介手数料も含まれている。


 ミリス商会、ボロ儲けじゃん……。


 ミリスさんたちが壁内へと帰った後、俺たちはバロット商会へと向かい23名の獣人と11名のエルフの護衛奴隷を購入した。


 戦闘の基礎訓練はバロット商会が施している。


 大老にお願いして他家の奴隷商会の紹介状を書いてもらい、壁内と壁外の奴隷商会を隈無く巡り獣人とエルフの護衛奴隷と性奴隷を買い漁る。


 『ゴロツキどもの大名行列』が壁内と壁外を巡回するとか近所迷惑も甚だしいが、仕方がない。


 みんなごめんね。


 金だけはある。


 総勢276名の獣人とエルフの護衛奴隷と性奴隷を大人買いした。


 大半は人間族によって『すり潰される』予定だった獣人の護衛奴隷だ。


 財布はペロシさんが管理しているニホン村とユーグレナ軍から支払った。


 ド変態のロリコンだけどペロシさんの管理能力、マジ便利。


 『異様な大名行列』を引き連れ宿に一度戻り、市外南部へ向かう準備をする。


 ペロシさんはミリス商会との昼過ぎの取り引きの為にお留守番してもらう。


 聖剣クラウスたちにも見せたくなかった『ある物』をリュックサックに隠し入れ、アンナさんと獣人ちゃんたち、それとブロリー爺さんとスラム街の子供たちも連れて、ハリス市外南部へと向かう。


 もちろん護衛の聖剣クラウスたちもだ。


 ゾロゾロと獣人族とエルフ族が壁外から市外へと向かう。


 異様な雰囲気だ。


 アンナさんと獣人ちゃんたちが不安そうな顔をしているが『大丈夫だよ』と優しく頭を撫でてあげると、それぞれ耳や尻尾をピクピク♪フリフリ♪させる。


 会議で気疲れしたから、モフモフして癒されたい……。


 そんなこんなで『ニホン』村を作る予定地に辿り着いた。


 予定地を決めたのはマイクさん。


 ここなら市内から十分に離れており、『防衛』が可能とのこと。


「ボス、とりあえずコイツらの野営の準備をするぞ」


「クラウスさん、宜しくお願いします」


 聖剣クラウスたちが人間族と獣人族の下級兵士に指示を出し、テキパキテキパキと簡易のかまどやテントなどを作り始める。


 野営は軍隊のお家芸なんだろうな……。


 人が6人ほどはゆっくり寝れる大きめのテントが一つ出来上がり、そこをブロリー爺さんのテントとした。


 ブロリー爺さんを呼んでテントに入ってもらう。


 そしてテントの周囲を聖剣クラウスと副官たちに護衛する様に伝える。


 今からブロリー爺さんに見せる『モノ』はユーグレナ共同体の『秘中の秘』だ。


「ブロリー爺さん、お疲れさまです。ブロリー爺さんにお願いしたいことがあるんですよ」


「なんじゃ?銀馬車の整備でもすれば良いのかの?ぜひ整備させてくれんかの?」


 ホントこの爺さん、ブレないな……。


「ブロリー爺さん、『いつか』銀馬車を見せますので、それまで我慢してくださいね。話を戻しますが、我々はここに獣人族やエルフ族、そしてドワーフ族の村を作ります。村の名前は私の国の名と同じ『ニホン』です。ブロリー爺さんにお願いしたいことは、『ニホン』村の村長をお願いしたいのです」


「ほう。『聖霊』族の村を作るのか?儂は村長なんかより、銀馬車の整備をしたいんじゃが?」


 『聖霊』族?


 亜人は人間族の蔑称で、自分たちは『聖霊』族と名乗っているのか?


 というか、マジでブレないな、この爺さん。


「ブロリー爺さん、聖霊族とは人間族が言う亜人のことですか?」


「そうじゃぞ?そんなことも知らんのか?儂らは自らを聖霊の子孫と考え、人間族は悪霊の子孫と考えておるぞ?儂らメイナード王国では人間なぞ呼ばん。悪霊や悪霊族と呼ぶ」


 ははは。


 もうお互いにお互いを差別し合ってるんだな。


 人間族と聖霊族は泥沼の殺し合いをして来たんだろう。


 というか、聖霊族という言葉自体に、人間族は悪霊族と見做している。


 言葉自体に、差別意識を内在させている。


 こりゃ、どうしようもねーわ。


「……なるほど。『ニホン』村は聖霊族たちの村になりますね。ブロリー爺さん、『ニホン』村の村長をしてくれませんか?村長をして頂ければ、『必ず』銀馬車をお見せします。もちろん整備もお願いします」


「二言は無いじゃろうな?」


「ええ、もちろんです。二言はありません」


「よし、分かった。儂が村長をするぞ。任せておくのじゃ」


「ブロリー爺さん、ありがとうございます。『必ず』銀馬車をお見せします」


 よし。


 まずは『代理』の聖霊族が決まった。


 これで『ニホン』村の運営が何とかなるだろ……。


「ふひっ。ふひひっ。銀馬車を可愛がれるぞ。銀馬車がどんな声で鳴くのか、今から楽しみじゃな。ふひひっ」


 は?


 いきなり何ブツブツ言ってんだ?


 この爺さん、マジでキモいんですけど……。


 ドワーフ族はマジで頭がおかしい種族だな。


 もしかして村長の人選に失敗したか?


 ま、まぁ、ブロリー爺さんが駄目なら別の聖霊族に任せるか……。


「……ブロリー爺さん、村長を引き受けて頂いたので、我々の秘密を教えます。もちろん他言無用です。これは『命令』です」


「ほう。なんじゃ?何を見せてくれるのかの?」


「ブロリー爺さん、今から言葉を発することを禁じます。これは『命令』です」


 その言葉を伝えた後、俺はリュックサックから魔石を取りだし、『複製スキル』と唱える。


 ブロリー爺さんは口をパクパクしながら『???』とどっかの宇宙の猫のような顔をしている。


 おそらく『複製スキル?なんじゃそれは?』と言いたいのだろうが、『奴隷契約スキル』の効能により魂が主人である俺の『命令』で拘束され、何一つ言葉を発することが出来ないのだろう。


 不思議がるブロリー爺さんを無視しながら、魔石をディスプレイに吸収させる。


 それを見たブロリー爺さんは別に驚きはしない。


 おそらく魔石を用いる強力なスキルを見慣れているからだろう。


 だが、これならどうかな?


 『複製』と唱えると床に魔法陣が現れ、裸のA4コピー用紙1000枚が『顕現』する。


 それを見たブロリー爺さんは目を見開き、驚愕の表情を浮かべながらあんぐりと口を開けている。


「ブロリー爺さん、これが高品質パピルスの秘密です。神の手を持つ職人なんていません。私のスキルで生み出してます」


 口を必死にパクパクさせるブロリー爺さん。


 この調子だと、まだ『命令』は解除できないな。


「ブロリー爺さん、私は高品質パピルスだけではなく他の物質もスキルで生み出せます。食べ物や飲み物、服や道具や武器、そして『銀馬車』もです。ブロリー爺さんが『ニホン』村を真面目に運営しているなら、銀馬車をプレゼントしますよ」


 まだ口を必死にパクパクさせるブロリー爺さん。


 『命令』を解除したら煩そうだ。


「ブロリー爺さん、落ち着いてください。落ち着いたら『命令』を解除しますから」


 俺はブロリー爺さんが落ち着くまで待つ。


 どれぐらいの時間が経ったのだろうか?


 5分だろうか?


 10分だろうか?


 ひたすらブロリー爺さんが落ち着くまで待つ。


 落ち着くのを待っていると、ブロリー爺さんが何かを考え込んでいる。


 どうやら落ち着いて来たようだ。


「ブロリー爺さん、今から言葉を発しても良いです。これは『命令』です」


「……わ、儂は凄いモノを見たのじゃ……。お主のスキルは『ドワーフ殺し』じゃ……。スキルで物を作り出せるじゃと?優れた商品を生産する儂らドワーフ族が無用の長物になるのじゃ……。お主のスキルは儂らドワーフ族の『生き甲斐』を殺すスキルなのじゃ……儂らは……儂らは……」


「ブロリー爺さん、そんなことありませんよ。そう言えばブロリー爺さんは『クロスボウ』をご存知ですか?」


「……もちろん知っとるぞ。超大国メイナード王国が近隣諸国で超大国を維持しとるのは、大量に生産しているクロスボウのお陰じゃからな……。そして儂の仕事の大半はクロスボウの生産じゃった……」


 なるほど。


 クロスボウで人間族と渡り合ってるのがメイナード王国なのか……。


 そして機械技師のブロリー爺さんはクロスボウを生産していたと……。


 『大当たり』を引いたな。


 俺はゴソゴソとリュックサックから『あるモノ』を取り出す。


 取り出したのはクロスボウの規制が始まる前にアフリカでの護身用で購入した高級高品質クロスボウ。


 『フルサイズ・コンパウンド・クロスボウ』だ。


 もちろん違法改造はしていない。


 違法改造しなくても『殺傷能力』があるからだ。


 射程は300メートル以上。


 高品質レーザーポインターを用いた有効射程距離30メートル。


 高品質スコープでの有効射程距離50メートル。


 設計思想は完全に殺傷能力がメインだ。


 平和な日本でクロスボウの規制が始まるのは当然だ。


 こんなモノを持つ方が異様だ。


「ブロリー爺さん、このクロスボウの性能を強化してください」


「…………」


「ブロリー爺さん?」


「…………」


「ブロリー爺さーん?」


「ハッ!?……あ、危うく亡くなった婆さんと三途の川で楽しく散歩するところじゃったぞ……。て、手に取って見ても良いのかの?」


「……ええ、もちろんです。それはブロリー爺さんにプレゼントしますので、ソイツの性能を強化してください」


 ブロリー爺さんに『異世界のクロスボウ』を手渡し、使い方を説明する。


 ブロリー爺さんは熱心に『異世界のクロスボウ』を眺め、自ら弦を引き空撃ちしたりする。


「ブロリー爺さん、ソイツを分解したりして研究してくださいね。もう一丁ソイツが必要なら言ってください。『複製』しますので」


「ぶ、分解しても良いのか!?」


「はいはい。ブロリー爺さん、煩くしないでくださいね。どんどん分解し、研究し、ソイツの技術を盗んでください。そして性能を強化してください。ソイツの性能を強化したなら、『銀馬車』をプレゼントします」


「ま、誠か!?二言は無いじゃろうな!?」


「はいはい。ブロリー爺さん、落ち着いてくださいね。もちろん二言はありませんよ。ただし、ソイツの研究をしながらも『ニホン』村の運営を真面目にしてくださいね」


「も、もちろんじゃ。と、当然じゃろ?」


 オメー、絶対に村長の話を忘れてただろ?


 俺とブロリー爺さんは『ニホン』村の運営について語り合う。


 『異世界のクロスボウ』だけはこの世界には絶対に出したく無かった。


 なぜならこの世界でも応用できる技術だからだ。


 それはいずれ巡り巡って俺の寝首を搔くだろう。


 だが、それでも『向こう』の武器を俺は『こちら』に投下すると決断した。


 アンナさんと獣人ちゃんたち、聖剣クラウスの部隊に奥さんたち、人間族と聖霊族たち。


 そしてこれからユーグレナ共同体に加入する人たち。


 彼らは俺の『部族の一員』だ。


 俺は『部族の一員』を『この世界の悪意』から守らなければならない。


 なぜなら俺は『部族の長』として彼らを守る責任と義務があるからだ。


 たとえこの世界の歴史が大きく変わろうとも……。



タロウ・コバヤシ

※クローネ

約33億4400万クローネ

※ユーグレナ

約77万ユーグレナ


ニホン村

※クローネ

約40億クローネ


ユーグレナ共同体

※魔石ポイント

約750万MP

※通貨供給量

1億ユーグレナ


ユーグレナ軍

※軍事予算

30億2000万クローネ


所有奴隷

男 325人

女 184人


 63話まで読んで頂き、ありがとうございます。次話から6章になります。気軽に感想を頂ければ嬉しいです。


 ※本作を少しでも気に入って頂けましたらページ上部や下部から『ブックマークに追加』や、ページ下部の広告の下にある『☆☆☆☆☆』欄で気軽に星評価をよろしくお願い致します。


 ※読者による評価こそが『作品を継続すべきか?』の判断基準になります。


 作品への評価を、宜しくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 共同体の仲間を信頼するのは分かるが、色々と危うい。 特に軍師であるペロシについて、完全なフリーハンドを、渡している点。 奴隷契約スキルで縛ってあるとは言え、頭が良い奴は、当然のように抜け道…
[気になる点] 前日の夜に亜人をスラムに返すか、間引くか、戦争するかみたいな選択を迫られて、孤独だ…みたいなシリアスなモードだったのに、何も決定したり、解決した訳でもないのに、寝て起きたら、取り敢えず…
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