表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/97

62話

62話


「ボス、俺は賛成だ。これで『一時』は、敵はラーネル王国の王族だけになる。極めて有利な条件だ。かなりの時間を稼げるぞ」


 聖剣クラウスたちを呼び寄せ、俺たちは3階の会議室で『案件』を話し合う。


「クラウスさんは賛成ですか。ペロシさんは如何ですか?」


「ボス、私も賛成です。クラウス将軍が仰ったように、『一時』は時間を稼げるでしょう」


 よしよし。


 ド変態のロリコンペロシさんも賛成か。


 これは『利己的な自衛戦争』をしなくても良さそうだな。


「他の皆さんはどうですか?」


 副官のマイクさん、ピーターさん、ビルさんを見回すも、反対意見は出て来ない。


 よしよし。


「それでは我々ユーグレナ共同体はハリス子爵家と盟約を結びます」


「了解、ボス。お前らも分かったな?」


「「「「はっ!!」」」」


 よしよし。


 『言質』は取ったぞ。


 そろそろ本題でも喰らえ!!


「クラウスさん、ユーグレナ共同体とハリス子爵家が同盟関係になりますから、迷宮を獲得する為の『利己的な自衛戦争』をしなくても良いですよね?」


「は?ボス、何を言ってるんだ?もちろん迷宮を獲得する為に『利他的な侵略戦争』をするぞ?」


 は?


 お前こそ何を言ってんだ?


 『利己的な自衛戦争』をする理由が全く無いだろうが。


「……クラウスさん、『利己的な自衛戦争』の間違いですよ。それとハリス子爵家と同盟関係が続いている限り、ハリス子爵家は敵対行動をせずに中立を保ちます。その意味は、我々はハリスで永続的に迷宮を利用できることです。ですから『利己的な自衛戦争』を行う理由が全く無いですよね?」


 俺の言葉に聖剣クラウスたちが『ヤレヤレ』と溜め息を吐く。


 あのね。


 君らね、これでも俺は雇用主なんだぞ?


「ペロシ、平和ボケのボスの為に『利他的な侵略戦争』を行う理由を述べてやれ」


「ハッ!!ボス、まずはラーネル王国の王族と敵対した場合、ハリス子爵家は我々と王族を天秤に掛けるでしょう。もし、我々が王族に負ける可能性があれば、ハリス子爵家は盟約を破棄し我々と敵対するでしょう」


 な、なるほど……。


 少しでも俺たちが不利だと判断すれば、ハリス子爵家は簡単に俺たちを切り捨てるってことか……。


「次に早くて3年、遅くとも5年以内にハリス子爵家は我々を敵視し、敵対することでしょう。以上です」


 は?


 なんでハリス子爵家と対立すんのよ?


 意味不明だぞ?


「えっと……ペロシさん、なぜハリス子爵家が我々を敵視するのですか?敵視する理由が全くありませんよね?」


 俺の言葉に、またもや聖剣クラウスたちが『ヤレヤレ』と溜め息を吐く。


 あのね。


 君らね、そろそろ怒るよ?


「ボス、我々はハリス市外南部に広大な土地権利を手に入れ、使い所の無い大量のクローネを使って亜人を入植させます。ハリス市内の市民と自由民は大量に増殖する亜人に必ず嫌悪し、ハリス子爵家とハリス市長に何とかして欲しいと陳情するでしょう。その時、ハリス子爵家は我々にこう迫ります。『亜人を間引きしろ』と。我々は別に『亜人を間引き』することに反対しませんが、ボスは『亜人を間引き』できるのですか?」


 その言葉にゾッとする。


 俺は本当に何一つ『亜人差別』を理解していなかった。


 平和ボケと言われて当然だ。


 『本物の差別』を何一つ理解していないのだから。


 獣人やエルフを『間引き』する?


 どうやったらそんな『発想』が生まれて来るんだ?


 理解できない。


 何一つ理解できない。


 俺は『お前たち』を何一つ理解できない。


 水と油だ。


 俺と『お前たち』は、水と油なんだ。


 決して混ざることも交わることも無い。


 何処まで行っても、水と油なんだ。


 そして『お前たち』を理解できない俺が、主体的に安易な行動をすることで『大問題』を発生させる。


 これはそういうことだ。


「ボス、今なら引き返せるぞ?亜人のガキどもをスラム街に戻せ。ハリス市外南部の土地は人間族を入植させろ。それならハリス市内の市民と自由民とは対立しない。むしろ喜ばれるな。そうすれば迷宮獲得への『利他的な侵略戦争』を行う理由が1つ無くなる」


 あの子たちをスラム街に返せと?


 ガリガリに痩せ細っているのに?


 つぶらな瞳で『どうか助けてください』と純粋に願うあの子たちを?


 無理だ。


 俺には出来ない。


 言葉を変えてるだけで、やることは『亜人を間引きしろ』ということだ。


 ははは。


 平和ボケか……。


 これが平和ボケなんだな。


 ようやく理解したよ。


「はぁー。ボス、『出来ない』んだろ?なら、『利他的な侵略戦争』を行う。話し合いは以上だ」


 その言葉と共に『油』たちが会議室から出て行った。


 俺は独りになり静閑な会議室で立ち尽くす。


 そのことが、俺がこの世界で『孤独』であることを物語っていた……。



タロウ・コバヤシ

※クローネ

約53億4400万クローネ

※ユーグレナ

約77万ユーグレナ


ニホン村

※クローネ

約50億クローネ


ユーグレナ共同体

※魔石ポイント

約750万MP

※通貨供給量

1億ユーグレナ


ユーグレナ軍

※軍事予算

32億2000万クローネ


所有奴隷

男 138人

女 95人


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 自分自身が日本人思考が骨身に染み込んでるんだから、差別意識の強い地域に来た以上、回りの人間全てその格差社会が骨身に染み込んでるに決まってるよね。 極端な例で言えば、自分達の身近にゴキブリを…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ