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61話

61話


「タロウ様、ご機嫌よう。市外の土地権利の購入について相談があります。お時間を頂けますか?」


 異世界5日目。


 朝、ユーグレナ礼拝堂でアンナさんたちと獣人族とエルフ族が物凄く熱心にユーグレナ様に祈りを捧げており、そんな獣人族とエルフ族に非常に戸惑いながら俺も一緒にユーグレナ様に祈りを捧げる。


 昨日の会議室での議論により、人間族と獣人族やエルフ族とドワーフ族の朝食は『別々の時間』で食堂で食べることに決定した。


 もちろん最初に朝食を食べるのは『上級階級』の人間族からであり、人間族が朝食を食べ終わってから獣人族とエルフ族とドワーフ族、そして俺の朝食が始まる。


 アンナさんや獣人ちゃんたちはもちろんのこと獣人族もエルフ族の子供たちも、みんなと一緒に朝食を食べようとする俺の行動に心から深く感動したのか、朝食を食べる前に『偉大なるユーグレナ様、私たちにも救いをくださり、ありがとうございます』と一斉にブツブツと熱心に念仏を唱え祈り始めた。


 そして祈りを終えたアンナさんの一声により、みんなが一斉に朝食を食べ始める。


 さすが異世界。


 なぜそうなるのか……。


 ふと気になりドワーフ族のブロリー爺さんを見ると、ブロリー爺さんも獣人族とエルフ族の『食事前の儀式』に面食らって戸惑っている……。


 だよな……。


 そうなるよな……。


 彼らの行動に戸惑いながらも異世界の朝食、単なるパンと目玉焼きと『ナニカの肉』を焼いたモノを食べ終わる。


 朝食の味?


 美味くも不味くもない。


 奥行きも深みも無い単調な味だ。


 朝食を食べ終えた後は、アンナさんたちに餌付けのペットボトルと間食のお菓子を渡して、ペロシさんと会議室で本日の打ち合わせや物資の複製をする。


 もちろんコピー用紙と紅茶の葉も複製する。


 ド変態のロリコンなのに、巨大な軍隊の兵站を担って来たペロシさんの管理能力が完璧過ぎて心から慄く。


 『ペロシさんの管理能力は凄いですね』と褒めると、ペロシさん曰く『誰でも出来ますよ』とのこと。


 できるわけねーだろ。


 そうこうしている内に、ミリス商会が昼前の取り引きの為に今日も大量の馬車と共にやってきた。


「ミリスさん、カレンちゃん、おはようございます。ええ、もちろん大丈夫ですよ。食堂に向かいましょう。ペロシさん、後はお願いします」


「ボス、了解です」


 後のことはペロシさんに全てを任せ、ミリスさんと一緒に食堂へと向かう。


 食堂に入ると『ミリスお姉様!!おはようございます!!』とメアリーちゃんがミリスさんに元気に挨拶をする。


 昨日のことがあり俺はずっと避けられ、ガン無視されてるのに……。


「タロウ様、まずはこちらの『ハリス子爵家御用達商会の認可状』をお渡しします。ユーグレナ商会が貴族家や他家と何かしら問題が発生した時、こちらの認可状を相手にお見せください。王族以外でしたら必ず引き下がります」


 へー。


 王族以外は引き下がるのか。


 ハリス子爵家って王国内でも相当な権力を持ってそうだな。


 後で認可状を複製しまくって、ペロシさんに渡しとこ。


「ミリスさん、ありがとうございます。もし王族と問題が発生した時はどうすれば良いのですか?」


「タロウ様。もし王族と問題が発生した時は自力救済となります。言い換えれば、ハリス子爵家はユーグレナ商会と王族との問題に関しては、どちらにも肩入れせずに完全な中立を貫きます。これは遥か昔にハリス子爵領がハリス共和国と名乗っていた時に、ラーネル王国との同盟関係を築いていた時からの盟約で取り決められております」


 ふむふむ。


 王族と喧嘩したら、自分でケツを拭けってことか。


 んで、ハリス子爵家は王族だろうが肩入れしないと。


 すげーな、ハリス子爵家。


 王族だろうと肩入れしないのか。


 んで、ミリスさんの話だとハリス子爵家は昔は共和国のトップ、たぶん大統領か何かの末裔で、ハリス共和国はラーネル王国に平和的に併合されたってところか。


「……なるほど。他国の王族や貴族家や商家と問題となった時はどうなりますか?」


「もちろんハリス子爵家が全て対応致しますわ。ハリス子爵家が対応しても相手が引き下がらない時は……仕方がありません。その時は戦争になります」


 ヒエッ!?


 『ワイがケツ持っとる商会に喧嘩売るとか、お前らワイを舐めとんのか?ええぞ、戦争や。お前ら全員、晒し首にして野犬の餌にしたるわ』ってことだろ!?


 おいおいおい。


 ハリス子爵家御用達商会って、実は凄まじい権力なんじゃないのか……。


 よし。


 ハリス子爵家に媚を売っとこ。


 むしろハリス子爵家に巨大な権力を持って貰って、ユーグレナ商会を守って貰うぞ!!


「……な、なるほど。その時はハリス子爵家を頼らせてもらいます」


「ええ、もちろんですわ。ハリス子爵家は約300年もの長き歴史の中で、国内はおろか他国からも侵略されたことがありませんから、ご安心ください」


 さすが俺。


 迷宮都市ハリスを選んで正解だったな!!


 ガハハハハ!!


「ええ、安心しました。ミリスさんには感謝しかありません」


「いえいえ。私は『当然のこと』をしたまでですわ。タロウ様、土地権利の購入の相談ですが、まず市外の南部の土地でしたら土地権利を本日中にも購入できます。ですが、ハリス子爵家から特約条項の提示がありました。こちらをご覧ください」


 ミリスさんが契約書をスッと差し出し、ある一点を指し示す。


「ハリス子爵家から市外の南部の広大な土地権利を売る代わりにハリス子爵領、ハリス子爵家、並びに御三家と敵対し対立しないことを互いに盟約することを提示しております。この盟約はハリス子爵家が盟約の破棄を宣言し文書で提示しない限り、永続的に盟約が果たされます」


 なるほどね。


 俺の持つ商品の技術力と文化力から、俺たちがハリス子爵家にとって必ず脅威的な存在になると認識し、今の内に友好的な同盟関係を結びたいのか。


 つまり『在りもしない』俺の国からの侵略を恐れているのだろう。


 盟約が結ばれている限り、互いに共存共栄しましょうよ、と。


 ただし、この盟約はハリス子爵家『だけ』からしか、盟約の破棄が出来ない。


 ハリス子爵家も契約に毒を盛り込んで来たな。


 つまり、俺の持つ商品の技術力や文化力を奪えるだけ奪ったなら、後は用無しで切り捨てるってことだろ?


 技術力と文化力を奪うのに何年かかると思ってんだ?


 『向こう』と『こっち』では技術力と文化力の差は、最低でも『1000年』以上の開きはあるぞ?


 つまり、俺が死ぬまでハリス子爵家との盟約は果たされる。


 これはチャンスだ。


 俺が死んだ後?


 知らんがな。


 俺の子孫たちが頑張れば良いだけの話だ。


 ハリス子爵家に負けないだけの『現代教育』を必ず施す。


 だから頑張れよ。


「……ミリスさん、非常に魅力的な提案ですが、一度ユーグレナ商会の幹部たちと相談しても宜しいでしょうか?」


 日本人のお家芸『その案件は一度持ち帰って、相談してからお答えします』でも喰らえ!!


「ええ、もちろんですわ。こちらでお待ちしております」


 ふっ。


 勝ったな。


 何に勝ったか分からんけど。


 俺は聖剣クラウスたちを呼んで、会議室へと向かう。


 よしよし。


 これで『利己的な自衛戦争』をしなくても良さそうだな。



タロウ・コバヤシ

※クローネ

約53億4400万クローネ

※ユーグレナ

約77万ユーグレナ


ニホン村

※クローネ

約50億クローネ


ユーグレナ共同体

※魔石ポイント

約750万MP

※通貨供給量

1億ユーグレナ


ユーグレナ軍

※軍事予算

32億2000万クローネ


所有奴隷

男 138人

女 95人


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