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56話

56話


「お前さん、それは何だ」


 なぜか俺の迷宮入りが決定した後、俺はどうしても作りたかった物があったので排水路に近い宿の庭の一角を占有する。


 約1万ユーグレナをペロシさんに支払い用意したのは、複製したカーテン式パーティションとスノコに木製の棚、そして折り畳み式巨大バスタブ。


 そう。


 俺は露天風呂が作りたかった。


 今までお湯にタオルを浸けて体を拭っていたが、もう我慢の限界だ。


 風呂は日本人の魂なんだよ。


 今までは人の目を気にして自重していたが、宿はユーグレナ共同体が乗っ取った。


 ならば自重しても仕方がない。


 文明人として、やるべきことをやるぞ。


「モーリスさん、これはお風呂ですね」


「風呂?壁内の貴族家や有力商家がお湯の中に入ると聞いたことがあるが、これがそうなのか?」


 ふーん。


 壁内でも風呂の文化があるんだ。


 水源が豊富なハリスならではなのかもな。


「たぶん近いと思いますよ」


「ふーん。俺たち家族も風呂を使わせてくれるのか?」


 ん?


 店主も興味津々なのか?


 『家主』だし、お世話になってるから別に良いけど。


「ええ、もちろんモーリスさんには大変お世話になってますので気軽に使ってください。何でしたらもう一つ風呂のスペースを作りますので、モーリスさんのご家族専用の風呂場として使ってください」


 餌付けの一環でメアリーちゃんの為に作ってあげるよ。


 どうせミリス商会にはメアリーちゃん経由で情報が抜かれるだろうし。


「いいのか?」


「もちろんですよ。モーリスさんには大変お世話になってますから、それぐらいはさせてください。あ、お湯の燃料代はこちらが受け持ちます。ペロシさんに請求しておいてください」


 クローネを貯め込むのも良くないし、クローネで買える物は大盤振る舞いだ。


「それは助かるな」


「では、モーリスさんの風呂場を用意をしますので、出来上がったら声をかけます」


「了解。俺は夕飯の下拵えで厨房にいるから、出来上がったら声をかけてくれ」


 宿の店主としばしの別れの挨拶をした後、再度ペロシさんに約1万ユーグレナを支払い風呂場セットを複製する。


 宿の奴隷にお願いして風呂場セットを運んでいると、今度は聖剣クラウスも目敏く風呂場を発見した。


「ボス、まさかこれは風呂か?」


「クラウスさん、そうですよ。野外用の風呂場ですね」


「ふむ。ボス、この風呂場は何ユーグレナで作れる?」


 お?


 聖剣クラウスも風呂に興味津々か。


 清潔にすることは良いことだ。


 疫病とか怖いし。


「約1万ユーグレナですね」


「なるほど。ボス、ユーグレナを前借りできるか?俺と副官とペロシの5個と、部隊長用に24個。計29万ユーグレナを前借りさせてくれ」


 前借りとかウケるんですけど。


 まぁ、俺の身の安全を守ってくれている聖剣クラウスたちには贅沢な暮らしをさせると約束してるし、その願いは必ず叶えるけど。


「前借りというか、ペロシさんにお願いしてユーグレナ共同体の財布から支払えるか聞いてみますね。風呂場はユーグレナ共同体が受け持つことにしましょう」


「それは助かるな。ボス、ペロシには俺の名前を使え。必ず従うハズだ」


「クラウスさん、了解です」


 ということで、ペロシさんに聖剣クラウスの名前を使って風呂場の話をすると、聖剣クラウスたち29人の個室の風呂場29個と、さらには女性奴隷40人と下級兵士用、そして獣人とエルフの共同風呂場をそれぞれ作ることになった。


 ユーグレナ共同体から約50万ユーグレナを使用したが、俺とモーリスさんの風呂場は俺の財布から支払った。


 俺とモーリスさんの分の風呂場の経費をペロシさんに請求したが、ペロシさん曰く『ボスは金持ちなんですからケチケチしないでくださいよ』とのこと。


 解せぬ……。


 風呂の用意をする仕事は、元気になってからだが未成年の獣人とエルフの仕事となった。


 もちろん僅かながらの賃金というか、お小遣いを渡すことに決定。


 子供の人権無視の児童労働だけど、仕方がない。


 亜人差別が激しいからこそ、未成年だろうと獣人やエルフがタダ飯を食ってると共同体の内部で軋轢が発生する。


 『見て見ぬフリ』をするしかないんだ。

 

 そして風呂場が出来たことにより、ユーグレナ販売店の売買がスタートした。


 販売店の店員は部隊長の『奥さん』たちが交代で行う。


 ユーグレナ販売店の商品は高級品で取り揃えているタオルやバスタオル、シャンプーやリンスなどなど風呂場で使う商品だ。


 もちろんペットボトルやお菓子なども取り揃えている。


 聖剣クラウスたちはもちろんのこと、『奥さん』たちも驚愕の表情をしている。


 特に『奥さん』たちは高級シャンプーなどの匂いが気に入ったみたいだ。


 女性だしね。


 そうだ。


 餌付けの為にメアリーちゃんにシャンプーやリンスなどをプレゼントしよう。


 より一層メアリーちゃんが可愛くなるし、女性を口説くならまず気軽なプレゼントからだよね。


 販売店の在庫の管理は全てペロシさんが行い、ペロシさんから俺に『○○の商品を○個、複製するように』と文書でオーダーが来る。


 オーダーというか、どー考えても『命令』なんですけど……。

 

 宿の店主にお願いして、数日は宿の奴隷たちが風呂の用意をしてくれる。


 ロックさんとこの獣人とエルフ、みんなガリガリだし。


 風呂の用意が出来る間、やることも無いしアンナさんたちと話でもしようと私室へと向かったが……。


 誰もいない。


 アンナさんとミーナちゃん、それと獣人3人は何処に行った?


 未成年の獣人やエルフの子供たちがいる部屋にでもいるのかな?


 そう思い、3階の2人部屋を隈無く探してみたが……。


 誰もいない。


 いったいみんな何処にいるんだ……?


 井戸で体を洗った後は宿の中に入れたハズなのに……。


 みんなまだやることも無いし、餌付けのペットボトルとお菓子を渡して休息させてたんだけどな……。


 ん?


 んんん?


 え?


 おいおいおい。


 まさか……。


 俺は思い当たる場所へと向かう。


 そう。


 2階の奥の8人部屋にあるユーグレナ礼拝堂だ。


 そこには獣人とエルフたちがユーグレナ様の神像の前で跪き、熱心に『偉大なるユーグレナ様、私たちにも救いをくださり、ありがとうございます』とブツブツと念仏を熱心に唱え、祈りを捧げていた。


 さすが異世界。


 なんでそうなる……。


 えっと、声をかけても良いのか?


 いや、でも熱心に祈ってるし信仰の邪魔をしちゃ駄目だよな?


 俺は戸惑いながらソッとユーグレナ礼拝堂から離れる。


 うん。


 俺は何も見なかった。


 仕方ないし、土産物を持ってドワーフ族のブロリー爺さんとでも話すか……。



タロウ・コバヤシ

※クローネ

約103億4400万クローネ

※ユーグレナ

約27万ユーグレナ


ユーグレナ共同体

※魔石ポイント

約450万MP

※通貨供給量

1億ユーグレナ


ユーグレナ軍

※軍事予算

32億2000万クローネ


所有奴隷

男 138人

女 95人



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