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53話

 ※ストックは105話までありますが、本日から1日1投稿になります。気が向いたら複数投稿します。

53話


「タロウ様、ご機嫌よう。紅茶の葉のことでお話がございますので、少しお時間を頂けますでしょうか?」


 宿に戻り、部隊長2人にメリルさんとキャシーさんを紹介する。


 部隊長2人はデヘデヘと鼻の下を伸ばし、女性2人は少し困惑していたが後はよしなにしてくれ。


 ついでにペロシさんに伝えて会議室で魔石ポイント205万を使い100枚セット1000個を複製する。


 間もなくカレンちゃんが来るだろうし。


 獣人とエルフの子供たちには、アンナさんとミーナちゃん、それとバロット商会で新しく購入した獣人3人に食事や身の回りの世話をさせる。


 特にスラム街特有のすえた臭いがキツいから、井戸で丹念に体を洗うように指示した。


 ドワーフ族の爺さんは『銀馬車』を見て発狂するぐらい煩く騒ぎ喚き散らかすから、とりあえず1階の2人部屋に入って大人しくしてろと『命令』した。


 アイツ、マジで頭おかしい……。


 既にモーリスさんの宿は俺たちユーグレナ共同体が全て乗っ取った。


 3階は俺と聖剣クラウス、副官のマイクさんピーターさんビルさん、そしてペロシさんの計6人が広々と使う。


 聖剣クラウスたち5人は4人部屋を2部屋づつ占領しやがった。


 もちろん私室と仕事部屋の為なんだけどね。


 逆に2人部屋が空きまくるから、そこに成人前の獣人やエルフの子供たちを住まわせることに決定。


 2階は奥の8人部屋をユーグレナ様の神像を置いて礼拝堂にした。


 ユーグレナ共同体のシンボルだし。


 手前の両サイドの6人部屋は身内販売店や冒険者ギルドに使用。


 残りの部屋は部隊長24人が好きに使う。


 1階も部隊長たちの為に解放する。


 本日購入した女性の奴隷40人たちは1階2階の空き部屋に住まわせる。


 聖剣クラウスの介抱をする傍ら『奥さん』であるマリーさんの指揮の下、メイド見習いになる予定。


 つまり俺と聖剣クラウスたちのメイドだ。


 このメイドたちは軍人の身の回りの世話、つまり掃除や洗濯もする。


 ふと疑問に思って俺はペロシさんに『下級兵士は何処に住むのですか?』と聞いたら、当たり前の如く宿の庭に住まわせると決めていた。


 軍人の階級制度も恐ろしいぜ……。


 まぁ、聖剣クラウスたち29人は人生を楽しめるだけの豊かな暮らしをさせると、俺は奴隷契約で約束したしな。


 他は知らん。


 バタバタと部屋割りを決めている内に、ミリスさんとカレンちゃんが大量の馬車と共にやってきた。


「ミリスさん、カレンちゃん、こんにちは。ええ、もちろん大丈夫ですよ。ペロシさん、すみませんが、カレンちゃんと高品質パピルスと魔石鑑定鍋の取り引きの手続きをお願いしても良いですか?」


「ボス、了解です。ペロシと申します。カレン嬢、宜しくお願いします」


「ペロシ様、こちらこそ宜しくお願いしますわ」


 あ、ペロシさんが嬉しそうにめちゃめちゃ鼻の下を伸ばしてる。


 やはりロリコンなのか……。


 俺はミリスさんを食堂まで案内すると、メアリーちゃんがアワアワし始めた。


 そりゃハリスで一番有名な女性が来たら、アワアワするよな。


 とりあえずメアリーちゃんを無視して、俺とミリスさんは席に座る。


「それでミリスさん、お話とは?」


「タロウ様、紅茶の葉の卸値のことでご相談があります」


 卸値の話?


 まさか昨日の今日で紅茶の葉の卸値が決まったのか?


 いくら何でも早くないか?


「紅茶の葉の卸値の相談ですか?」


「はい。タロウ様、紅茶の葉の卸値を決めることが出来ません」


 ん?


 逆に卸値が決まらないの?


「えっと、紅茶の葉の卸値が決まらないのですか?」


「はい。昨夜、紅茶を飲ませてもらいました。驚愕の一言でこざいます。香り高く高貴な味わい、今まで私たちが飲んで来た物を遥かに上回る美味しさでこざいました」


 カレンちゃんの反応を見る限り、そうだろうね。


「ミリスさんにも気に入って頂けて良かったです」


「はい、大変気に入りました。出来れば毎日飲みたいほどです。ですが、紅茶を飲んで分かりましたが、これは高品質パピルス以上に近隣諸国を騒がせる商品だと判断致しました」


 ふむ。


 聖剣クラウスたちと相談した通りの話だな。


 でも卸値が決まらないのは、なんで?


「おそらく近隣諸国を騒がせるでしょうね」


「はい。必ず近隣諸国を騒がせるでしょう。そして紅茶の葉は時間と共に必ず高値に吊り上がって行きます」


 あぁ、なるほどな。


 小売り価格が高値にどんどん吊り上がって行くから、それに釣られて卸値もどんどん吊り上がって行く。


 だから卸値を決めても無意味って話か。


「なるほど。ミリスさんの言いたいことが分かりました。でもミリスさんですから、もう解決策を考えてるんですよね?その解決策の相談に来たと」


「タロウ様、その通りでございます。値段が吊り上げるのなら、紅茶の葉は『競り売り』にしようかと考えております」


 おいおいおい。


 この姉ちゃんは本当に強欲だな。


 とことんまで紅茶の葉を高値に吊り上げるつもりだぞ……。


「……な、なるほど。『競り売り』ですか。オークションのような形にして、一番高値を呈示した人に紅茶の葉を販売する形ですよね?ということは、ユーグレナ商会とミリス商会の『競り売り』での分配比率の相談に来られたということですか」


「タロウ様、その通りでございます。『競り売り』の販売価格の50%をユーグレナ商会へ。残り50%をミリス商会に頂けないでしょうか?もちろん50%もの利益を頂きますので、貴族家や商家との複雑な利権関係を私どもが整理し、そして紅茶の葉が最高値で『競り売り』されるように最大限の努力を致します」


 ふむ。


 なるほどな。


 俺はミリス商会に独占取引で紅茶の葉を卸せば良いだけ。


 後のクソ面倒くさいことはミリス商会が全部引き受けるから、50%の仲介手数料をくれ、って話か。


 『競り売り』にするならユーグレナ商会の名義で商業ギルドの『オークション』を利用すれば良いだけで、より利益も出せる。


 でも必ず強欲な貴族家や商家が商機と利権を求めてやって来る。


 ミリス商会が主催する『競り売り』にすれば『ワイが貴族家や商家のクソガキどもをボコボコにぶん殴ったるさかい、お前から喜んで50%の仲介手数料を差し出せや』ってことか。


 ミリスさん、マジで怖いんですけど……。


 まぁ、ミリス商会は実際には50%から諸々の経費がかかるだろうし、30%前後が取り分になるんだろうけど。


「……分かりました。50%ずつで大丈夫ですよ」


「タロウ様、ありがとうございます。ミリス商会は『競り売り』が毎回最高値を更新する様に努力することをお約束致します。その上でもう一つご相談があります。タロウ様、ハリス子爵家に定額で紅茶の葉を卸せないでしょうか?」


 ん?


 ハリス子爵家に紅茶の葉を定額で売れと?


 あんまり貴族家と関わりたくないんですけど……。


 というか、ハリス子爵家も『競り売り』で最高値で紅茶の葉を買えば良いだけでは?


 それこそ文句を言って来たら、ミリスさんが豪腕でボコボコに殴れば良いだけじゃん。


 まぁ、ミリスさんのことだから何か考えがあるんだろうし、話だけでも聞いてみようか。


「……ハリス子爵家にですか?理由を伺っても宜しいですか?」


「もちろんです、タロウ様。まず、本日の昼に私ミリスはハリス子爵家に訪れ、紅茶を紹介してきました。ハリス子爵様も奥様も嫡子様も子息様も子女様も紅茶に対して大変驚愕し、また香り高く高貴な味わいに深く感銘を受けておりました」


 え?


 ミリスさん、ハリス子爵家に訪れたの?


 貴族家に訪れることが出来るとか、御三家ってそこまで権力があるのか?


「紅茶を大変気に入られたハリス子爵様から、もし優先的に紅茶の葉を定額で購入できるのなら御三家にしか与えていない『ハリス子爵家御用達の認可状』をミリス商会にも許可すると申し出られました」


 ん?


 ハリス子爵家御用達?


 ミリス商会がハリス子爵家の御用達になりたい、って話?


 俺たちユーグレナ商会と、全く関係なくね?


「タロウ様、これはチャンスでございます。もしミリス商会が『ハリス子爵家御用達』になれば、ユーグレナ商会もまたミリス商会の下部として『ハリス子爵家御用達』に認可できますので、他の貴族家や都市外の商家からの圧力をハリス子爵家が撥ね除けてくださいます」


 ん?


 ウチもハリス子爵家の御用達になるの?


 えーと、つまり……『ワイらハリス子爵家がお前のケツモチになったるさかい、お前から尻尾を振って紅茶の葉を格安で卸さんかい!!』って話?


 逆に骨の髄までしゃぶられない?


 大丈夫なの?


「……な、なるほど。その、私はハリス子爵家の内情を知らないのですが……御用達になって大丈夫なのですか?余り貴族家とは関わりたくないのですが……」


「タロウ様、ご安心ください。御三家とはハリス子爵家の庶子分家でもあり、私ミリスもハリス子爵家の血が入っております」


 ん?


 庶子分家?


 何それ?


 ってか、ミリスさん貴族家の血が入ってるの!?


 ということはカレンちゃんも!?


 気軽に『ちゃん』付けしてる俺の首、不敬罪とかで物理的に飛ばない!?


 大丈夫なの!?


「み、ミリスさん、庶子分家とは何でしょうか?」


「商家の娘の人生の一つには、貴族家の愛妾があります。ハリス子爵家の愛妾の子息子女を御三家に下ろし、ハリス子爵家と御三家は血の結束を結びながら迷宮都市ハリスを運営してきました」


 俺の首、大丈夫そうなのかな……?


 えーと、つまり庶子同士で血の繋がりを保って迷宮都市ハリスを支配してきた、って話だよな。


 んで、ミリスさんもハリス子爵家と少なからず血の繋がりがあるから、ハリス子爵家も無茶はしないと。


 なるほどね。


 つまり元々血の繋がりがあるミリス商会を御用達にしたい訳じゃなく、ユーグレナ商会を新たに御用達にしたい、って話か。


 でもユーグレナ商会とは血の繋がりが全く無いから、ミリスさんを上に立てて俺を下に立てると。


 ふーむ。


 どうすべきか……。


 そう言えば、ハリス子爵に卸す理由の話は『まず』と言ってたな。


 ということは他の理由もあるな。


「……ミリスさん、大変魅力的な提案ですが、他にもハリス子爵家に優先的に卸すべき理由がありますか?」


「タロウ様、もちろんでございます。ハリス子爵家に優先的に紅茶の葉を定額で卸した場合、ハリス子爵家は近隣諸国の様々な貴族家を呼び寄せて紅茶を自慢するでしょう。噂を聞き付けた王族も紅茶を飲みに来られるでしょうね。そして紅茶を飲まれた王族や貴族家たちは、もはや貧相なハーブの香り湯やハーブの香り水に満足出来なくなることでしょう。つまり、紅茶の葉を持たざる者は貴族家に非ず、となるでしょうね」


 おいおいおい。


 そっちが本命だろ。


 ホントこの姉ちゃんは強欲過ぎるな……。


 ハリス子爵家に優先的に紅茶の葉を卸す代わりに、紅茶を近隣諸国の王族や貴族家たちに宣伝させるって話だろ?


 宣伝費の為に紅茶の葉を優先的にハリス子爵家に卸してくれと。


 そしておそらくは紅茶の葉の『供給量』を絞りながら『希少価値』をコントロールし、『競り売り』で高値更新をどんどん狙って行く話なんだろうな。


 優先的に『格安』の定額で購入できる『本家』のハリス子爵家だけは安泰。


 他の王族と貴族家はガッツリと貯め込んでいる財産を『競り売り』で毟り取られる。


 この姉ちゃん、ホント強欲だな……。


 ふーむ。


 魅力的な話だけど俺一人では、ちょっと貴族家との話は決められないな。


 聖剣クラウスたちと相談するか……。


「ミリスさん、少しだけお時間を頂けますか?ユーグレナ商会の幹部と相談します」


 日本人のお家芸『その案件は一度持ち帰って、相談してからお答えします』でも喰らえ!!


「タロウ様、もちろん大丈夫でございます。こちらでお待ちしておりますわ」


 ふっ、勝ったな。


 何に勝ったか分からんけど。


「ミリスさん、ありがとうございます」


 俺は聖剣クラウスたちを呼んで、3階の会議室へと向かった。


 さて、聖剣クラウスたちの判断はどうなるんだろうな?



タロウ・コバヤシ

※クローネ

約52億800万クローネ

※ユーグレナ

約29万ユーグレナ


ユーグレナ共同体

※魔石ポイント

約500万MP

※通貨供給量

1億ユーグレナ


ユーグレナ軍

※軍事予算

32億2000万クローネ


所有奴隷

男 138人

女 95人



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