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52話

52話


「全員買い取ります。何クローネですか」


 『亜人を見たいのなら着いて来い』とロックさんのその言葉に従い連れて来られた場所は、垣根で囲まれた大きな倉庫。


 俺は奴隷制と差別、そして貧困を全く理解していなかった。


 俺が見て来た奴隷たちは、奴隷の中では裕福な部類の奴隷たちだった。


 獣人差別があろうとも、アンナさんやミーナちゃんですら裕福な部類の奴隷だった。


 富裕層の変態向けの奴隷だ。


 壁内の奴隷商会は『出来るだけ高く売る』為に奴隷の健康管理をし、肌の艶やスタイル維持なども徹底的に管理する。


 だから飢える心配だけは無い。


 だが、ここは違う。


 ガリガリに痩せ衰え、いつ死ぬかも分からない状態だ。


 死ぬ前に人間族に買われたら運が良い方。


 死んだら死んだで別に良い。


 『ゴミ拾いのロック』がまた拾ってくる。


 代わりは沢山いる。


 なぜならここは貧困が蔓延する『スラム街』の最終処分場だから。


 『スラム街』と言う名の『人間牧場』の最終処分場だから。


 迷宮都市ハリスの闇こそが『スラム街』だ。


 この利権を持つのは当然のことながら土地権利を持つハリス子爵家。


 『スラム街』の住民はハリスの富を支える迷宮に潜る冒険者たちだった。


 冒険者の亜人奴隷から生まれた幼い獣人や幼いエルフ、その全員がガリガリに痩せ衰えている。


 そしてつぶらな瞳で救いの目を俺に向けて来る。


 『どうか私を買ってください』と。


 『どうか私にご飯をください』と。


 『どうか私を助けてください』と。


 彼らを助けたいとか、そんな崇高な理念なんかじゃない。


 ここで見捨てたら俺の心が本当に潰れる。


 俺はそんなに強くないんだ。


 ガリガリに痩せ衰えつぶらな瞳で俺を見てくる彼らを見て、ストレスから俺は胃液を吐いた。


 ゲーゲーと吐いたよ。


 こんなの現代人に耐えられる訳がない。


「数を数えるのも面倒くさい。全部で1000万クローネで良い」


「分かりました……こちら1000万クローネになります」


 1人1人と奴隷契約をして行く。


 ペロシさんが人数を確認し、獣人男性17名、獣人女性14名、エルフ男性11名、エルフ女性7名、計49名を引き取る。


 上は14歳、下は6歳だ。


「ロックさん、今後、少しでも売れ残った亜人は全て買い取ります。死なせる前に私に連絡をください」


「そりゃ別に構わんが、良いのか?」


「はい、大丈夫です。私は『銀馬車の紙商人』です。金だけは持ってますので」


「ふーん。富裕層は本当に変なヤツが多いな。ま、俺の商売を助けてくれるんだから文句は言わんよ。確かモーリスさんとこの宿に泊まってたよな?」


「ええ、そうです。ではそろそろお暇します。ロックさん、本日はありがとうございました」


「おう。こっちこそ儲かった。またな」


 ロックさんと別れて宿へと向かう。


 獣人とエルフの子供たちを引き連れた大名行列だ。


 少し恥ずかしい。


「ボス、コイツらどうすんだ?」


 帰りの道中に聖剣クラウスが当たり前の話を聞いて来た。


 もちろん無計画だ。


 無計画に『大人買い』したけど、後悔は無い。


「とりあえずは衣食住を整えます」


「ボス、聞きたいのはそこじゃない。コイツらに何をさせるんだ?タダ飯を食わせるだけか?」


「……元々は数人エルフを購入して農業や畜産の研究をしようと考えてました。でも見たところ真面な教育をされてませんから、まずは教育から行います。もちろん労働の下働きはさせます。いつも荷物運びは宿の奴隷を借りてましたが、彼らにさせます」


「ふむ。ボス、迷宮に潜らせないのか?」


「迷宮ですか?別に構いませんけど、編成に獣人やエルフを入れてませんでしたよね?」


「ボス、腹を割って話すぞ。ボスの性奴隷は獣人だ。まるで家族の様に扱っている。だから俺たちは俺たちなりに気を遣って迷宮の編成に亜人を外した。軍隊で最も使い潰されるのは亜人だからな」


 ん?


 あー、なるほどね。


 俺は『獣人スキー』『エルフスキー』の変態紳士と聖剣クラウスたちから思われてたのか……。


 クソウケるんだけど。


「クラウスさん。私の身の安全を守ってくださるなら、自由に権力を行使してください。あ、ただ公平公正な給与にすることと、幼い子供はハブいてくださいね」


「了解、ボス。お前ら、話は聞いていたな?編成のやり直しだ」


「「「はっ!!」」」


 お互いの齟齬から二度手間になったみたいだ。


 けれど、これで獣人たちもエルフたちもユーグレナ共同体で仕事を得れる。


 仕事があれば飯を食える。


 頑張れば豊かな生活もできる。


 機会は与えた。


 後は人それぞれが頑張れば良いだけだ。


 俺は奴隷制を利用する罪悪感を消し去る為に『見て見ぬフリ』をする。



タロウ・コバヤシ

※クローネ

約52億800万クローネ

※ユーグレナ

約29万ユーグレナ


ユーグレナ共同体

※魔石ポイント

約700万MP

※通貨供給量

1億ユーグレナ


ユーグレナ軍

※軍事予算

32億2000万クローネ


所有奴隷

男 138人

女 95人


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― 新着の感想 ―
[良い点]  >ガリガリに痩せ衰えつぶらな瞳で俺を見てくる彼らを見て、ストレスから俺は胃液を吐いた。  ゲーゲーと吐いたよ。  こんなの現代人に耐えられる訳がない。  わかり過ぎます! [一言] 七…
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