51話
51話
「ふむ。壁内の『バロット商会の大老』から紹介状が来たかと思えば、まさかの『銀馬車の紙商人』とはな。俺はローグ商会のロックだ。街では『ゴミ拾いのロック』と呼ばれている。よろしくな」
バロット商会の奴隷に案内されて訪れたのは、壁内の商会ではなく壁外の最南端に位置する場所にある奴隷商会だった。
壁内を出たので『何処に向かうのですか?』とバロット商会の奴隷に色々と話を聞くと、壁外では水源豊富な北側に向かえば向かうほど土地権利が高くなる傾向があり、水源から離れる南側に向かえば向かうほど土地権利が安くなる傾向があるらしい。
つまり迷宮都市ハリスの最南端とは『スラム街』だ。
そして土地権利の大半はハリス子爵家が持っている。
なぜなら大半の商家が『スラム街』になっている土地権利をハリス子爵家から買わないからだ。
「『銀馬車の紙商人』タロウと申します。ロック殿、本日は宜しくお願いします」
「おい、最南端で商売してる俺を馬鹿にしてるのか知らんが、俺の名前に殿なんて付けるな。ロックで良い」
馬鹿にしてねーよ。
まぁ、第一印象でチンピラとは思ったけどさ。
「では、ロックさんと呼ばせてもらいますね」
「さん付けも要らないが……まぁ、あの『銀馬車の紙商人』だ。好きにしろ」
ロックさんが困惑顔をしている。
たぶん丁寧に接して来る客がいなかったんだろうな。
「ロックさん、ありがとうございます。ロックさんに少し質問したいのですが、大丈夫ですか?」
「答えれる質問なら答えてやる。なんだ?」
「ローグ商会は亜人を専門に扱っていると大老から伺っておりますが、亜人差別が強い地域のハリスで需要ってあるのですか?」
そう。
凄くこれが疑問なんだよな。
絶対に少数派の『ケモナー』以外に需要なんて無いじゃん。
「ふん。その質問で理解した。『銀馬車の紙商人』、お前は奴隷の中での身分というモノを何一つ理解してないな。いいか、奴隷の中にも様々な身分があり、人間族と亜人では絶対に埋められない身分的格差がある」
身分的格差があるのは分かってるよ。
だからこそ需要が無いでしょ。
バロット商会ですら5人の獣人しか見てねーよ。
「……なるほど。でも、それなら尚更に需要は無いのでは?皆さん人間族の奴隷を求めるのでは?」
「だから何一つ理解してないと言っている。いいか、亜人の奴隷を購入する最大の目的は人間族の奴隷の為だ。奴隷なんてモノは最下層の生き物だ。みな奴隷に落ちると自由を失い絶望する。だからこそだ。だからこそ人間族の奴隷の為に『亜人じゃないだけマシだ』と思わせる。お前、絶望に顔を歪ませて暗い目で泣く女を抱いて、楽しいのか?」
さすが異世界、重すぎる……。
聞いたらアカン分野だった……。
こんなの俺には絶対に手に負えんし、だからあんなにもメリルさんとキャシーさんはワンワンと泣いていたのか……。
「……な、なるほど。ある種の生贄として亜人の奴隷に需要があるんですね……」
「そんな感じだな。人間族の奴隷は『まだ』人間だ。だが、亜人は違う。亜人は『家畜』として徹底的に扱き使われ、すり潰される。この決定的な身分的格差により、人間族の奴隷は自分が最下層であることを忘れる、頭の中ではな」
や、やべぇ。
異世界の奴隷制は、絶対に軽々しく聞いたらアカン分野だった……。
「……な、なるほど。ロックさん、身分的格差以外の目的でお客が購入する理由はなんですか?」
「労働目的も多いな。獣人は身体能力が人間族よりも高いから狩猟や魔物退治などの肉体労働に使われる。エルフなら農業や畜産だな。ドワーフ族は手先の器用さを利用して物を作っている。他の亜人は稀少種だからウチでは扱ってない」
よかった。
話題が軽くなった。
なるほど。
エルフも良いな。
この世界の農作物や家畜を品種改良しても良いかも知れない。
「なるほど。その他の目的とかありますか?」
「そうだな……金の無いヤツが亜人の『雌』を購入することもあるな。当たり前の話だが、人間族の女は『錬金術スキル』で作る高価な避妊薬を使わなければ妊娠する。亜人の『雌』は逆に『錬金術スキル』で作る安価な妊娠誘導薬を使わなければ人間族とは妊娠しない」
は?
いやいやいや。
「高価な避妊薬をケチるヤツが亜人の『雌』で我慢する。理解に苦しむ『獣狂い』や『亜人狂い』のド変態どももいるけどな」
「あ、あの!すみません!に、妊娠誘導薬について詳しく教えて頂けませんか!?」
「ん?妊娠誘導薬すら知らないのか?人間族と亜人は種族が違う。だから性交しても子は絶対に生まれん。だが、迷宮1階層でも取れる満月草を『錬金術スキル』で妊娠誘導薬に錬金し服用すれば、種族を越えて子を産むことが可能になる。まぁ、亜人の『雌』と性交しても、生まれる子は全て亜人だがな」
はぁ?
おいおいおい。
『房中術スキル』、全く要らなかったじゃねーか!!
完全に死にスキルやろが!!
ユーグレナ様、どういうことっすか?
こっちは『共有収納スキル』と『複製スキル』の凶悪なシナジー効果を生み出すスキルコンボを諦めてでも、『房中術スキル』を選んだんすよ?
さすがに何の説明も……。
いや、確か『錬金術スキル』と『死霊術スキル』を聞いて、意味不明だと質問すらせずに完全スルーしたのは俺だった……。
世界に降りるのを焦って急いでたから、やっちまった……。
「ん?急にどうした?なんか顔が暗いぞ」
「……いえ、人生の選択を間違えたと……」
「は?ま、まぁ、時にはそんなこともあるさ。元気だせよ。それより、そろそろ商売の話をして良いか?」
ははは。
後の祭だし、くよくよしても仕方ないよな。
……グスッ。
「……そうですね。ロックさん、ドワーフ族はおりますか?」
「ドワーフ族は手先が器用だから人気だ。なかなか入荷できないし、入荷しても直ぐに売れる。だが、お前は運が良い。今朝、犯罪者のドワーフ族を入荷した。連れて来るから少し待っててくれ」
おお!!
ドワーフ族がいるのか!?
でも犯罪者?
技術力は大丈夫なのか?
ロックさんが部屋から出て少し待っていると、如何にもドワーフ族って感じの髭もじゃの小っこい爺さんを連れて来た。
「コイツはドワーフ族の中でも特に頭のおかしなドワーフ族だ。高品質パピルスをガレッド伯爵家の貿易都市ミールの出島で見たらしくてな。ドワーフ族特有の頭のおかしさから出島を抜けて河沿いを上り密入国し、昨夜ハリスに来た所を衛兵が見つけて奴隷落ちだ。ラーネル王国では亜人で奴隷じゃないのは密入国の犯罪者と分かりきってるのに、頭おかし過ぎるだろ。まぁ、高品質パピルスを扱っている『銀馬車の紙商人』の下に行くなら本望だろ」
ははは。
この爺さん、俺のせいで奴隷落ちしたのか……。
「お、お主が『あの』パピルスを扱っておる商人じゃと!?た、頼む!!『あの』パピルスを作った神の手を持つ職人に会わせてくれ!!どうやってあれ程のパピルスを作り上げたのじゃ!!それを知らずに死んだら、この世に未練が残って成仏できん!!頼む!!儂に職人を紹介してくれんか!!」
おいおいおい。
なかなか濃い爺さんだな。
奴隷落ちしても全然堪えてないだろ。
確かに頭おかしい……。
見るからに『かなり面倒くさいタイプの人間』って感じだ。
というか、コピー用紙を作った職人とか、この世界にいねーし。
とりあえずスルーしとくか。
「ロックさん、おいくらですか?」
「ドワーフ族は1000万クローネだ」
『おい!!儂を無視するな!!』と喚く面倒くさいドワーフ族を無視して、1000万クローネをロックさんに支払い奴隷契約する。
さて、面倒くさく煩いドワーフ族は無視して獣人やエルフを見てから帰るか。
タロウ・コバヤシ
※クローネ
約52億1800万クローネ
※ユーグレナ
約29万ユーグレナ
ユーグレナ共同体
※魔石ポイント
約700万MP
※通貨供給量
1億ユーグレナ
ユーグレナ軍
※軍事予算
32億2000万クローネ
所有奴隷
男 110人
女 74人




