表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/97

43話

43話


「ボス、『ミランダ商会の煌めく宝石』にしてやられましたね」


「ペロシさん、分かってるから何度も言わないで……」


 3階の会議室で俺たち6人は商品の選定をしている。


 商品を選定しながらも聖剣クラウスたちはチクチクと嫌味を俺に言って来る。


 一番酷い嫌味は『ボス、あんな年端もいかない幼い少女に丸め込まれるなんて……実はロリコン商人でしたか?』と言ったピーターだ。


 ピーターめ、覚えておれ……。


「ボス、あれで成人したばかりの13歳ですよ?ミランダ商会とは恐ろしいですね」


「ミランダ商会というよりも、たぶんミリスさんが凄いよ。カレンちゃんを育て上げたのはミリスさんだと思う」


「なるほど……」


 俺たちは雑談しながらも、これは良いかも、いや駄目だと話し合う。


「ボス、さっきも言ったが俺はこの『紅茶の葉』が良いと思うぞ。戦争にはまず利用されない」


「クラウスさん、かしこまりました。候補に入れます」


「ボス、この『透明な袋に入った砂糖』も戦争に利用されませんよ。砂糖は貴重ですから高値で販売できるのでは?」


「マイクさん、候補に入れますね」


「ボス、それなら『真っ白な皿』も戦争に利用されませんよ。芸術的で王族や貴族家に高値で販売できるのでは?」


「ビルさん、候補に入れますね」


「ボス、そろそろ最初に取り決めた時間が迫って来てますが……」


 ピーターさんが『置き時計』を指し示し、そろそろ1時間が過ぎる。


 そう。


 1時間もあーだこーだと男たちで話し合っていた。


「ピーターさん、了解。みなさん、この3つの候補から選びましょうか。カレンちゃんが欲しがっているのは、固定観念と常識を打ち破るほどの魅力的な商品。とすると、やっぱり『紅茶の葉』ですかね?」


「だろうな、ボス。ボスの商品は高品質ではあるが、低品質な砂糖も皿も近隣諸国で入手できる。だが『紅茶の葉』は無い。ハーブでは辿り着けない程の圧倒的な文化的格差がある」


「ですよね、クラウスさん。ペロシさんはどう思いますか?」


「ボス、どの商品も魅力的ですが、やはり『紅茶の葉』が突出していると私も思います」


「ペロシさん、了解。他の皆さんはどうですか?『紅茶の葉』で大丈夫ですか?」


 反対意見が出ない。


 まぁ、軍人だし軍事的観点以外にあんま興味ないよね。


「では、皆さん。『紅茶の葉』をミリス商会に卸しますね」


「了解、ボス」


 本来は日本茶葉を入れる高級木製の茶筒に『紅茶の葉』を移し入れている。


 どー見ても日本茶葉が入っている様にしか見えない……。


 そして本来は『紅茶の葉』を入れる金属製の保存容器はクラウスさんたちから『金属は戦争に利用できる資源だ』と駄目出し。


 そんなん分かるかよ!!

 

 とりあえず『紅茶の葉』を入れた木製の茶筒を3つ複製して1階の食堂へと向かうと、メアリーちゃんとカレンちゃんがキャッキャウフフしていた。


 2人とも人懐っこいから直ぐに仲良くなったみたいだ。


「カレンちゃん、お待たせ」


「タロウ様、大丈夫ですよ!!メアリー様と楽しくお話ししていましたの!!」


「銀馬車のお兄さん!!ミリス様とカレン様を助けてあげてね!!商家に生まれて来た全ての女性の夢と希望なんだから!!私もいつかミリス様とカレン様に追い着くから!!」


 ……しまった。


 動揺してたから後手後手だな。


 どー見てもメアリーちゃんがカレンちゃんに取り込まれている……。


 これは絶対にメアリーちゃんから情報が漏れるぞ……。


 メアリーちゃんの『カレン様、またね!!』との言葉に慄きながらも、『ミランダ商会の煌めく宝石』と対峙する。


「カレンちゃん、コイツをミリス商会に独占取引で卸すよ」


 コトリコトリとテーブルに木製の茶筒を置く。


「……木の筒でしょうか?確かに芸術的ではありますが……」


 俺の言葉と茶筒を見て明らかに落胆しているカレンちゃんを無視して、俺はペットボトルを指差す。


「カレンちゃん。この飲み物の正体がコイツさ」


 その言葉にクリクリとした目がカッ!と大きく見開き、ゴクリと唾を飲み込んでから震える指先で茶筒を触る。


「よく見ると蓋になってるでしょ?蓋を取ってごらん」

 

「は、はい……わぁ!!凄く良い香り!!タロウ様!!お飲み物と同じ香り高く高貴な香りがしますわ!!」


 パァ!っと花咲く笑顔が凄く可愛い。


 おっと、いかんいかん。


 いつ『喰われる』か分からんから気を抜くな。


 目の前にいるのは『獰猛な肉食獣』だ。


「でしょ?コイツの名前は『紅茶の葉』。『紅茶』の飲み方はお湯に『紅茶の葉』を入れて少し待って、飲むときに味と口触りに邪魔になる『紅茶の葉』を濾すだけ。好みの量の砂糖を入れたり、柑橘系の果物を入れたり、逆に何も入れなかったり、様々な楽しみ方や入れ方や飲み方があるから自分たちで研究してね」


「はい!!分かりました!!」


「その3つはミリス商会にプレゼントするから、みんなで味の研究や卸値を決める参考など好きに使ってね。卸値が決定したら俺に伝えてね」


「はい!!タロウ様、ありがとうございます!!ミリス姉様も他家の姉様たちも、とってもとっても喜ぶと思います!!カレンやりましたよ!!やったー!!わーい!!」


 年相応に燥いで喜ぶ姿を見ると、本当に幼い少女だ。


 この幼い少女が心から喜ぶ姿を見れただけでも、良しとするか……。


「それじゃ、カレンちゃん。明日の昼前に高品質パピルス100枚セット1000個の10万枚を卸すから、宜しくね」


「はい!!任せてください!!タロウ様、そろそろお暇させてもらいます。本日はご相談に乗って頂き、ミリス商会全一同が心から感謝を申し上げます!!」


「いえいえ。カレンちゃん、気を付けて帰りなよ」


「はーい!!」


 カレンちゃんが手をブンブンと振る幼い少女の姿に苦笑しながらも、手を小さく振り返す。


 ふー。


 やっと帰ってくれたか……。


 やっと帰ったけど明日も来る。


 これから毎日『ミランダ商会の煌めく宝石』とバトルが続くのか……。


 ミリス商会との付き合い方を大きく変更だな。


 こんな騙し討ちしてくる強欲で短絡的な商会や商人と付き合ってられるかよ。


 コピー用紙と紅茶の葉の『供給量』を徐々に抑えながらミランダ商会とミリス商会を干上がらせ、信頼に基づく長期の関係を築ける商会を探さないとな。


 他の御三家にでもアプローチしてみるかな……。



資金

約31億4800万クローネ


魔石ポイント

約900万MP


軍事予算

6億2000万クローネ


所有奴隷

男 29人

女 9人


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ