41話
41話
3階の6人部屋1室を身内販売店用で追加で貰い、残りの部屋割りは全てペロシさんに任せた。
とりあえず販売店が稼働するまでは配給制とし、複製したペットボトルを販売店に大量に置いて1人1日4本までとした。
あと複製したお菓子は1人1日2つまで。
餌付け計画だから勝手に飲んで食ってくれ。
新たに契約した女性2人をアンナさんとミーナちゃんに紹介する。
計算が得意で事務仕事が好きそうなのが、メリルさん。
綺麗な黒髪を肩の位置で切り揃えた委員長タイプで生真面目そうな性格。
身長は少し高めでスラリとした細身の美人さん。
胸は小っこい。
年齢は23歳。
ガーランド王国ハーバー子爵家の奴隷一族で書類作成の仕事をしていたが、大戦の戦後処理の余波でバロット商会に販売されたとのこと。
話が重いぜ……。
もう一人の記憶力が得意で物怖じしないのが、キャシーさん。
背中まで届く黒に近い深い青色の髪が特徴で、好奇心旺盛な瞳も印象的だ。
身長は小っこいが胸が大きく柔らかそう。
ロリ巨乳的な感じだな。
年齢は16歳。
ガーランド王国タルト男爵領カターニャ村の出身。
大戦の余波により口減らし目的で奴隷に堕ちたとのこと。
話が重いぜ……。
4人に複製したペットボトルとお菓子を渡して、アンナさんに『日本の慣習』を2人に教えるように伝えてから仕事に戻る。
カレンちゃんを待たせてるし、さっさと仕事するか。
会議室に放置していた魔石をディスプレイにポイポイと放り込み、約100万MPを使用してコピー用紙100枚セット500個を顕現させる。
そして宿の奴隷たちに荷物をカレンちゃんの所まで運ばせる。
「タロウ様!高品質パピルス100枚セットが500個で30億クローネになります!ミリス商会は仲介手数料を3億クローネ頂き、残り27億クローネがタロウ様の取り分となります!ご確認ください!」
「……確認しました。カレンちゃん、ありがとう。明日は昼前に100枚セット1000個の10万枚を卸せるけど、大丈夫かな?」
「タロウ様!!もちろんです!!明日の昼前に伺います!!」
「了解。それじゃ、カレンちゃん、気を付けて帰ってね」
「タロウ様、お気遣いありがとうございます!!ですがタロウ様……少しだけお時間を頂けないでしょうか……?」
チッ。
カレンちゃんをスムーズに帰らせようとしたのに、さっそく情報を抜きに来たか……。
でも上目遣いが可愛いぞ!!
「ん?もちろん大丈夫だけど、何かな?」
「あの!!タロウ様にお願いがあります!!」
お願い?
何だ?
とりあえず話だけは聞いてみるか……。
「何かな?」
「いつか白銀に輝く『銀馬車』に乗せて頂けないでしょうか!!」
おいおいおい。
まさか『銀馬車』の情報を抜きに来たのかよ……。
俺の恥ずかしい渾名は『銀馬車の紙商人』だぞ?
いくら何でも火の玉ストレート過ぎるだろ……。
キラキラとワクワクした目で『銀馬車』を憧れ眺めていた幼い少女と言えども、さすがに『銀馬車』には絶対に乗せられない。
だが『いつか』なら別に良いよ。
その『いつか』が来ると良いけどね。
やはりまだまだ子供だな。
『銀馬車』に憧れた子供にちょとした夢を見させてやるか……。
「……もちろん良いよ。今はちょっと事情があって『銀馬車』には乗せられないけど、『いつか』カレンちゃんを乗せるよ」
「タロウ様、本当ですかっ!!」
「もちろんさ。『いつか』必ずカレンちゃんを『銀馬車』に乗せると約束するよ」
「タロウ様、約束ですよ!!約束を守る為に手を繋いでください!!」
ん?
約束を守る為に手を繋ぐ?
指切り的なモノ?
知り合って間もない男女が手を繋ぐとか、何気にハードルが高くないか?
「カレンちゃん、ごめん。ハリスの常識がまだ知らなくてさ、約束を守る為の儀式的なことで手を繋ぐの?」
「タロウ様、その通りです!!ハリスでは男性と女性が約束を交わす時に、約束を守る方が左手を、約束を守ってもらう方が右手を繋ぎます!!」
んー、まぁ、こんだけ可愛い少女と手を繋ぐなら別にいいかな。
俺も健全な男だし可愛い女の子と仲良くなりたい。
というか沢山お金を払ってもこれ程の美少女と気軽に手を繋ぐことなんて不可能だし、タダで絶世の美少女と手を繋ぐとか凄い儲けモノだな。
「そうなんだ。はい、左手」
「タロウ様、ありがとうごさいます!!」
そう言ってから、嬉しそうに喜ぶカレンちゃんが恋人と手を繋ぐ様に指を絡ませ合う。
完全に『恋人繋ぎ』だ。
ちょっと恥ずかしい。
カレンちゃんも頬を赤くしているし……。
「神様……『いつか』タロウ様が『銀馬車』に乗せてくださることを約束してくれました……」
なるほどねー。
これが近隣諸国の絶対的アイドル『ミランダ商会の煌めく宝石』か……。
めちゃくちゃ可愛いぞ!!
「タロウ様……もう一つお願いがあります……」
『恋人繋ぎ』をしたまま、頬を赤く染めて上目遣いで甘えて来るカレンちゃん……。
くそっ!!
めちゃくちゃ可愛いぞ!!
「ん?何かな?」
「タロウ様……透明な水筒の中身が大変美味しいのではないかと、商人たちの間で噂になっております……。それで……その……一口だけでも良いので飲ませて頂けないでしょうか……?」
ゾッと背筋が凍る。
やってくれたな、このクソガキが。
この俺に『フット・イン・ザ・ドア』と『ドア・イン・ザ・フェイス』の両方を、全く何の気配も無く仕掛けて来てやがった。
『いつか』という極めて軽い要求と『銀馬車に乗せる』という極めて重い要求、その両方を飲ませた上で本題をブン投げて来やがった。
いや、極めて軽い要求は『お願い』から始めているな。
そしてより重い要求の『知り合って間もない男女が手を繋ぐ』ことを飲ませた所で、本題をぶん投げて来たな。
おそらく予め早めに宿に来てたのは……『銀馬車』を眺めて憧れている幼き少女、そのイメージを俺に強く印象付ける為か……。
近隣諸国有数の大都市ハリスの強欲な商人たちを、それ以上の強欲さで喰い物にする御三家のミランダ商会。
その歴史的名家の血を受け継ぐ『ミランダ商会の煌めく宝石』か……。
お前を単なるハニートラップ専用の憐れなガキだと舐めていたよ。
お前は立派な商人だ。
『人を欺く』立派な商人だ。
この『恋人繋ぎ』も男の下心を利用して心理面で親密化を図りながらも要求を断り難くさせ、『逃がさない』そして『逃げられない』という心理面も強く心に印象付ける。
さて、どうやってこの『凄腕の商人』から逃げるかな……。
とりあえずは考える時間を作るか……。
「えーと……」
「……ダメでしょうか……?」
「うーん……」
「……お願いします……」
くっ。
しょんぼりしてるユーグレナ様そっくりの雰囲気で、幼い少女がしょんぼりとウルウルとした上目遣いで罪悪感を湧かせて来る……。
はぁー、分かったよ。
『ミランダ商会の煌めく宝石』さんよ、俺の負けだ。
欺かれた俺の負けだ。
そしてさすが『ミランダ商会の最高傑作』だ。
こんな『凄腕の商人』を実家から引き抜くとはな。
俺の完全な敗北だよ。
「……全部飲んでも良いから、人の目がある外で飲まずに食堂で飲んでもらうよ。それと透明な水筒は必ず回収させてもらう。それで良いのなら貴重な1本だけどカレンちゃんにプレゼントするよ」
「タロウ様、本当ですか!!やったー!!わーい!!」
繋がった手をブンブン振りながら笑顔で喜ぶ姿は年相応か……。
まさかこんな幼い少女に負けるとは……。
資金
約31億4800万クローネ
魔石ポイント
約900万MP
軍事予算
6億2000万クローネ
所有奴隷
男 29人
女 9人




