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39話

　ミリスさんが商会を立ち上げた後、専属仲介契約の変更や高品質パピルスの取り引きを終わらせた。

　そしてミリス商会の御用商人の証文を受け取る。

　これを壁内の城門にいる衛兵に見せれば、長蛇の列に並ばずとも壁内に入れるとのこと。

　壁内の商会が持つ権力の一つだ。

　便利過ぎる証文だから後で複製スキルで存在を記憶し、いくつか複製してペロシさんに渡しとこ。

　前回の包装用紙の分が1億クローネに、仲介手数料1000万を差し引いた9000万クローネが取り分。

　1セット分包装用紙を破いたハズだが、実家のミランダ商会をぶん殴り満額を貰って来たらしい……。

　実家から勘当されてないよね？

　今回の分がバラ売り1万枚が売上5億クローネ。

　そこに仲介手数料5000万クローネを差し引いた4億5000万クローネが取り分。

　100枚セットが200個で売上12億クローネ。

　そこに仲介手数料1億2000万クローネを差し引いた10億8000万クローネが取り分。

　全部合計すると、俺の取り分が16億2000万クローネ。

　『ミリス商会』の取り分が1億8000万クローネ。

　商会立ち上げた日に純利益1億8000万クローネとか、頭おかしいだろ。

「ミリスさん、確認しました。ありがとうございます」

「タロウ様、こちらこそありがとうございます」

「ミリスさん、まだお時間は大丈夫でしょうか？私も少しご相談がありまして……」

「タロウ様、もちろん大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。まずは顔繋ぎですが、こちらのペロシさんは私の補佐をしております。私の代わりにミリス商会との取り引きでペロシさんが立ち合うかも知れませんので、その時はよしなにお願い致します」

「かしこまりました。噂に名高い『死神将軍の知恵袋』ペロシ様、ミリス商会のミリスです。宜しくお願い致しますね」

　『死神将軍の知恵袋』？

　ペロシさん、アンタそんな渾名があるの？

　つーか、死神将軍って聖剣クラウスだよな？

「ペロシです。ガーランド王国でも貴女の噂を耳にしましたよ。近隣諸国有数の大都市ハリスには『ミランダ商会の最高傑作』と呼ばれるうら若き女傑がいると。以後、宜しくお願いします」

　ミリスさん、やっぱ近隣諸国でも有名なんだ。

　まぁ、これで顔繋ぎは終了。

　次だ、次。

「ミリスさん、次に質問があるのですが商会を立ち上げるメリットは何かありますか？」

「タロウ様、様々なメリットがあります。まず、契約が個人から商会へと移りますので、商会が存続している限り契約は履行され続けます」

　人には寿命があるけど、商会を立ち上げることで寿命の概念が無くなると。

「次に土地が購入できます。迷宮都市ハリスは壁内と壁外の全ての土地に権利書があります。商業ギルドで商会を仮登記し、他の商会が入手した土地の権利書を購入することで商会が無事に立ち上がります。つまり土地の権利書を持たないと実質的な商会としては認められてません」

　ふむふむ。

　他の商会から土地の権利書を購入して、土地を持って初めて商会として認められると。

「次に信用が発生することです。基本的に商会を持たない商人には大きな信用は発生しません。商会を持たないとは土地を持たないことですからね。根無し草と判断されます。大規模な取り引きを行うのには不利になり、基本的に仲介手数料が別途発生することを意味します。他にも様々なメリットはありますが、商会を立ち上げる商人の目的はこれらが大きいですね」

　なるほど。

　信用が無いから大規模な取り引きには仲介人を付けるしかないということか。

　その分、利益が薄くなる。

　ふーむ。

　商会を立ち上げるべきなのかな？

　立ち上げても不利にはならなさそうだけど……。

「ペロシさん、どう思われますか？我々も商会を立ち上げるべきですかね？」

「ボス、立ち上げるべきです。様々な理由がありますが、会議室でお伝えします」

　ふむ。

　ペロシさんは商会を作るべきと。

　そして会議室ということは軍事目的か……。

「ミリスさん、私もミリスさんにあやかって商会を立ち上げたいのですが、どうすれば宜しいでしょうか？土地権利はどうすれば手に入りますか？」

「様々な方法があり一概には言えませんが……そもそも迷宮都市ハリスに来られたばかりのタロウ様には人脈や情報に限りがありますので、土地権利の購入自体が非常に難しいかと思われます」

　そりゃそうだ。

　こちとら異世界3日目ですわ。

「ですので、宜しければミリス商会で土地権利の購入の仲介を致しましょうか？仲介手数料は土地権利の購入代10％を頂きますが……」

　おお！

　ミリスさんが動いてくれるのか！！

「ミリスさん、是非ともミリス商会に仲介をお願いしたいです」

「かしこまりました。それではタロウ様、商会の名前はお決まりでしょうか？迷宮都市ハリスの慣習では商人の名前を取りますので、タロウ商会で宜しいですか？」

　タロウ商会？

　いやいやいや。

　有り得ねーよ。

　鼻で嗤ってしまったがな。

　うーん、何か無いかなー。

　どうせ有名になるだろうし、布教の一環でユーグレナ様のお名前を頂こうか。

「ミリスさん、ユーグレナ商会でお願いしても宜しいでしょうか？」

「はい、もちろん大丈夫ですよ。タロウ様が生まれ育った国の名前はユーグレナなのでしょうか？」

「いえ、違いますよ。国の名前は『ニホン』ですね。私が信仰している女神ユーグレナ様のお名前から頂きました」

「か、神の名を使っても宜しいのでしょうか……？」

　ん？

　良いのかな？

　あんま深く考えてなかったけど、ユーグレナ様ならポワポワしながら喜びそう。

「ええ、大丈夫です。むしろユーグレナ様ならとても喜ぶと思います」

「……かしこまりました。商会の仮登記に10万クローネが必要となります」

　ゴソゴソと皮袋から10万クローネを取り出し、ミリスさんに手渡す。

　その後、ミリスさんはガレージを出て商会の仮登記を終わらせて来た。

「タロウ様、こちらのパピルスがユーグレナ商会の仮登記になります。有効期限は1年間となります。それではタロウ様、大きさや場所など土地購入で何かご希望はございましたか？」

　希望？

　そもそも迷宮都市ハリスを全然知らないし、観光すらしてないんですけど……。

「ボス、私が代理でミリス嬢と交渉します」

　おお！！

　ペロシさん、ナイスアシスト！！

　軍事目的だろうし、ペロシさんに任せた方が良いよな、うん。

「ペロシさん、お願いします。ミリスさん、土地購入に関してはペロシさんが私の代理になります」

「かしこまりました。ペロシ様、後でお時間を頂けますか？」

「もちろんです。ミリス嬢」

　よし。

　任せられる部分はどんどん任せよう。

　顔繋ぎと商会の話を聞いたし、本題に行こうか。

「ミリスさん、『迷宮の無い私の国に持ち帰るため』に迷宮産のアイテムを購入したいのですが、オークションはどちらで開かれてますか？」

「タロウ様、迷宮産オークションは5日、15日、25日の月3日だけ開催されます。次の開催は4日後になり、場所は商業ギルドの裏手になります。巨大な会場ですから一目で分かるかと思います。また毎日様々なオークションが開催されており、スケジュールはオークション会場で確認できます」

　なるほど。

　次は4日後か。

　資金を貯めとくか。

「かしこまりました。ミリスさん、私からの相談は以上ですが、ミリスさんは他に何かありましたか？」

「そうですね……タロウ様、噂の透明な水筒は販売されるのでしょうか？」

　ヒエッ！！

　戦争に利用されるペットボトルが噂になってるし、ミリスさんにも狙われてる！？

「い、いえ、販売できるほどの量はありませんので、販売は考えてないです……」

「かしこまりました。それは残念ですわ。もし何か販売される商品がございましたら、是非ともミリス商会に一声ください。ミリス商会の保護下に入った商人も沢山おりますので、タロウ様とユーグレナ商会の為に最大限の利益を提供致しますわ」

　ん？

　さっき商会を立ち上げたばかりでは？

　なんでミリス商会の保護下に商人が既にいっぱいいるの？

　ミリスさん、アンタ壁内で何したのよ……。

「……何か新たに卸す時は最初にミリス商会に一声かけますね。あ、そう言えばミリスさんは商業ギルドを辞めますよね？これから高品質パピルスの取り引きはどちらで行えば？」

　「タロウ様、もちろん私たちミリス商会がタロウ様の手を煩わせない為にも、タロウ様が宿泊されている宿にまで伺わせてもらいますわ。毎日昼前と昼後にミリス商会から人を遣わせます。後ほど伺う予定でしたが、少しだけお待ち頂けますか？顔繋ぎで紹介致します」

　そう言って『俺の返事も聞かずに』ガレージを出た後、ミリスさんに似た1人の幼く可憐な少女を連れて来た。

　目がクリクリと大きく、腰まで届く綺麗な赤髪が特徴。

　あと小っこくて細くてすごく可愛い。

　歳はメアリーちゃんと同じぐらいかな？

「タロウ様、こちらは私の末妹のカレンです。カレン、自己紹介をなさい」

　やっぱり妹だったか……。

　実家から末妹を引き抜くとか、ミランダ商会は大丈夫なのか？

「タロウ様、お初にお目に掛かります。噂に名高い『銀馬車の紙商人』様とお会い出来て光栄です。今年成人したばかりの若輩者ですが、ミリス姉様の代理として高品質パピルスの取り引きや言付けなども承りますので、どうかよしなにお願い致します」

　うわぁ。

　何処のアイドルなんだ？と思うほど、めちゃくちゃ可愛い笑顔だ。

　今年成人ということは13歳か。

　そりゃ小っこいよな。

　ミリスさんも美人だけど、この子は飛び抜けて可愛い。

　そりゃ近隣諸国有数の大都市ハリスの御三家だから、美男美女になるんだろうけど……。

「タロウ・コバヤシです。カレンちゃん、こちらこそ宜しくお願いします。さっそくですが今日の昼過ぎ、出来れば所用がありますので少し遅めの昼過ぎに宿に来て頂けますか？宿に来て頂けるのでしたら、高品質パピルスを最大5万枚を卸したいと思います」

「タロウ様、かしこまりました！！遅めの昼過ぎに伺わせてもらいますね！！」

　『ふんす！！』と力みながら嬉しそうな笑顔をする。

　凄いな、この子。

　本当に可愛い。

　仕草がアイドルみたいにあざといのに、自然な動きにしか見えない。

「……では、そろそろ所用がありますので、お暇させてもらいます」

　そう述べてから、俺たちは商業ギルドを出る。

　あ、ペロシさんに軍事予算1億クローネを渡さなきゃ。

　ミリスさんの妹で、コピー用紙の取り引きは宿か……。

　取り引きが凄く楽になるから良いんだけど、どー考えても情報を抜きに来てるよな。

　しかも余りにも若くて幼い。

　アンナさんとミーナちゃんの情報も抜かれてるな。

　たぶん俺はロリコンと思われてそうだ。

　つまりカレンちゃんはハニートラップだな。

　幼い末妹をハニートラップの手駒にするのか……。

　これが『ミランダ商会の最高傑作』か……。

資金

約15億2000万クローネ

魔石ポイント

約19万MP

軍事予算

1億クローネ

所有奴隷

男　5人

女　3人