37話
後書きに告知があります。
37話
「ボス、そろそろ良い時間だ。話の続きはまた明日で良いか?」
だよな。
俺も色々と考え過ぎて、というかお前たちの殺気に当てられてマジで疲れて来たよ……。
「クラウスさん、そうですね。今日の所はそろそろお開きにして、明日また会議で問題点や解決方法を話し合いましょう」
「了解、ボス。明日のボスの予定は決まっているのか?」
明日の予定かー。
んー、商業ギルドと魔石販売店ぐらいじゃね?
あとさっきの話の魔道具購入の話ぐらいか?
「……商業ギルドで高品質なパピルスを卸し、魔石を購入します。商業ギルドで魔道具の購入などの相談もしますので、少し時間がかかるかも知れません」
「了解、ボス。お前ら、最後に何かあるか?つまらんことを質問するなよ?」
「クラウス将軍、宜しいでしょうか?」
「ペロシ、何だ?」
お?
出来る男ペロシさんの質問か。
ペロシさんの話はめっちゃ勉強になるんだよなー。
「まず早急に1億クローネを使用できる権限を頂けますか?次に、軍事予算の項目に仲間を取り戻す予算と計画立案、下級兵士になる護衛奴隷の予算と計画立案を計上しても宜しいのでしょうか?また軍事予算を計上する権限の中に、ボスの資金と魔石ポイントを把握する権限を頂けるのでしょうか?」
ん?
まぁ、1億クローネなら明日には揃うから別に大丈夫だな。
んで、俺が勝手気ままに部隊長や護衛奴隷を購入してたら、そもそも軍隊の編成の計画が立てれないってことか。
んでんで、俺の資金や魔石ポイントが分からないことには、予算の計上がそもそも出来ないってことか。
「ふむ。ボス、良いか?」
「ええ、もちろんです。1億クローネは明日の昼前には用意できますので好きに使ってください。また、私の資産把握についてはどの道ペロシさんには商売の補佐をしてもらいますし、暴力に関してはクラウスさんに全てお任せします」
「了解、ボス。ペロシ、ボスの資産を全て把握して軍事予算を分捕ってこい」
「はっ!!」
ヒエッ!!
ペロシさんが俺を見て『ボス、言質は取りましたよ?』と不敵にニタリと笑ってる!?
敵だ!!
ペロシさんは敵だった!!
俺の資産を暴力派が上手く乗っ取りに来てる!!
「お前ら、他にあるか?……なさそうだな。ボス、解散で良いか?」
「え?ええ、だ、大丈夫です。みなさん解散しましょう」
「ボス、了解。マイク、夜間の護衛計画を立てろ」
「はっ!!」
こうして俺たちは最初の会議を終わらせた。
迷宮の確保かー。
迷宮を金で買えたら良いんだけど、貴族が売るわけないしな……。
どうすれば良いんだろ……。
トボトボと歩きながら仕事部屋に戻り、体を洗ったり歯を磨いたりする。
ふー、寝る準備は終了。
ユーグレナ様の神像を持って仕事部屋を出る。
寝る直前にユーグレナ様にお祈りしたいしね。
私室の6人部屋にノックして少し待つが……返事が無いから入る。
2人とももう寝てるのかな?
「御主人様、お帰りなさいませ」
「ごしゅじん様、おかえりなさいませ」
部屋に戻ると、狐耳少女たちが床に跪いて俺を出迎えている。
なぜそうなる……。
俺はそんなことを何一つ求めていないのに……。
異世界は本当に意味不明だ。
「……アンナさんもミーナちゃんも立って。丁寧なお出迎えは嬉しいけど、そこまでしなくて良いからね?俺たちは家族みたいな物だし、家族にそんなことはしないでしょ?」
「御主人様、私たちは妾の奴隷の子ですから父にも奥様にも跪いて挨拶しておりましたが……」
「ごしゅじん様、いつもと同じようにあいさつしてます」
さすが異世界、重すぎる……。
血を分けた家族にすら床に跪かせるとは……。
これが強固な身分制度か……。
そりゃこんな慣習があるなら、聖剣クラウスを台座から引き抜ける人間なんか絶対に現れるわけねーよな……。
「あー、うん。アンナさんとミーナちゃんの気持ちはとても嬉しいけど、跪いて挨拶するのは止めて欲しい。俺の国には奴隷がいなかったからさ、凄く戸惑うんだよね。だから俺の国と同じ挨拶を教えるから、それに従って欲しいんだ。アンナさんもミーナちゃんも良いかな?」
「御主人様がその様に仰るのでしたら、私たちは御主人様の御要望に従います」
「はにゃ???」
「アンナさん、ありがとう。とりあえず立とうか。ミーナちゃんも立って」
「かしこまりました。ミーナ、立ちなさい」
「はい、おねーちゃん」
という訳で、ユーグレナ様の神像を棚に置いて日本の常識的な挨拶を教えた。
そして異世界の常識や彼女たちのこともそれとなく聞いた。
特に驚いたのは成人は13歳から。
つまりミーナちゃんは10歳。
アンナさんは15歳。
奴隷制を受け入れたとは言え、身内になる人間だけは日本の慣習や考え方を教えることにする。
特に『御主人様』呼びを改め『さん』呼びにさせる。
じゃないと時代の感覚や常識が違い過ぎて、俺の頭と心が発狂しそうだ……。
遊び半分の夜でのプレイなら分かるんだけど、御主人様と言われ跪いて挨拶するのが日常になれば……世界が俺の中に急激に浸食してくる。
いつか世界に完全に浸食されるのは良い。
俺はこの世界の人間になると決めたのだから。
でもせめて緩やかに浸食してくれ……。
「そうそう、そんな感じ。んじゃ、そろそろ寝ようか……おっと、ユーグレナ様にお祈りしないと」
棚に置いていたユーグレナ様の神像に両膝で跪いて祈りを捧げる。
ユーグレナ様の御蔭で今日も生き残れました……。
暴走気味ですが、頼れる仲間も出来ました……。
可愛い家族も出来ました……。
美咲先輩と米山部長に女神様の祝福が訪れますように……。
よし。
祈りを捧げ終わったし、寝るか。
立って振り返ると、アンナさんとミーナちゃんが困惑していた。
「た、タロウさん。私たちもお祈りを捧げた方が宜しいのでしょうか?」
ん?
どうなんだろ?
信仰の自由だし、好きにするば良いんじゃない?
あー、でも俺はユーグレナ様の使徒だったよな……。
ユーグレナ様の信仰を広めると約束したし。
うーん、どうすっかなー?
まぁ、とりあえずはユーグレナ様を紹介して、自発的な信仰に任せようか。
強制的に改心させてもユーグレナ様も迷惑だろうし、何より深く悲しみそう……。
「……えーと、まず基本的なことだけど、信仰心は強制しないから。自発的な信仰心じゃないと意味が全く無いからね」
「は、はい……」
「で、これは世界を司る女神ユーグレナ様の神像。俺が今日まで生きてるのは心優しいユーグレナ様の御蔭なんだ。だから最低でも俺は朝起きてからユーグレナ様にお祈りし、寝る前にもユーグレナ様にお祈りしてるんだ。祈る内容はユーグレナ様への感謝と日々の出来事、あと大切な人たちへの感謝の気持ちぐらいかな?」
「な、なるほど……」
「最初にも伝えたけど、信仰心は強制しないから。強制なんかしたらユーグレナ様も悲しむと思うし」
「タロウさん、分かりました。ユーグレナ様の御蔭でタロウさんが本日まで健やかに過ごされ、ユーグレナ様の御蔭で私たちは慈悲深いタロウさんと出会えたのですね」
ん?
そうなるのかな?
よく分からんロジックだ。
ユーグレナ様は世界に干渉できないから違うとも言えるし……。
でもユーグレナ様から頂いた複製スキルの御蔭で2人に出会えたとも言えるし……。
うーん、神学論争的な話?
「ミーナ、タロウさんが大切にされている女神ユーグレナ様に祈りを捧げますよ。私たちが優しいタロウさんと出会えたのは全てユーグレナ様の御蔭です」
「はーい、おねーちゃん」
あ、……神学論争を考えている内に2人とも跪いてユーグレナ様にお祈りしている……。
ま、深く考えるのは止めとこう。
なるようになるさ。
2人も祈り終わったので、そろそろ寝るか。
LEDランプを睡眠モードに切り替え淡い暖色の光に包まれる。
実にムーディー。
「んじゃ、そろそろ寝ようか。このベッドを貰うね。アンナさんもミーナちゃんも、おやすみー」
「あ、あのっ!!た、タロウさんっ!!夜伽はこの部屋でするのでしょうかっ!?」
は?
「アンナさん、幼いミーナちゃんがいる前で何を言ってるんですか……」
「え?あ、あの……夜伽はどうすれば……」
「もう少しお互いを知ってからにしよう。信仰心と同じさ。強制はしないし、義務にもしない。その代わりアンナさんをガンガン口説いて行くから、宜しくね。んじゃ、アンナさんもミーナちゃんも、おやすみー」
「は、はい……。タロウさん、おやすみなさい」
「タロウおにーちゃん、おやすみなさーい」
ふー。
さすがに『金の力』で購入した幼い奴隷の少女に、義務的な夜伽の名目でレイプするとか有り得ねーわ。
盛りの付いた童貞やエロ本の妄想じゃあるまいし、常識が違い過ぎて罪悪感からできねーよ。
きちんと口説いてから大人の関係になれば良い。
それで少なくとも奴隷制への罪悪感は消えるハズだ……。
俺はそっと心の蓋を閉じて『見て見ぬフリ』をする。
資金
約42万クローネ
魔石ポイント
約59万MP
所有奴隷
男 5人
女 3人
37話まで読んで頂き、ありがとうございます。次話から4章になります。
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