34話
34話
「3階の一番奥が8人部屋の私の部屋で、その手前の両サイドが6人部屋か。8人部屋は私の仕事部屋と荷物置き場にします。こっちの6人部屋を私の私室とし、こっちの6人部屋を会議室とします。後は皆さんで部屋を自由に使ってください。クラウスさん、護衛的に大丈夫でしょうか?」
「ボス、問題無い。むしろ奥にいてくれた方が護衛として助かるな。6人部屋の前に護衛が2人立てば、安全は守られる」
「分かりました。アンナさんとミーナちゃんは私室の6人部屋で寛ぎながら待ってて。私は8人部屋で少し仕事をしてから、会議室の6人部屋に入ります。クラウスさんたち5人も部屋割りを決めたら、会議室に来てください」
「了解、ボス。とりあえず部隊が整うまで、お前たちは4人部屋だ。マイクとピーターがまず護衛で立て。ビル、ペロシは荷物を置いたら2人と護衛を交替しろ。俺は2人部屋の一つを使う。荷物を置いたら、ここで集合だ。以上、解散」
「「「「はっ!!」」」」
聖剣クラウスたちがテキパキとシステマチックに行動し始める。
俺もやることあるし、8人部屋、通称仕事部屋に入る。
さて、まずは複製スキルで『魔石』を複製するか。
『複製スキル』と唱え、魔石を顕現させる。
後は魔石とA3コピー用紙を5枚持って、部屋を出る。
仕事部屋を出ると既に5人が揃っており、全員で会議室に入る。
「さて、まずは皆さんに私が扱っている商品を見てもらいます。こちらのパピルスをどうぞ」
コピー用紙を5人それぞれに渡すと、みな驚愕の表情をして手触りを確認している。
「どうでしょう?見たことも無いほどの高品質のパピルスだと思います。これ程の高品質なパピルスは近隣諸国にもありません。この高品質パピルスは私だけが取り扱っており、私は壁内の有名な商家と1枚あたり5万クローネで独占的に取り引きをしています。クラウスさん、それによってこれから何か問題が発生すると思いますか?」
「愚問だな、ボス。俺たちがここにいることが答えだろ」
「ええ、その通りです。私は近隣諸国からも王国からも迷宮都市ハリスからも命を狙われるでしょう。クラウスさんたちも地獄の大戦から生き残り、これから人生を謳歌できるハズでした。ですが、私の護衛奴隷となったクラウスさんたちもまた命の危険が迫ります」
「ボス、当たり前の話をしても仕方がない。何が言いたいんだ?」
「クラウスさんたちの命と人生を賭けてでも、私を守る価値があることをお見せします。これは何処にでもある魔石です。『複製スキル』」
『複製スキル?聞いたこともないスキルだぞ?お前ら、知ってるか?』と語るクラウスさんたちを無視し、俺は『複製スキル』を立ち上げ魔石をディスプレイに吸収させる。
それを見た聖剣クラウスたちは別に驚きはしない。
おそらく魔石を用いる強力なスキルを見慣れているからだろう。
だが、これならどうかな?
『複製』と唱えると床に魔法陣が現れ、裸のA3コピー用紙が1万枚『顕現』する。
「「「「「なっ!!」」」」」
「馬鹿な!!ありえん!!パピルスをスキルで生み出すだと!?」
聖剣クラウスが目を見開き驚愕の表情をしている。
『スキルで生み出す』とは、中々良い表現だ。
「クラウスさん。今、私は高品質なパピルス1万枚を複製スキルで生み出しました。さて、問題です。私は高品質パピルスを1枚あたり5万クローネで壁内の商家に販売してます。この高品質なパピルスの1枚あたりの原価はいくらでしょうか?」
「……ボス、俺たちは軍人だ。商売のことは分からん。だがペロシ、ボスの商売を補佐するお前が答えろ」
「はっ!!まず1枚5万クローネで商家に販売しておりますから、必ず5万クローネ以下が原価になります」
そりゃそうだ。
「魔石を用いたスキルと判断できますから、魔石ポイントが原価になります。近隣諸国で迷宮を擁する都市は基本的に手数料を抜けば魔石ポイント1000が1000クローネであり、魔石ポイントがそのままクローネと同値になります」
なるほど。
ペロシさんは一つ一つロジックを積み重ねるタイプか。
「通常のパピルスの小売り価格は1枚あたり2万クローネ以上が常であり、原価は1万5000クローネ前後です。小売り価格と原価の差額5000クローネ以上が利益になると、兵站で取り引きしていた商家から聞いたことがあります。ここから勘案すると、高品質なパピルスの原価は4万クローネ以上が商売における妥当な範囲でしょう」
なるほど。
ペロシさんは兵站担当だから商家との付き合いが深かったのか。
それにしても、ペロシさんのロジックの組み立て方は、納得感があって素晴らしいな。
「しかしながら庭先の巨大な『銀馬車』を考えると、高品質なパピルスで相当な大金を稼いでいると考えられます。つまり妥当な範囲以上に原価が安い可能性を示唆しております」
なるほど。
確かにそうだ。
ベ○スキャンプ16Xを見て大金を稼いでいると思うよな。
これは宿泊客もそう思ってそうだな。
「そして、これ程の高品質のパピルスを生み出すスキルです。それなりの魔石ポイントが必要になるでしょう。以上を勘案しまして、おそらく1枚あたり魔石ポイント2万前後、クローネなら2万クローネ前後が原価ではないでしょうか?」
「なるほど。ペロシさん、納得感のある素晴らしいロジックの組み立て方ですね。しかも『銀馬車』から原価が安いと推測するとは非常に面白い着眼点でした。ですが、残念ながら1枚あたりの原価は2万クローネ前後ではありません。魔石ポイント20つまり20クローネです。20クローネを5万クローネで販売してます」
「「「「「は?」」」」」
「おい、ボス。それはさすがにボッタクリ過ぎるだろ」
「ええ、ボッタクリ過ぎてます。ですが商業ギルドの優秀な仲介人が、高品質のパピルスを1枚あたり5万クローネの価値があると決めたんです。仲介人が獰猛で強欲過ぎたんですよ」
「なるほどな。ところでボス、その複製スキルってのは高品質のパピルスしか生み出せないのか?」
「いえ、高品質パピルスだけではありません。基本的に非生物以外は何でも複製スキルで生み出せます。食べ物も飲み物も酒も家も、そして武器や魔石さえも複製スキルで生み出せます。ですから魔石さえあれば、庭の『銀馬車』も複製できますよ」
「クックック。兵站の概念がぶっ壊れるな」
「でしょうね。あ、ちなみに目の前にある1万枚は仲介手数料を差し引いて、20万クローネが化けて4億5000万クローネになります。では、そろそろクラウスさんに聞きます。私の身の安全を守ることに命と人生を賭ける価値はありますか?」
「クックック、ハッハッハ!!ボス、奴隷契約に上等な飯も酒も服も住み家も、そして誰もが羨む極上の性奴隷を宛がうことも特約契約している。俺たちは命と人生を賭けてボスの身の安全を守るんだから、もちろん王族以上の贅沢な暮らしを保証してくれるんだろうな?」
「ええ、もちろんです。私の身の安全を守ってくださるのなら、王族が貧相に見えるほどの贅沢な暮らしを提供しますよ」
「お前ら、命を賭けろ。命を賭けて何としてでもボスを守れ。ボスさえ生きていれば俺たちは王族を越える」
「「「「はっ!!」」」」
男たちの留まることを知らぬ欲望に火が着き、ギラついた眼差しと獰猛な笑顔で互いの命と人生に誓いを立て合う。
俺たちは一蓮托生だ。
一蓮托生でこの世界を生きて行く。
資金
約42万クローネ
魔石ポイント
約59万MP
所有奴隷
男 5人
女 3人




