25話
25話
「ところでタロウ様、鉄は熱いうちに打てと故事にありますし、次の取り引きはいつ頃をご予定にされておりますか?ミランダ商会からはいくらでも購入すると伺っておりますが……」
独占取引の契約が一段落し、ミリスさんが『さっさと在庫を放出しろや?今が一番熱い時なんやぞ?お前、商機を分かっとるんか?ああん?』と客の俺すらも豪腕でぶん殴り始めた。
商人は事を急いてはならないハズでは……。
「そ、そうですね……一度宿に戻りますので、本日の昼過ぎはどうでしょうか?」
「まぁ!かしこまりました。急いでミランダ商会に資金の準備をさせておきますわ。それでタロウ様、高品質パピルスを何枚ほど卸す予定でしょうか?」
花が咲くほど嬉しそうな顔で『オラッ!オラッ!さっさとありったけの在庫を吐けっ!!お前が大量の在庫を持っとるのは分かっとんのじゃ!!』とミリスさんがグイグイと攻めて来る……。
そりゃ商品を横に流すだけで手数料が入るし、喜んで攻めるよな。
んー、コピー用紙の枚数はどうすっかなー?
というか、この後に立ち寄る予定の魔石販売店次第なんだよな。
魔石がどれだけ購入できるか分からんし。
魔石売買の手数料を考えず……2000クローネで100枚だから、2万クローネで1000枚、20万クローネで1万枚か……。
1万に5万クローネを掛けると……5億クローネ?
は?
5億クローネ?
暗算ミスったか?
えーと……やっぱり5億クローネ?
え?
20万クローネが、5億クローネ???
ボロ儲けとは思っていたが、ここまでボロ儲け?
いや、そっから諸経費を削るから……。
って、暗算すんの面倒くさいし、帰ってから計算するわ!!
「……まだ確定ではありませんが、1万枚を卸すことは可能ですか?」
「もちろん可能でございます」
スッと目付きが鋭くなるミリスさん……。
だから怖いってば!!
「……では、1万枚を卸す予定でお願いします。あ、先ほど昼過ぎとお伝えしましたが、所用と準備等で少し時間が遅れるかと思います。お時間は大丈夫ですか?」
「もちろんタロウ様の為だけに時間を空けておりますので大丈夫です。夕刻の鐘が鳴るまでお待ちしておりますわ」
ヒエッ!?
『わざわざお前の為に御三家のワイが予定を全部キャンセルしとるんじゃ!!絶対に夕方までに来いよ?来なかったら、分かっとるよな?お?そういや野犬が餌を欲しがっとったな』と鋭い眼光でニコリと脅して来るミリスさん……。
来ます!!
さっさと準備して、急いで来ますからっ!!
ミリスさんに別れの挨拶をし、逃げる様に駆け足で魔石販売店へと向かう……。
って、何で客の俺が駆け足で急ぐんだよ!!
ミリスさんの鋭い眼光、怖すぎるだろっ!?
魔石販売店で念の為に100万クローネ分の魔石を購入し、手数料込みで120万クローネを支払った。
魔石をリュックサックに入れて、駆け足で宿へと戻る。
だってミリスさんが怖いからっ!?
受付はメアリーちゃんのお母さんかな?
金髪の美人さんから部屋の鍵を受け取り、複製スキルのディスプレイにポイポイと魔石を吸収させる。
さて、さっさと複製するか……。
というか、1万枚だよな?
全部裸で渡すのは別に良いんだが、商業ギルドに持って行くのに面倒くさいよな?
うん。
絶対に面倒くさい。
包装用紙で包装された100枚入りで持って行くか。
『A3コピー用紙100枚入り 2050MP』を……えーと、複製100回で1万枚だな。
20万5000MPを消費して、魔法陣から包装されたコピー用紙100個が顕現する。
5000MPがもったいないが、もはや誤差みたいなモノだ。
というか1万枚なんて一度にリュックサックで持って行けないし、何度も宿と商業ギルドを往復すんの?
いやいやいや。
クソほど面倒くさいでしょ。
うん。
絶対に面倒くさい。
はぁー、仕方ない。
出したくないが、折り畳み式リアカーで持って行くか……。
1階まで降りて物置の警報装置を切り、中から折り畳み式リアカーを取り出して複製スキルで存在を記憶しておく。
はぁー。
やっぱり出したくねーな。
この世界でも応用できそうな技術の塊は、余り見せたくないんだけど……。
戦争に使われ、回り回って寝首を搔かれたくないし。
色々悩みながらもカチャカチャと組み立てて、荷台の底と側面に木の板を取り付ける。
よし、完成。
物置を閉めて警報装置をオン。
後は部屋からコピー用紙を持って来てリアカーに積むだけだ。
……1万枚も庭まで運ぶのか?
エレベーターも無い3階の部屋を何往復するんだ?
しかもミリスさんを待たせてるし!?
仕方がない……。
宿屋に頼んで荷物運びの奴隷を借りるか……。
奴隷を借りることが頭に浮かぶとか、俺も少しづつ少しづつ異世界に馴染んで来ているんだろうな……。
資金
約1720万クローネ
魔石ポイント
79万5000MP




