22話
22話
「8人部屋を取ってますタロウ・コバヤシですが、鍵を頂けますか?」
「8人部屋!?もしかして銀馬車のお客様!?」
宿に戻った俺は、受付で暇そうにしていた金髪ツインテールのお嬢ちゃん……背が低く、たぶん15歳前後のお目々クリクリの可愛らしい娘さんに部屋の鍵をお願いしたら、意味不明なことを述べていた。
異世界の常識はよく分からん。
「えっと……銀馬車?」
「そうそう!!あの銀色にピカピカ光る大っきい荷馬車!!凄いカッコいい!!」
ベ○スキャンプ16Xのことか?
あのカッコ良さが分かるとは……。
お主、中々やりおるな。
「あー、荷馬車ではないんですが……あ、そうだ。ミランダ商会って知ってますか?」
「御三家じゃん!?ハリス有数の超有名な商家だよ!!」
御三家?ミリスさん、名門中の名門の子女なのか……。
「そうなんだ。教えてくれてありがとう……あ、鍵を頂けますか?」
「あっ!ごめんねー!はい、8人部屋の鍵です!ねぇねぇ、お兄さんって、凄いお金持ちなの?御三家のミランダ商会を聞いてくるし、服装も異国風で何か凄くカッコいいし、何より銀馬車がデカくて凄いし!!」
「いえ、違いますよ。少し時間がありませんので、お話はまた今度でも宜しいですか?」
「あっ!またまたごめんねー!商人さんの邪魔しちゃった!!私はメアリーです!!パパは顔が怖いだろうし、何かあったら気軽に言ってね!!」
「ありがとう、メアリーちゃん。それじゃ、また」
『もう!ちゃん付けするなんて!!成人してるレディーを子供扱いなんて酷い!!』とかメアリーちゃんがオコしてるが、無視して8人部屋まで行く。
俺の人生が掛かってんだ。
今は邪魔しないでくれ。
部屋に戻り、まず皮袋から魔石を全て取り出す。
「複製スキル」
複製スキルを立ち上げ、半透明のディスプレイが浮かび上がる。
まずは重要な実験。
1つの魔石を手に持ち魔力を通して行き……魔石の存在を記憶する。
よし!!
魔石が複製できるのなら、迷宮産のアイテムを複製できる可能性が高い!
神界で房中術のスキルオーブの存在を記憶したかったが、ユーグレナ様が怖くて出来なかった。
次に『吸収』と唱えディスプレイまで魔石を持って行くと、魔石がディスプレイの中に吸収されて行く。
うーん、実にファンタジーで意味不明。
全ての魔石を吸収した半透明ディスプレイには、今まで0MPと書かれていた数字が8000MPと変更されていた。
よし!!
やはり魔石鑑定鍋の数値と複製スキルの数値は、同値だ。
ということは、この8000MPという数値は8000クローネと同値。
そしてA3コピー用紙は20MP。
つまり20クローネ。
ボロ儲け確定だな!!
ガハハハハ!!
俺の人生、勝ったな!!
8000MP全部を使い、A3コピー用紙を400枚複製する。
『複製』と唱えると魔法陣が床に現れ、400枚のA3コピー用紙が『顕現』した。
さすがファンタジー。
物理法則に正面から喧嘩を売っている。
400枚のA3コピー用紙をA3フォルダーで保護し、リュックサックに入れて部屋を出る。
1階に降りると、また暇そうにしてるメアリーちゃんがおり、鍵を渡して宿を出る。
メアリーちゃんが可愛らしく上目遣いで『いってらっしゃい♪』と手を振ってくれたので、苦笑しながら『いってきます』と手を振り返す。
さてさて、A3コピー用紙はいくらで販売が出来るのだろうか?
俺はワクワクしながら商業ギルドへと向かった。
「タロウ様、お待ちしておりました」
御三家の子女ミリスさんが商業ギルドのドアの入り口で待っていた。
やべ、待たせたかな?
物理的に俺の首が飛ばない?
大丈夫?
「ミリスさん、大変お待たせしました」
「ふふっ、大丈夫ですよ。タロウ様が駆け足で宿に戻られる姿を見ておりましたから」
ウフフと笑うミリスさん。
カッコ悪い姿を見せてたか……。
「……えーと、商品のパピルスを持って来ましたので、さっそくミリスさんに見て頂きたいのですが……どちらでお見せすれば宜しいでしょうか?受付のカウンターで宜しかったですか?」
「タロウ様、個室に案内しますので着いて来て頂けますか?」
「分かりました」
先導するミリスさんに着いて行き、個室の中へと入る。
ミリスさんが上座を俺に譲り、ドアを閉めて対面のソファに座る。
さて、ここからが商人としての勝負だ。
俺はリュックサックからフォルダーを取り出し、A3コピー用紙を1枚だけミリスさんに手渡す。
コピー用紙を受け取ったミリスさんが驚愕の表情をしている。
そして震える指先で紙の質感などを確かめ『ゴクリ』と息を飲み込んだ。
フハハハハ!!
これは勝ったな!!
「ミリスさん、どうですか?壁内の商家にこちらのパピルスを販売出来ますでしょうか?」
「…………」
「ミリスさん?」
「…………」
「ミリスさーん?」
「ハッ!?……た、大変失礼を致しました……」
「いえ、大丈夫ですよ。それでこちらのパピルスは壁内の商家と取り引きできますか?」
「えぇ、もちろんです。手触りも大変素晴らしく、これほどの高品質で真っ白なパピルスを見たのは生まれて初めてです。タロウ様、いったいこれをどちらで……?も、申し訳ございませんでした。商人として有るまじき失言でした」
「大丈夫ですよ、気にしておりませんから。それで1枚あたり何クローネで取り引き出来ますでしょうか?」
「……このサイズのパピルスですと、ハリス子爵領では1枚あたり1万5000クローネあたりが卸値になります。ですが、これほどの高品質のパピルスですと……おそらく2万~4万クローネあたりが卸値になるかと思われますが、申し訳ありません、今は確かなことが言えません」
うはっ!!
20クローネが、2万クローネ以上に化けるのか!!
もう笑いが込み上げて来るな!!
フハハハハ!!
「本日お持ちしたのはそのサイズと同じ400枚だけですが……手元の資金が心許ないので、手早く取り引きを行いたいのですが大丈夫でしょうか?」
「タロウ様。それはいけません。壁内の商家に足下を見られ、考えうる安値を提示されます。おそらく1枚あたりの卸値が2万クローネを提示されますね。そして、その初値の卸値がそのまま基準となり、以後は不利な卸値の取り引きになる可能性があります」
あー、なるほど?
ミリスさんは高値でコピー用紙を売りたいのか?
……まさか仲介手数料の数%がミリスさんに入る感じか?
専属仲介だからこそ、有り得るな……。
でも、別に1枚2万クローネでも全然儲かっているし、人生安泰なんだけど?
400枚で800万クローネの売上になるし。
しかも仲介手数料1枚あたり2000クローネの経費を引いて、1万8000クローネ。
さらに魔石の手数料込みの原価24クローネを引いて、1枚あたり1万7976クローネの儲けでしょ?
ボロ儲けじゃん?
うーむ。
安値で売っても良い俺と、高値で売りたいミリスさん。
さすが異世界。
意味不明な状況だな……。
「……ミリスさん。お恥ずかしい話ですが、異国の地から来たばかりで本当に手持ちの資金が心許ないんです。出来れば3日以内に取り引きを成立させたいのですが……」
「それでしたら、タロウ様。私の実家のミランダ商会と取り引きを行いましょうか?実家から高値の卸値を毟り取って来ますよ?」
ん?
んんん?
空耳かな?
実家なのに、毟り取って来るとか聞こえたんだけど?
あ、空耳じゃない……。
ミリスさんが目が鋭くギラついた怖い笑顔をしてるし……。
まさかやり手の商人?
さすが御三家の子女?
「えっと……スムーズに売買が出来るのなら、ミリスさんのご実家でも全然大丈夫ですが……逆にミリスさんとご実家との関係は色々と大丈夫なんですか?」
「もちろん大丈夫ですよ、タロウ様。先ほど、こちらの高品質のパピルスは400枚だけと仰られてましたが、まだまだ高品質のパピルスをお持ちでしたでしょうか?」
「え?ええ、まぁ、在庫がいくらあるのかは秘密ですが、まだまだ在庫はあります。えっと、それが何か?」
「タロウ様。もし宜しければ、ミランダ商会と独占取引の契約を致しませんか?他の商家にこちらの高品質なパピルスを卸さない独占取引が可能でしたら、実家から卸値を徹底的に最高値にまで吊り上げて毟り取って来ますが、如何でしょうか?」
あー、なるほど?
俺は高値の卸値が入り、ミリスさんは高い仲介手数料が入り、実家のミランダ商会は競争相手がいない独占取引で高値で小売り。
三者三様、win-win-win?
問題は何か無いか?
んー、コピー用紙が高値に成りすぎると、普及しないことか?
まぁ、でも大量にコピー用紙を供給したら価格が徐々に下がるハズだから、その時に再度卸値の価格を考え直す感じかな?
今はコピー用紙が少数と思われているからこそ、高値に吊り上がってるハズだし……。
「……ミリスさん、3日以内に取り引きを成立させることが出来ますか?」
「私に全てを任せて頂けるのなら、明日には最高値の卸値で取り引きを成立させます」
眼光鋭く物凄い怖い笑顔のミリスさんに全てを任せ、トボトボと俺は宿へと戻った。
この世界の商人、獰猛過ぎてマジ怖ぇよ……。
資金
49万400クローネ
魔石ポイント
0MP




