2
教室に入ると、もう何人かは席に着いたりお話をしたりしていました。そのうちの数名は私の存在に気がついたようですが、特に話し掛けられたりはしません。
いつものことです。
私の通っている学園は、ほとんどの生徒が貴族です。
わたしの家も一応子爵という貴族位は与えられていますが、昔から続くあまり裕福ではない子爵家です。そのため、高位の貴族家に広く知られている家ではありません。
ただ、私の家を知っている方々は、私が家族から疎まれていることも知っています。
全然力もない、小さな子爵家で嫌われている末の妹。そんな私に近づくなんて、百害あって一利なし。
しょうがないことですよね。悲しいですが、これも慣れてしまいました。
いつも通り、誰とも話さず、わたしは席に着きました。
学園は一番早くて12歳から通うことができます。一番遅くても15歳までには入学しなければなりません。そして卒業は18歳です。
貴族は、その家庭によって様々な事情があり、12歳から通えない方もいらっしゃいます。だから、12歳から15歳の間には入学する、という、少し緩い決まりとなっているようです。
ただ、学園に12歳から通えなかったとしても、通っていない分の学習は家で行う、ということも決まっています。
私は13歳から通いはじめました。
最初は家の手伝いをするように、と、12歳から通うことはできなかったのですが、家庭教師をつけて
勉強させる、という方が疎ましく思われたようで、13歳から入学することとなりました。
もう少しで始業の時間です。
教科書の準備をしていると、
「エラ!おはよう!」
明るい声が隣の席から聞こえてきました。
「マリー、おはようございます。」
私のこの学園で唯一のお友達のマリーです。
「今日歴史学の小テストだよね?全然勉強してないよ~どうしよう~!」
「私、テスト範囲をノートにまとめていますよ。見ます?」
「いいの!?休み時間に急いで勉強したい!!」
「どうぞどうぞ」
私がノートを渡すとマリーは輝く笑顔で、ありがとう!と言います。
マリーは貴族ではなく商家の娘です。商家というのは、位で言えば貴族ではなく、平民です。
この学園では、平民は基本的には通うことができないのですが、マリーのお家のように、裕福であれば特別枠という形で通うことができるようです。
マリーは私が自分の家族や他の貴族達から敬遠されていることを、知っていて、仲良くしてくれます。
マリー曰く、他の貴族達はお高く止まりすぎていて、平民である自分とは話もしたくないらしい、とのこと。
確かにそういう風潮はあるかもしれません。
あぶれたもの同士、仲良くしよう!なんて、あっけらかんと言います。貴族の平民を軽視する風潮は嫌な気分になりますが、おかげでマリーと仲良くできてちょっと嬉しい、、、
なんて、言ってはいけませんね。聞かなかったことにしてください。