日常
三題噺もどきーじゅうはっこめ。
会社員の話。
何も起こらないし、何も変わらない。
それが日常。
お題:喫煙・踏切・自称
まだ少し寒さの残る日。
俺は独り、煙草をふかしていた。
周りには誰もいない。
社内に残るのは、俺一人。
所謂、残業というヤツだ。
「はぁ〜」
周囲に誰もいない分、わざわざ喫煙所に行ったりする必要がないので、いいのだが。
(これで、何連勤だ?)
まあ、この会社は、ブラック企業というヤツで。
家に帰れないことなんでザラにあるのだ。
(お陰で何もかも無くしたな。)
一応、結婚はしていたのだ。
帰りが遅いのはあたりまえで、ろくに家に帰れないこともしばしば。
そうしているうち、妻とすれ違い、別れた。
幼い子供もいたが、親権がこちらにある訳もなく。
子供たちは、妻と共に出ていった。
(どこで間違えたかな…?)
なんて、らしくもないことを考えている間に、煙草はその背を限界まで、縮めていた。
(さて、さっさと終わらせるか…)
それからは、カタカタとキーを叩く音が響くだけだった。
どれくらいの時間がたったか。
やっと、仕事が終わった。
「っふー、、、」
ついため息が漏れる。
(何時だ……)
時計を見れば、いつの間にか日を跨いでいた。
遠くで、電車の踏切の音が鳴っていた。
始発か、それとももう何本も走っているのか。
(どうするかな……)
このまま、会社に泊まろうか―とも思ったが、明日が久しぶりの休みだったことを思い出す。
何を思ったのか、部長に休暇を言い与えられた。
自称平社員である俺に、休暇を与えるなんて、何かあったんだろうか。
(帰るか…)
とうとうクビかな―なんて思いながら、会社の外へと出る。
道を歩く人はまだ少ない。