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59   幸運が望んだ形でもたらされるとは限らない(後)

「――同胞達よ、ついにこの時が来た! 我らはこれより奪われた家族を奪い返す!!  涙に暮れた日もあった。怒りに打ち震えた日もあった。長く苦しい――日々であった。今日、この日、我らはこらえ続ける日々から解放される。……しかし、忘れてはならない。これは一時の夢だ。夢が終わった時、我らは再び長く苦しい日々へと戻るだろう。――それでも! 我らは闘うことを選んだ! 進めっ!! 全てを取り戻すために――っ!!!」

 ミルザムの(げき)に同胞達が雄叫びを上げて答えた。

 もちろん、自分もその中の一人だ。

 ここに集った同胞達は、普段、冒険者をしてる者ばかりだ。その中でも、潜入や諜報、逃走に長けた者を集めれるだけ集めた。

 唯一の例外は、指揮のために同行するミルザムくらいだろう。

 ……何でムフリッドのアホまでいるのかは疑問だけど。

「走るのだけは得意なんで!」

「へえ」

「何かそういう奴が必要らしいっす! きっと伝令役とかじゃないっすかね!」

「目的地とか忘れそうなアホに伝令役……?」

 ないな。

 絶対に、ない。

 ムフリッドに伝令役なんてさせたら、迷ってることにも気付かず走り回ったあげく敵に捕まって全部ゲロりかねない。良くても、目的地に着いたのに伝令の内容を忘れる、とかだろう。

 そして意気揚々とするムフリッドがミルザムに呼ばれて受け取った指示書は紙一枚だけだった。

 なお、ムフリッドは字が読めない。

(あね)さん、お願いしゃーっす!」

「何で自分に頼むんだよ……。まあいいけど……。えーっと、何々……『獣人の一人も捕まえられないなんてフォカッチャ王国軍は弛んでるな。トロニブッチャ王国軍に改名した方がいいんじゃないか。そうしたら名と実が一致するぞ』……? 何これ?」

「何かそれ参考に大声でバカにしながら走り回れって言われたっす!」

「あー……」

 つまり囮か。

 でもこれ、幼稚すぎないか? 本当に通じるのかな……。

「あと、『君が全力でバカにすれば敵は必ず動揺するはずだ』とも言われたっす!」

「……何かいい感じに言ってるが……、それって要するに、イライラさせろってことだよね……?」

 いやまあ確かにこのアホにバカにされたらムカつくだろうけど。

「にしても、『トロニブッチャ王国軍』って(笑)。マジウケるっすよね!」

 喋り方からしてすでにアホさ加減がにじみ出てるもんなー……。

 でも、なるべく秘密裏にやる作戦じゃなかったっけ?

 ……このアホが意図を理解してない可能性が出てきて、若干、不安になった自分は、ミルザムに確認することにした。

 同胞達を奪い返すために同胞が死んだら意味がない。それがたとえムフリッドのアホだとしても。ムカつくだけで死んでほしいわけじゃないから。ただムカつくだけで。

「――って言ってるんだが、本当にあのアホで大丈夫か、ミルザム?」

「むしろ奴のアホさ加減は才能ではないかな? 少なくとも今回においては」

「はあ? どういうこと?」

「実は奴に任せた撹乱作戦はザイン殿が発案者でね。巻き込んでおいて何もしないのは心苦しいと言って提案してくれたのだ。別に我らは巻き込まれたなどとは思っていないとも言ったのだが」

「あいつの考えた作戦か……」

「要は相手に対処を迫る作戦だな。ムフリッドにイラついて潰しに来るなら陽動として成功。陽動とみなして他を探そうとするなら本命へのすり替えで成功」

「しらみ潰しに来られたら?」

「その時は時間稼ぎとして成功だ」

「ってあいつが言ってたの?」

「いや、内容を聞いて我なりに分析した結果だよ。そしてこの作戦は如何に相手をイラつかせるかにかかっている。だからザイン殿も言っていたよ、『貴殿が知る中で最も頭の悪そうな者に任せろ。足が速ければなおいい』とね」

「アホなのもたまには役に立つってことか……」

 適材適所なんて言葉とムフリッドは無関係だって思ってたが、考える奴によってはそうでもないらしい。

 ザインザード・ブラッドハイド。

 ルサムカ村の件で奴隷狩りを皆殺しにしたことや、躊躇なく自分の心を折るような発言をしたことを考えると、かなりヤバい男だが、その智謀は本物だ。……いや、本音を言えば自分にはよくわからないが、あのミルザムが信用したんだからそうなんだろう。

 あれはザインザードが自分の前に再び現れた時のことだ――あのヤバい男は、望まない形で望外の幸運をもたらしたんだ。

「――は……? いやごめん、もう一回言ってくれる?」

「近々、ベーグル王国とフォカッチャ王国の間で戦争が起こる」

「――……うん、待って。ちょっと待って……、今、何から訊くか考えるから……」

 いやまあいきなりすぎて最初はわけわかんなかったけど……。

「……まず、何で戦争が起こるの?」

「直接的なきっかけはベーグル王国のオルシュテン伯爵が自死したことだ。これは獣人排斥派とでも呼ぶべき貴族達を非常に動揺させた。『次は自分の番ではないか?』とな。そこで貴族達は派の筆頭であるフルザキ公爵を頼った。あとは思想の極端化した少数派らしく、『ヤられる前にヤってしまえ』となるわけだ。とはいえ、当然、そのままでは勝てん。故に、獣人排斥派は思想的に近いフォカッチャ王国に助けを求めるだろうな」

「それで、戦争に……?」

 そんな、伯爵が一人死んだ程度のことで……?

 こう言っちゃなんだが、噂で聞く限り、オルシュテン伯はそう目立つ貴族じゃなかった。ベーグル王国とフォカッチャ王国、ベーグル王国とブリオッシュ王国とをそれぞれ結ぶ街道が交わる交通の要所を領地としてたが、あくまでそれだけだ。可もなく不可もなく、良い噂もあれば悪い噂もあって、同胞達に対しては寛容じゃなかったが、積極的に排斥しようともしてなかったと聞く。言ってしまえば中立のような立場だったって――

「んむ……我からもいくつか質問を良いかな?」

 ミルザムの声が聞こえ、自分は思索を中断した。

「構わんが?」

「オルシュテン伯爵が亡くなったことは我も聞いている。知っていればで構わないが、オルシュテン伯爵はなぜ自ら死を?」

「……まず前提となる話だが、オルシュテン伯爵は家族にすら秘密で何人もの違法奴隷を購入していた」

「何と……!」「はあ!?」

「発覚した経緯は省くが、騎士団によってこれが事実だと確認され、報告を受けた国王はオルシュテン伯爵に隠居を命じた。ここからは推測だが、違法奴隷の購入が事実だと確認された以上、当然、騎士団はその違法奴隷達がどうなったかも調べる。オルシュテン伯爵はそれを知られるかもしれないという恐怖に耐えられなかったんだろう。特に、家族にな」

「…………ちなみに、その違法奴隷達は……?」

「全員、死んでいた」

「やはり、か……」

「残っていたのは骨だけだったそうだ」

「な、に……!?」「っ!?」

「――しかも獣人の子どもばかりだったってよ……っ!!」

 吐き捨てるようにそう言ったのは大剣を背尾った青髪の男――マックスという名の元A級冒険者だった。

「それはっ――つまり……!!!」

「まあ――貴殿らの想像通りだろうな」

 あれほど怒りに打ち震えたことはない。

「――クソッ!! クソクソクソクソッッッッ!!!」

 何度も床に足を打ちつけ、それでも怒りが収まることはなかった。半月ほど経った今でも収まらない。いいや、収めちゃいけないんだ、絶対に。

 ミルザムも握った拳から血が流れるほど怒りに打ち震えてたが、それでも「おのれ…………っ!!!」って唸っただけで、三十秒後には次の問いを発してたんだから大したもんだよ。

「……つまり、オルシュテン伯爵は我らの敵だったわけか。しかもその死が他の連中を動揺させるほどの中心人物だったと……」

「突然、自死したように見えたこと――特に、親獣人派のジェシェフ伯爵が訪問した直後だったことが拍車をかけた。本来ならば、隠居させた上で病死に見せかけて暗殺し、そのあとで事実を公表するつもりだったんだろうが、オルシュテン伯爵の闇が想像以上に深過ぎたわけだ」

「んむ……。……それで、ザイン殿は連中が反乱を起こすと考えているようだが、なぜ独立ではなく反乱なのだ? フルザキ公爵領に加えていくつかの貴族領が集まるならば、充分、国として成り立つはず。フォカッチャ王国に助力を求めるならば、独立の方が実現の見込みは高いと思うが」

「オスカル第二王子の存在だ」

「オスカル王子……? っ! そうか、オスカル王子の実母であるアリアンナ第二王妃はフォカッチャ王国の侯爵家から嫁いできたのだったな。ならば……なるほど、オスカル王子を担げばフォカッチャ王国から得られるのは『助力』ではなく『協力』。しかも玉座の簒奪すら可能か」

「思想的に近い者が王になればいろいろとやりやすいだろうな。それこそ目が眩む程度には」

「「…………」」

「オスカル王子を玉座に就けること自体は前々から狙っていたことだろう。だがそれはあくまで政治的闘争の結果だ。殺し合いではない。……あるいは、獣人排斥派からすれば、オルシュテン伯爵の自死は、親獣人派が先に暗黙のルールを破ったように見えたのかもしれんな」

 戦争が起こる理由はわかった。

 フォカッチャ王国が勝てば同胞達が大勢苦しむことになることも。

 確かに獣人にとっては死活問題だ。

 でも、

「――何でそれを自分達に教えるんだ? いいや、わかりきってるか……。お前は、自分達に何をしてほしいんだ?」

 ここはベーグル王国じゃない、ブリオッシュ王国だ。

 確かに、ベーグル王国はブリオッシュ王国と共通点が多いし、人々の考え方も似てる。違いと言えば内陸か沿岸かくらいだろう。

 だが、ブリオッシュ王国は東のザルツシュタンゲン王国と長年、敵対関係にある。ベーグル王国とフォカッチャ王国の戦争にブリオッシュ王国の獣人が関われば、ブリオッシュ王国全体を巻き込みかねない。そうなればもう泥沼だ。

 最北の大国や、それを盾のように守るピロシキ王国は「我、関せず」を貫くだろうが、ザルツシュタンゲン王国は隙と見て確実に侵攻してくる。

 北の隣国、グリッシーニ王国も、フォカッチャ王国と同盟を結んでる以上、当然、黙ってないだろうし、北東のプレッツェル王国はその二国の友好国だ、参戦してくる可能性が高い。

 唯一、南東のスコーン大公国はどう出てくるかわからないが、北方小国家群が滅茶苦茶になるのは火を見るよりも明らかだ。

 だから戦争に協力はできない。

 ……確かに、自分はベーグル王国のルサムカ村にいた。でもそれは、そこが同胞達の村だったからだ。ベーグル王国だったからじゃない。同胞達を快く受け入れてくれた人達を見殺しにするのは気が引けるけど――

「――自分達にできるのは、ベーグル王国に住む近隣の同胞達に避難するよう言うことくらいだ。それで、どれだけの同胞達が避難してくれるか……。きっと、自分達は軽蔑される。もしかしたら殴られるかも。そして、多くの同胞達が残って戦うんだ……」

「「「………………」」」

 あの時、三人は黙ってた。

「――だって、獣人は同胞を見捨てないんだ。絶対に見捨てないんだ……! 同じ国に住む人々(同胞達)を――見捨てられないんだ!!」

 ミルザムも。ザインザードも。マックスも。

 黙って自分の言葉を聞いてた。

「どうすればいい――?」

 どうすればいい!?

 事態はもう動き出してる。

 戦争は止めれない。

 フォカッチャ王国は必ずグリッシーニ王国にも協力を求める。

 そしてグリッシーニ王国は必ず参戦する。

 そうなればベーグル王国との戦力差は倍以上だ。

 ブリオッシュ王国は国内の通過を認めないだろうが、それでもベーグル王国は反乱軍を抑え込みながらフォカッチャ・グリッシーニ連合軍とも戦わなきゃならない。

 同胞達が参戦しても、敗北は必至だ。

 なのに、自分達は手出しできない!

 こんなにも近くにいるのに!

 国が違うというただそれだけの壁がとてつもなく分厚い……!!

「――なあ、ザインザード……、お前は同胞達を救ってくれた。なら当然、ベーグル王国側だよな!? ベーグル王国を勝たせるために来たんだよな!? ――教えてくれっ、自分達は何をしたらいい? どうすれば助けられる!? どうすれば――」

 ――あの国の優しい人々を――……!!

「戦争には参加するな」

「っんなことはわかって――!」

「そして同胞達を救いに行け」

「――……。え……???」

「これからフォカッチャ王国は戦争準備に入る。その間、人と物の出入りは非常に激しい。それこそ、他のことには手が回らず、どんな奴が出て入ったか一々確認してられんほどにな」

「えっと……つまり、フォカッチャ王国に行けってこと?」

「それが理解できたならすぐにでも動け。猶予は半月しかない。集めるべきは潜入、諜報、逃走に長けた者だ」

「ラサラス君、君はブリオッシュ王国西部のみならず、ベーグル王国北東部にも詳しい者の一人だ。そして、いつも各地を周っていて、交友関係が非常に広い。ザイン殿は何よりもそういう者が必要だと言った。だから君を呼んだ。……ザイン殿の話を聞いて、我は君を呼んで正解だったと確信したよ。何せ君は、一度、フォカッチャ王国の奴隷狩りに攫われながらも、懸命に生きて帰ってきた唯一の同胞だから」

 だから今度は、全てを奪い返しに行こう。




 フォカッチャ王国の王都フォカンツァは、もうすぐ本格的な夏が始まるっていうのに、未だ少し肌寒かった。

 にもかかわらず、門前には食料や武器を積んだ馬車がズラリと並び、王都の中へと入る順番待ち中だ。

 ザインザードの言った通り、大々的に戦争の準備をしてるらしい。

 自分達もその馬車の一つの中にいる。

「――次!」

 馬車がまた少し動く。

 これだけ並んでるにもかかわらず、検問はしっかりと行われてる。

 戦争準備中だからこそ、密偵や密書を警戒するらしい。

 だが、ここまでの道中は呆気ないほどに楽だった。

 唯一、大変だったのは、ブリオッシュ王国からフォカッチャ王国へ国境を越える時だ。

 国境付近は森だから、奴隷狩り共が使ってた隠し道を利用してフォカッチャ王国のキコリッティ侯爵領まで行く予定だったが、偵察で国境付近に見張りがいることがわかり、急遽、生い茂る木々の中を慎重に進む破目になった。

 そして森を抜けた先で、ザインザードが用意した移動手段と合流……したんだけど……。

「――次! ん? ああ……誰かと思えばあんたか」

「毎度どうもでございます」

「今回は何台だ?」

「二台です」

「どっちも商品か?」

「ええ、はい」

「まあまあな数だな。一応、中を見せてもらうぞ」

「どうぞどうぞ」

 幌の外からそんな声が聞こえ、自分達が乗る馬車に陽の光が差し込む。

「こりゃまた強そうなのばかり。よく集めたな……」

 幕をめくった衛兵の男はそう呟くと、自分達の人数を数え始めた。だが中には入ってこない。「獣臭くてかなわんな!」なんて鼻をつまみながらわざと聞こえるように言ってたが、ムフリッドのアホに睨まれただけで慌てて数え終わらせたのを見れば、ビビってるだけなのは明らかだ。

 ったく、こっちは檻の中だっていうのに。

 そう。ザインザードが用意した移動手段とは奴隷商人の馬車だった。

 最初に檻付きの馬車を見た時は何かの間違いだって思ったが、そのそばに大剣を背負った青髪の男が立ってたらもう受け入れるしかなかった。

 ――最も疑われない方法は相手に『ああ、またか』と思わせることだ――

 ザインザードからの伝言はそれだけだった。

 確かに、傭兵でも私兵でも、出稼ぎの労働者でも、獣人ってバレれば疑われる。

 理屈はわかるし、使えるって言われれば、悩んだ末にたぶん自分達もそれを選ぶとは思う。

 でもまさかフォカッチャ王国の奴隷商人を味方につけるとは思わないじゃないか……。

 マックスに訊いても「あー……予想はつくが言えねえ」としか返ってこなかったし。

「――到着でございます。今、開けますね」

 王都に入ってからしばらく経って、自分達はようやく檻の外へ出られた。

「あぁ~~~~……。マジ体が凝ったっす……」

「ムフリッド、ここはまだ外に声が漏れる。あまり大きな声は出すなよ」

「あ、へい、姐さん」

 とはいえ、門前の行列に並んでからここまでの長時間、命令通り檻に入って一言も喋らなかったんだ、ムフリッドのアホにしては頑張った方かもしれない。褒めてはやんないけど。ムカつくから。

 内装や屋根の形を見る限り、王都での自分達の隠れ家は巨大なテントのようだった。

 ザインザードを「閣下」と呼ぶ奴隷商人のオッサンが言うには、それに隣接していくつかのテントがあるらしい。

「手下共が寝泊まりしていたテントは中を全て新品に変えてあります。皆様全員が充分に休める広さです。お得意様を応接していたテントは会議室として使えるようにしてあります。その奥にあるわたくしめが寝ているテントに武器を隠してあります。今いる大テントには出さない商品を置いていたテントですが、檻を横倒しに積み上げて矢止めとして使えるようにしてあります」

 本当に、いったい、何があったらフォカッチャ王国の奴隷商人が獣人に対してこんなに腰が低くなるのやら。

「それから、表には留守中の札を掛けてありますので、数日は誤魔化せるかと」

「んむ……では、皆の者、疲れているところをすまないが、早速、会議を開く。奥に集まってくれ」

 ミルザムの呼びかけに、同胞達が疲れをにじませながらも力強く返事をする。

 おそらく、今夜のうちから、囚われた同胞達の居場所を確認してくことになるだろう。

 奴隷狩りに攫われ、違法奴隷にされた同胞達を救うこの作戦は、フォカッチャ王国の南東部から中央部にある主要都市や鉱山全てでほぼ同時に行われる。

 ここ王都フォカンツァは襲撃予定地の中で最も北にあり、つまりは最も帰還が困難でもある。だが、王都こそ、最も多くの同胞達が囚われてる場所だ。

 ザインザードは、自分達がこの救出作戦を成功させれば、フォカッチャ王国に経済的な大ダメージを与えられるって言った。

 そのザインザードはここにはいない。

 フォカッチャ王国とグリッシーニ王国の同盟関係にヒビを入れるため、フォカッチャ王国東部の国境付近で何やら動いてるらしい。

 帰還時には多少手助けできそうだ、とも言ってたってマックスから聞いたが……、どこまで当てにできるものやら。

 ともかく、奴隷商人の言うように、王都で秘密裏に動ける時間は数日しかない。時間が惜しい。

 なるべく多く――なんて言わない。必ず、全ての同胞達を救い出すんだ。

 そして、ブリオッシュ王国のラミオン辺境伯領にあるあの路地裏の酒場で、もっと多くの同胞達と祝杯を挙げるんだ。

 そんな決心を胸に――自分は、テントの奥へと向かった。




「――仕掛けは?」

「上々かと。何人かわざと見逃しやしたし、困惑しながらも命令に従ってる印象を植え付けやしたから」

「そうか……。では、キコリッティ侯爵領に戻る。そろそろ向こうも動く頃だしな」


 細かい話は活動報告にて。

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