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最悪の始まり


 フェイリスのことを説明しようとする前に糾弾される。


「スミス、どうして魔物と仲良く話しているの!」


 それはバスタオルを巻いただけのジェシカだった。甲高い声で興奮しているのがわかる。


「成り行きというか、ちゃんと説明するから、聞いて欲しい」


「あんた、あたしの時計盗んだでしょ。信じられない。何? 逆恨み? それで魔物とつるんで火をつけたわけ?」


 聴衆の前で、針のむしろだ。時計はあの二人に渡してここにはない。けど、それは今関係ないじゃないか。


「ねえ、クランツもなんとか言ってよ。これはあたしたちパーティーの問題よ」


 隣に突っ立っていたパンツ一丁のクランツが追従するような、笑みを浮かべる。


「うん、そうだな。スミス、ちゃんと説明しろよな」


 だから話させてくれよ。でも獣王の証とか、女王個体が女の子になったとか信じてくれるだろうか。自信がなくなってきた。口を閉ざしていると、警官がやってきた。俺はその前にジェシカに駆け寄る。


「時計は今は手元にないんだ。てもいつか……」


 頬に鋭い痛みが走る。ジェシカに頬を張られた。


「最低。あんた気持ち悪いわ」


 ジェシカの顔を見ないで済むように俺は閃光弾で視界を塞いだ。混乱に乗じて広場を離れる。


 皆、火消しに必死で俺に目をくれる奴はいない。門まではすぐに逃げられた。


 アーチ型の大門では仲間だった忍が立ち塞がる。黒い頭巾で表情はわからない。


「お前も俺を捕まえに来たのか」


「行け」


 忍が顎をしゃくる。足下には門番が倒れていた。


「どういうつもりだ」


「仲間を送るのに理由が必要か。持って行け、餞別だ」


 袋には路銀が詰まっていた。


「お前そんなキャラだっけ」


「貸しだ。お主ならいつか倍にできる。ちゃんと返せよ」


 なんにしろありがたかった。俺は忍と別れ、森へとわけいった。


 道を塞ぐ岩の上にフェイリスが座っていた。


「お前のせいで散々だ。とりかえしがつかない。終わりだ」


 頭を抱える俺の前に、フェイリスが降りてくる。


「終わりじゃないです。ここから始めませんか、わたしと」


「お前に何ができるんだよ! 物を壊すだけじゃないか。何ができるんだよ、教えてくれよ」


 がくがくと体を揺すっても、フェイリスは目をそらさない。


「わたしもたくさん仲間を失いました。主の言う通り、壊すだけかもしれない。でもさっきの人が言ってましたよね。借りを返せって。わたしも主に恩をお返ししたい。てゆーか、つがいになりませんか」


 急になれなれしくなったな。アホらしくなる。


「勝手にしろ。あとつがいにはならん」


「えー? この流れだといけると思ったんですが」


 どんな流れだよ。最悪な旅が始まる。



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