転生直後のハプニング!!!
光が治まる。不安も期待も半々くらいで、おっかなびっくりしながら、目を開ける。
「へ?」
目には、沢山の人が行き来してる様が映っていた。ここは、街の大通りのような場所らしく人々の喧騒と馬車の音が耳朶を打つ。
行き交う人々の服装は、僕の見覚えのないものばかりだった。どうやら、布で作られたものらしい。
「この展開は予想してなかったで…す……っ!?」
普通は森とか平原とかだと思いますが…なんて呟いた言葉に、強烈な違和感を抱く。なんだか、凄く声が高い。それに、少し聞き覚えも…。
嫌な予感がして自分の体を見下ろす。
「こ…れは、あの子、の……」
見下ろした先にあった見覚えのある体、二人称視点で見た、という枕詞は付くが。
ほっそりとした白い腕と脚。つるぺたすとーんという擬音がつきそうな幼児体型。横に見えた黒髪は、きっと腰当たりまで伸びている。あの少女は黒いワンピースを着ていたが、僕は対照的に白いワンピースだった。
……何故素足なんだろうな?嫌、そもそもなんで僕があの子の、女の子の体に…?
(私のじゃ、ないよ)
「……!」
なんだろう、予想外の展開が起こりすぎで頭がおかしくなりそうだ。
(それは、私の体を元にして創った。自信作。)
そのどこか誇らしげな声は、何か言ってやろうという思いを削り取っていった。
「なんだか、出鼻を挫かれた気分ですが…」
(……?)
まぁ仕方ないことと割り切るしかないのだろう。自分の体は行方知れずだったのだしあのままこっちに来てないだけ有難いと思うべきだ。心の整理は着いた。とは、とても言い難いが。
「さて、これからどうしましょうか。」
顎に手を当て独り言ちる。こっちの常識は知らないし。通貨なんて持ってない。そもそも、僕の言葉は彼ら、彼女らに通じるのだろうか。
(それは大丈夫。私の創った体は、こちらの世界に合わせてあるから。あなたの元いた世界の言葉もこっちの言葉も、翻訳できる。)
どうやら言葉は問題ないらしい。そこはホッとするが、別の問題もある。
今の僕の状況を表すと『ずっと大通りで突っ立ってる素足の幼女』である。いい加減視線が痛い。やめろ!そんな目で僕を見るんじゃない、こっちは驚きから回復してないんだぞ…!
「なぁ君、大丈夫かい?」
後ろから肩に手を置かれた。堅い金属の感触。何度目かの驚愕に、少しうんざりしながら振り返る。
「近くに君の親はいるかい?」
「あ"っ」
如何にも衛兵でございという格好をした2人組がこちらを見ていた。あーこれやばいやつですね!?
「見たところ裸足だし、何かあったのかな」
優しそうなのだが、こちらとして怖すぎである。親なんていない!といいたいが、言えない。だっていないですし。
「あ、ぁあ…えっと……」
「近くにはいないのかな。じゃあ君の名前は?」
「な、まえ…ですか……」
前世のことは、自分が男だってことと一般常識以外欠落してる。今名前を偽るなんて回る頭はしてない。
沈黙した少女を見て、黙っていた片方が声を発する。
「おい、こいつの黒髪、黒目…似てないか」
「…まさか」
声をかけられた方は否定するが、それでも少し身構えていた。
一方、もう1人は完全に警戒している。
カチャ、という金属の触れ合う音が聞こえ、少女が、ちらと衛兵の手元を見ると、剣の柄に手が掛けられていた。
「はぇ?え、ちょっと待って……」
「貴様、もしや───」
な、何かマズイことになってないですか!?どうしよう…!えっと、えぇっと……!
(……消し飛ばす…?)
(それ1番ダメなやつです!!)
混乱した思考では、マトモな打開策は見つけられない。焦っていると自分の後ろから声がした。
「───あらぁ、ここにいたのね。ずっと探してたんだから。」
すっ、と手を引かれる。後ろから僕を抱きしめて、声の主は続ける。
「ごめんなさいねぇ衛兵さん、少し目を話したらはぐれてしまって…」
「……」
女性の言葉に僕に1番に声をかけた衛兵は身構えていた体を戻し、まだ柄から手を離していないもう1人の肩を叩いた。
「いや、見つかったのならなにより。これからは注意してください。」
そう言って2人は立ち去っていく。
暫くするとお姉さんは僕の手を握って歩き出した。
横目で見る、お姉さんの姿。ゆるふわショートの赤髪に糸目のお姉さん。うん。そんな感じである。なお、騎士と言えるくらいには鎧を装備していて、女騎士という言葉がぴったりだった。
けれど、あんまり迷惑かけちゃダメだろうし…
「あ、ありがとうございました。ご迷惑おかけして」
「お礼はありがたいけれど、まだよ。きっと使い魔につけられてるから、私の泊まってる宿まで着いてきて。」
あーもういい。今日はもうこれ以上新しい事を見たくないし聞きたくないんだ。使い魔なんて知らない。黙ってついて行こう。
暫く歩いてると不意にお姉さんの足が止まった。
「ここが私の泊まってる宿『やかましいシルフ亭』よ。」
この作品は門弟くんと大佐さんの2人で書いていますが、門弟くんは何もしていないです。by門弟