プロローグ 「”自称”魔王の異世界日常」
朝、俺が目を覚ますと、目の前にはキレイな顔が。俺が目を覚ましたことに気がつくと、笑顔で挨拶してきた。
「おはようございます、マオ様。今日も警備は万全です」
「いや、俺は魔王だから。名前はマオだけど間違えてるから。あとなんで布団の中にいるの? おはよう」
自称忠実な部下であり、自称妻でもある乙女思考サキュバスに挨拶をする。
ついでに胸を揉もうとしたら、顔を赤くして逃げていった。
身支度を済ませ、町に出るとゴツイ髭面の男に呼び止められた。走ってきたのか息を切らせ、力強く俺の肩を掴むと、顔を近づける。
「マオ様! どうか、どうか! ワシが妻に秘密で異種族メイド喫茶に通っていることは秘密に!」
「それはすでに奥さんも知ってるから安心しろ。あと、俺は魔王だ」
メイド大好きな居酒屋の親父に返事をする。親父は顔を青ざめが、……まだバレていないと思ってたのか。
フラフラと歩いていく親父を見送ると、行きつけの店で昼食を食べる。すると、小さな緑色の人影が近づいてきた。
「マオの旦那! 夢だった自分の店をとうとう開くことができやした! ありがとうございます!」
「おめでとう、あとで顔出すけど食えるものを出せよ? そして俺は魔王だ」
先日相談に来たマッドコックのゴブリンと約束する。旦那の毒舌最高ですぜ、と笑顔で帰るゴブリンを見送った。
店を出て道端で猫と遊んでいると、剣を携えたスレンダーな体型の女性が現れた。
「人を騙し、弄ぶマオウめ! 今日こそお前を倒して見せる!」
「おねしょ癖は治ったか? 俺を倒す前に治してから来いよ。あと魔王って呼んでくれてありがとな」
毎日戦いを挑みに来る自称勇者を適当にあしらう。いつも弄られに来てくれて、じゃない。魔王と呼んでくれてありがとう。発音は違う気がするが。
涙目で走っていく自称勇者を見ながら俺は、宙に浮く独特な模様を持つ目玉そのものであり、魔眼の使い魔アイに聞く。
「女神に言われたように、魔王になろうとしているんだが、どこから間違ったかな?」
「最初からですね」
今日ものんびり、誰かを戦う(からかう)日々。
そんな名前はマオであり、マオ様と呼ばれる、自称魔王の始まりはある日のことだった。