俺は悔しい、だから困らせてやる
先生に目をつけられたことはあるかい?
俺は悲しいことにある。
あれは、小学校の頃だな。
まだ、先生を信じていた頃だ。あの頃は・・・
運動会の季節に入ると先生たちは忙しそうだった。だいたい、5月か6月ぐらいだった。
この時期は生きている気がしない。言葉で表すと【憂鬱】だ。
毎日運動会のために夜遅くまで先生が働いているのを知らなかった。だからと言って、小学生の俺が悪いということもなかったと思う。
俺は、良い子であろうとした。
そう、先生にとって良い子に見えるようにした。
小さい頃は、自分に嘘をつくのは苦ではなかった。それでも、許せないことぐらいある。
先生は、運動会の前日のダンス練習で怒った。正直に言ってしまうと、意味が分からなかった。先生は、前日までダンス練習に介入して来なかったのにいきなり怒ったからだ。「やる気あるのか?」と、とても大きい声で怒った。
ダンス練習の前の時間に歩きながら、憂鬱だとため息ついて姿を俺は見ていた。
「何処の口からそんな言葉出てくるんだよ」思わず小声で言ってしまうぐらい動揺していたと思う。
この後、当然の如く先生に聞かれていた。
正直、ばれていないと思って嘘をついたが相手は人生経験豊富な大人だ。嘘で勝てる訳なく余裕でばれた。悔しさの余り、次のテストで良い子であることをやめた。
テストの用紙に先生の似顔絵を描いて、横に消えてなくなれって書いた。
バレた。
バレないとは思って無かったが悔しかった。
今度のテストは更に困らせてやろうと思った。
先生の似顔絵を描いて先生のコンプレックスを刺激してやろうと思った。だから、頭の辺りに矢印書いてクリ〇ンって書いた。
バレた。
校長にチクられた。
悔しかった。
許せなかった。
泣いた。
だから、今度こそは先生を悔しがらせてやろうと思った。
テストの答案にポエムを書いた。
『雨に濡れた髪がー 太陽に照らされーてぇー クラスを照らしてくれるー』
『校長が遣わした クラスの顔は 太陽 太陽 今 光輝くよー』
『ハゲー はげー ハゲー はぁげー それは太陽ー』
さすがに許せなかったのか親を呼ばれた。悔しい。
先生に勝負を挑むと簡単に敗北した。
悔しかった。
そんなことばっかりしていると、テストの点数が大幅に下がってしまった。そして、貴重な夏休みに呼び出しくらった。
「皆は明日から夏休みだ」と先生が言うと俺も含めてみんな喜んだ。とても嬉しかった。しかし、そう上手く行かなかった。先生いや、ハゲは言った。「しかし、残念なことに一人だけ学校に来て先生と勉強だ!」と先生が言った瞬間俺は教室を出て逃げたが捕まった。
友達と遊べず苦しかった。
一人きりの授業で寂しかった。
しかし、先生について知れた。
先生には、子供が居たことを聞いた。
子供が交通事故で、死んだことを聞いた。
どう反応していいか分からなかった。
ただ、その日以来先生にハゲと言うのは止めた。
時が流れ卒業式・・・
俺は、泣いた。
何で泣いたのか分からなかった。
ただ、寂しいと思った。先生が中学校にいないことが。
よく見たら、先生も泣いていた。
教室に戻った時に聞いてみた。
「先生何で泣いてたの?」
すぐ、答えてくれた。
「嬉しいからだ」
思っていた回答とは違った。
寂しいと言って欲しかった。
そう上手く行かないかった。
先生にはやっぱり勝てなかった。
「先生、俺は寂しいよ」
そう言ったら、先生が「俺は、お前の成長が一番うれしかった」と言って泣いていた。
だから、最後に言ってやった。
「アート〇イチャーに行けよ先生」
そしたら、「お前の卒業やっぱり無しだ」と泣きながら言われた。