不可抗力なんだ!!
「ごめん、今すごく理解に苦しんでる。え、なに? BL? え?」
突然の彼女の発言に困惑するしかない俺。
「えっと、だから私とBLについて語り合わないかなと思って」
「なぜに?」
「だって、高島君って腐ってるんだよね?」
「はい?」
なんか突然美少女にディスられたんですけど!?
え、なに? 俺実は知らないうちに生ゴミと化してたの?
「あ、物理的な意味じゃなくて!! つまり、腐男子、BLが好きな男の子なんだよね、ってこと」
「え? 違うけど?」
「え!?」
いや、こっちが『え?』なんですけど!! どこ情報ですかそれ。情報リテラシーちゃんとしてます?
「でもでも、昨日リンリン買ってたよね?」
でもでも、って可愛い!!
って、ん? リンリン?
……あ。
「え、もしかして昨日の黒女って鹿島さん?」
「く、黒女って…。まあでもそうだよ。昨日高島くんと同じタイミングでリンリンを手に取った女の人は私。だからてっきり高島君もBLが好きなのかと思ったんだけど」
「まじか」
まさか学園の女神様が腐女子だったなんて。これはこの学校を揺るがすビッグニュースじゃねえか?
「ね? 好きなんだよね? BL。自分で買いに行くくらいだもんね」
ぐいっと距離を詰めてくる学園の女神様。
「いや、俺はいも」
妹の代わりに買いに行った、と口に出そうとして俺は思いとどまる。
ちょっと待てよ? これは女神様とお近づきになれるチャンスなのではないか? と俺は邪な考えを抱く。
ここで、そうだ俺は腐男子だと答え、BLについて語り合えば女神様と仲良くなれ、ついには......。
いや、ダメだ!! ブンブン、俺の中の俺が大きく首を振る。そんな嘘をついてまで学園の女神様に近づこうなんて男のすることじゃない。うん、ちゃんと本当のことを言おう。
「ごめん、実は」
真実を告げようとする俺に女神様は口を挟む。
「もしかして私の勘違いだったなんてことはないよね? そうだったら私恥ずかしくて死んじゃうよ?」
そうやって不安そうに目をウルウルさせる女神様に。
俺は。
「いや実はそうなんだよ!! 俺めっちゃBL好きなんだよね!! 最高だよね男同士の恋愛!! もうキュンキュンが止まんないよね!!」
大嘘をついた。
仕方ないんだこれは!!
美少女が目の前で目をウルウルさせてるせいなんだ!!
違うなんて言えるわけがないだろ!!
「そうなんだ!! 良かったーー。私の周りにはそういう子いないからさ。高島君がいてほんと嬉しいんだ。今日は用事があって無理なんだけどまた明日からじゃんじゃん語り合おうね!!」
笑顔で微笑みかけて来る女神様。神々しい!!
「う、うん!!」
「じゃあ、連絡先交換しよ?」
「え?」
まじすか?
「だめ?」
「いやいや全然だめじゃないよ!!」
むしろこちらからお願いするぐらいだよ!!
「ほんと!? 良かった、嬉しい!!」
そうして俺は初めて女子の連絡先というものを交換した。
初めてが学園の女神様とか最高かよ。
「じゃ、またね、高島君!!」
笑顔で手を振り、彼女は去って行った。
そして、一人残された俺。
「どうすっかな」
よし、とりあえず皐様に相談しよう、そうしよう。