第1話
「おしまい。」
そう言って、僕は絵本を閉じた。
狭い部屋で同じベッドに横になり、小さなランプのあかりを頼りに、毎日一冊だけ一緒に絵本を読む。読んだ後は、どちらからともなく疲れ果てて眠るまで、いろんなことを喋る。たとえば、とてもまずいノグの実を美味しく食べるにはどうするかとか、新しい星座を作るならどんな星座を作るとか。そんなどうでもいい話。これが僕ら双子の夜の日課だ。
すかさず、弟が口を開く。
「ライリー、僕らもカストルとポルックスみたいに、ずっと一緒にいようね。」
僕と同じ顔が、屈託のない笑顔でこちらを向く。
あまりにも真っ直ぐな瞳に、一瞬、ほんの一瞬だけ言葉に詰まった。
「うん、そうだね、リアム。」
目の前の顔をお手本に、笑顔を作る。うまく笑えているだろうか。
「なに、どしたの、元気ない?」
さすがはもう一人の僕。すぐに感づかれてしまった。
「実は少し頭が痛いんだよね。でも大丈夫だよ、気にしないで。」
「えっ、大変。じゃあ今日は早く寝よう。」
とても困ったような、それでいて優しい顔をする。ごめん、リア。これは嘘なんだ。でも、知られるわけにはいかない。これだけは、君にも言えない。
「うん、ごめんね。」
「謝ることなんてないよ。また明日、たくさん喋ろう。おやすみ。」
「おやすみ。」
リアがランプの炎めがけてふっと息を吹くと、部屋が真っ暗になった。もぞもぞと毛布に潜り込んできて、ぴとっとくっつく。10歳の子供が2人寝転ぶにしては少し狭い。夏だとこの狭いひとつだけのベッドを恨むが、肌寒いこの冬の季節はちょうどいい。
お互い、物足りなくてしばらく寝付けなかったみたいだけれど、気がつくとぐっすり眠っていた。




