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【読み物】マリー・パスファインダーの言い訳 通貨の話

 同じ街で作られた、同じ大きさで同じ刻印の金貨が6枚。

 これを3枚ずつに分けて天秤に載せ、持ち上げる。

 天秤はだらりと片側に傾いた。


「どうするの? こんなの」

「ちゃんと分けてるから、混ぜないでね」


 船の物置の片隅にある小さな机は、アレクの仕事場である。ここはいつも綺麗に整頓されていて、壁に提げられたたくさんの小袋には、たくさんのおもりや硬貨が入っている。

 それから、老サウロからアレクへと受け継がれたノート。これは様々な硬貨の発行者、外見や年代、重量と純度が記録された門外不出の資料らしい。


 我々海洋商人は様々な国で取り引きをするので、様々な通貨を扱う。私は自分の頭の中ではアイビス王国発行の金貨に換算して、例えば代金は金貨40枚、などと考えるようにしている。

 何故そんな事が出来るのかというと、アレクが全部計算して教えてくれるからだ。


「この……オリーブ油の売り上げは、金貨40枚分、というわけね?」

「そう。アントワーヌ王金貨でだいたい40枚分って事。実際に受け取ったのはサラン朝アスリス王金貨17枚とバトラ市銀貨35枚」


 私は聞きたいから聞いているし、アレクは優しいから教えてくれるが、多分私は黙るか、どこかへ行った方がいいのだと思う。アレクは今、多種多様な金貨や証券の価値をすり合わせて支払い用や貯蓄用に分ける複雑な計算をしている。


 しかし……同じ街で作られた同じ大きさで同じ刻印の重さの違う金貨。こんな物まで混じっているとなると、この仕事はどれだけ気を遣う物になるのだろう。


 私は一心不乱に計算を続けるアレクの顔を、下から覗き込む。


「えっと、船長……時間があるなら……積荷のバナナにシールを貼る仕事を御願い出来ないかな?」

「バナナにシール?」

「そう、バナナ一房ごとに一枚だけシールを貼るんだ、とても大切な仕事だから船長にしか頼めないよ」

「そうなの……? 解った! 私に任せて!」


 私は荷室へと走る。アレクにはアレクの、私には私の仕事があるのだ。

※さすがにこの世界にシールはありません

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