【資料】帆船のあれ、何ていうんだっけー?
表題の通りです……今回は物語に出て来る帆船の部品の名前を、CGを添えて解説させていただきたいと思います。この企画は前にもやってるんですけど、もう少し解りやすく出来ればと思いまして……それでわかりやすくなるとは限らないのですが。
尚作者は海洋関係の学校に通った事も海での仕事をした事もない、船舶関係の免許もないしもちろん船なんか持ってない、ただ海洋小説を読んだ事があるだけの素人でございます。間違いも色々あると思いますので、話半分くらいでご覧いただけたら幸いです。
今回はこちらの3隻のシップモデルを使ってご説明させていただきたいと思います。これらのモデルはDaz 3Dで販売されているものであり、私の創作物ではありません。
一番手前に居るのがバルシャ船リトルマリー号に近い物になります。甲板部分の長さは縦18m、幅は最大で4m程です。
真ん中がスループ艦です、フォルコン号に近い物ですが細部のデザインは違います、甲板長は24mです。
一番向こうはコルベット艦です、作中の船ですとアキュラ号やグレイウルフ号に相当します、甲板長は26m程です。
バルシャ船リトルマリー号に近い船から。ボートに帆を立てただけみたいな船ですね……私の頭の中のリトルマリー号は、これに船尾楼と檣楼をつけた船というイメージです……この「船尾楼」と「檣楼」というのも後でご説明させていただきます。(びくびく)
帆柱から説明させていただきます。
マストはこの、帆船に立っている柱ですね。本来は赤い枠で囲った「帆柱」の事を「マスト」と呼ぶのだと思うのですが、黄色い枠で囲った一つの帆全体の事を広い意味で言う場合もあります。
ともあれ、水夫はいつでもこれに登れないといけないそうで。
赤枠の所の、いかにも帆船によくありそうな縄梯子のようなもの、これが静索となります、水夫がマストへの上り下りに使うだけでなく、マストを船体の左右から支え補強する物になります。
この梯子の横糸をラットラインと呼ぶのですが、その間隔は長ければ長い程男らしいのだとか。大きなお世話ですね。
マストの根元に行きますと、他にもたくさんの索が下がっています……(帆船ではそれぞれの索には全部別々の名前がついてるんですけど、そこまでは御勘弁いただきたい)これらは船の操作に使われるロープ、動索です。
索には大きく分けて「静索」と「動索」があります、静索にはさっき出た「シュラウド」の他、「ステイ」などがあります(後述)が、いずれも「動かない、動かさないロープ」になります。船の強度の補強や、作業の足場に使うロープです。
静索はまあ、素人が触ってもいいんです。自動車で言えば手摺りやシートです。
動索はいけません、ペダルやハンドルです、変な事をすると最悪船が転覆します。
動索を使うと甲板から帆を操作出来ます、これは前のステイに取り付けられた三角帆、ステイスルを上げ下げする為のロープのようです。
色んな所に滑車がついている事に気づかれたでしょうか、帆船にはたくさんの滑車が使われています、シュラウドを引き締める為の物、動索を動かす為の物、荷物を吊り上げる為の物、そんな滑車にもそれぞれ役割別に固有の名前がついているのですが、総称として「滑車」というものがあります。
この黄色で囲まれたロープは「支索」です、静索の一種でマストを前後方向から補強する役目の他、この写真のように帆を張る為の支柱の役を兼ねていたりします。
この帆の名前はステイスル、支索に掲げる帆だからステイスルです。
支索はバウスプリットからマストへ、またマストからマストへ張られたりしています。この辺りはまた後程ご覧に入れます。
マストの上に参ります。赤線部分、帆をぶら下げ、張る為の横に渡された柱が「帆桁」です。ヤードはロープでマストから吊るされています、ロープが切れたり切られたりしたら丸ごと落ちて来ます、危険ですね。
次に黄線部分、ヤードの両端に取り付けられたロープがブレースです、主にヤードの向きを変え効率的に風を受け推進力を高める為に使います。後はヒープツーの時とか……(ゴニョゴニョ)……これも、動索です。
先ほどのステイスルについていたような帆を上げ下げする動索を「リフト」、帆桁の転回と固定に使う動索を「転桁索」と言います。
マリーが触ったらだめなやつです、こんなものを素人が勝手にいじっては大変です、まあ触ってますけど、
次に赤枠部分の、船首についていて、多くの少年少女が敵の船やクジラに突き刺して攻撃する用の角だと思っていた物がバウスプリットです。
滑車のついた支索が張られていますね、これは先ほどの通り、①マストを前後方向から支える②ステイスルなどの帆を張るのに使う、大事な部品です、突き刺すなどとんでもない。
滑車が使われているのはロープをパンパンに張る為でしょう。
帆をもう一枚取り付け、別の角度から見た図です。動索もついているのが解ります。これは先端側の帆を開く為のリフトのようです。
甲板から操作出来るなら楽だね、と思うかもしれませんが、常にそう出来る訳ではありません、部品を取り換える時、トラブルがあった時、帆を取り付ける時、帆をしまう時、結局の所船乗りはマストやバウスプリットに登らなくてはなりません、そこが波の静かな港の湾内なら幸いですが、時には外洋の波浪の中でそれをやる羽目になる事も……
コルベット艦に移ります。かっこいいですね。本当は18世紀以降に出て来る船です。マストは三本ありますし動索や滑車の数もバルシャ船とは桁が違いそうです。
この船をこの船らしく活躍させる為には、たくさんの乗組員が必要でしょう。
マストの呼び方です。
①はフォアマストです。前の帆柱だからフォアマストですね。わかる。
②はメンマストです。男の帆柱? いいえ……主たるの帆柱だから、メンマストだそうで……
何故そうなっているのかは私も知りません(大汗)、とにかく日本語の海洋小説ではそう書く決まりになっているそうです。
ついでにそれぞれの帆の名前も。さっき出て来た「ステイスル」も支索に張る帆だからステイスルです……スル? スルなんだそうです……
マストに張る横帆は一番下がコース。①の一番下の帆なら「フォアコース」、②の一番下の帆なら「メンコース」になります。コースにはスルをつけません。
その上の、このコルベット艦で言えば真ん中の帆は? トプスルと言います。トプスル……? 「トップ」の「セイル」でトプスル!?
だから③の下から二番目の帆なら「ミズントプスル」、まあこの船の場合ミズンマストの一番上の帆がトプスルになるのでまだ解る、だけど②の下から二番目、全体から見ると真ん中の帆は「メントプスル」なのです!
じゃあトプスルの上にある帆の名前は? トゲンスルです。トップのギャランなセイルでトゲンスルです。
もっと後の時代の、もっと帆の多い船の場合は?
下から、
1.コース
2.トプスル
3.トゲンスル
4.ロイヤルスル
5.スカイスル
……などのようになるそうです。
これはコルベット艦のバウスプリット。帆桁がついてますね? ここにつけられるのがスプリットセイルです。フォルコン号にもこれがついている事になっています。少しでもスピードを上げたい時に張る、補助的な帆なのだと思います。
展開するとこんな感じに。甲板から前がよく見えなくなるので、ブラインドセイルとも呼ばれます。ちなみにこのへんは何故かスプリットスル、ブラインドスルとは書かれない気がします……
赤枠が檣楼です。たくさんありますね、コルベット艦は軍艦なのでここに射撃手を置いたりするようです。トプスルの上にも足場がありますね、いわゆる檣楼員が立つのはこちらでしょうか。
最初に掲示した三隻の船では、コルベット艦以外はまともな檣楼がありませんが、物語中のリトルマリー号とフォルコン号には手摺りのない小さな檣楼がある事になっています。
コルベット艦が帆を展開した所。黄色の印をご覧ください、ここだけ帆を閉じたままにしてあります。開くと前方が見えません……前方への警戒が必要な時は、こんな風にして進んだんじゃないですかね、実際。
船尾楼、または艦尾楼の話。このコルベット艦には低いけど広い艦尾楼がついています、赤枠に囲まれた甲板が高くなっている場所です、この下に艦長室や士官室、士官用集会室などがあります。
フォルコン号の艦尾楼はこんなに長くなく、上層には艦長室が、下層には士官室と海図室、保安倉庫があるイメージです。士官用集会室はないですね。
このコルベット艦の艦尾楼には立派な出入口もついています。
船鐘。立派な船では30分ごとにこれを鳴らしています。八種類の鳴らし方があり、最後の八点鐘が当直交代の合図になります……しかしマリー船長はほとんど使っていません。
第一作にはリトルマリー号の鐘の音を聞いた乗組員達が戻って来るシーンがありました。多くの船乗りは自分の船の鐘の音を聞きなれていて、鐘の音を聞けば自分の船かどうか解ったとか……でも今の不精ひげたちはフォルコン号の鐘の音を聞いても解らないかも。
コルベット艦の艦首楼。こちらにも立派な入口がついてますね(赤枠)。一方、黄色の枠は下層甲板へのハッチです、甲板を洗う海水が入り込まないよう、普段は閉めてあります。
舷側です。赤枠でわざわざ囲ったけど余計わかりにくいかも? 前回も書きましたが「舷側」は色んな意味で使っています、とにかく船の端っこの方、船の外から見た船の側面、船の側面にある波除板と手摺り、全部まとめて「舷側」です……
波除板、と書きました、黄色の枠で囲んだ部分をブルワークとも呼びます、何か強そうですね、そもそもブルワークとは「砦」とか「防壁」という意味だそうです、でもここだけ見たらベランダの手すりじゃん。
最後にもう一隻……フォルコン号に近いスループ艦のモデルです。私のイメージのフォルコン号はここまでバウスプリットが長くなく、スプリットセイルがあり、マストは真っ直ぐで小さな檣楼がついています……しかし概ねこの通りです。
スループ艦はコルベット艦より少人数で運用出来、タッキング(逆風に斜めに切れ上がる航法)に強い船です。
しれっと操舵輪もついていますね。本当は17世紀の船に操舵輪はありません……この辺りは雰囲気重視という所で申し訳ない。
思ったより長くなってしまったので今回はここまで、気が向いたら第二回をやります! ご感想、ご質問、そしてご……ご指摘等あれば、コメントを残していただけますと大変助かります……!