13.ピストル、またの名を拳銃とも言う。
「これより、第32回芦野花高校体育競技大会の開催を宣言します。」
パン、
と、ピストルの音が鳴り響き体育祭が始まった。
「はぁーついに始まったか。暑い暑い。」
とか言いながら俺は魔道具の『冷たいうちわ』を扇ぐ。魔法陣付与でうちわにコールドと、スプラッシュ(小)、ブロウ(小)の魔法を付与した手作りだ。これを知ってるのは俺とアルトだけだが、春樹にも渡してはいるが特別な技術と言ってる。
間違ってはいない。
「このうちわスゲーな。軽く扇いでも結構風来るし、風は冷たいし。これもっと分けてくれよ。」
「そのうちわの作り方は門外不出。例え親友の頼みであっても譲れない。」
「ちぇー。」
舌打ちされた。
開会式の少し後。スタジアムの西スタンドにて。
「そっちはどうだ。」
渋い男の声、
「ああ、全て設置完了ですぜ。いつでもいけます。」
今度は少しハスキーな男の声、
この2人はイヤホンで会話している。
誰にも聞かれたいないか周りを見る渋い方。
「こっちも準備オッケーだ。」
渋い声の男の手は服の中の黒く冷たい物に触れていた。
「だが、ここで始めてはこの大会を楽しめない。メインディッシュを調理するのが俺の好きなことだ。だからまだだ。」
「ヘイヘイ、わかりました。メインディッシュまでは大人しくしてますよ。」
「クックク。さあ怯えろ、叫べ、私を楽しませてくれよ。学生さん。」
誰にも聞かれてはいけない会話。
男はその独り言を楽しむように、そして口の中で飴を味わうかのように、笑う。
そして5時間後。14:00
ついにこの日のメインイベント、【紅白対抗リレー】が行われる。
「プログラムナンバー9番、【紅白対抗リレー】選手が入場します。」
俺の緊張はマックス状態だ。
入場音楽がなり始めた、その時、
ダァーン
ピストルの音ではない音が会場に響き渡った。
俺は音の鳴った方向を見る。すると人が倒れて、その隣で笑う一人の男がいた。
ここで気付いた。
あの音は本物のピストルの音だ。
「マジで?」
そしてそのことを理解した人が悲鳴を上げる。
それにつられ、わかっていない人も状況を理解し始め悲鳴はどんどん大きくなる。
ドガーン
今度は爆発音がした。あちらこちらから。どうやら出入り口を全て塞いだようだ。随分手が凝ってるな。
ここまでの状況を俺はなんとかマップや、ステイの話を聞き理解していた。
『使われている銃は〈CZ-USA CZ75〉。あの銃を使っているということは、それなり撃ってきているのでしょう。』
そんな情報今いるか!?
『カッコつけたかっただけです。』
それだけ!?
『使用者がカッコつけて説明できるようにです。』
いらねーよ!
それより今どうすればいい?
『今この会場は混乱しています。それを抑えるのが1番かと。』
わかった。
そう言って(心の中で)俺は、実行委員席の下の放送席に突っ込む。着地は成功させる。
俺はマイクをとり、
『皆さん静かにして下さい!』
と叫ぶがあまり聞いていないようだ。
『使用者。ミキサーのつまみをマックスにして下さい。』
ミキサーってなんだ!
『音量調整するやつのことです。』
俺はミキサーのつまみをマックスにした。
すると、
キィィィィィィン
ハウリングが起こった。
耳が痛い。
そして会場は静かになり、俺の方に視線が集まる。
もちろん、拳銃を持ってる男の視線もだ。