表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄扇使いは成り上がる  作者: マルクゥ
1章 異世界突入編
8/14

神槍グングニル

 第8話開いて頂きありがとうございます!

 今回から少し書き方を変えてみましたけど分かりますかね?笑

 気にしながら読んで頂きこっちの方がいいとかあれば感想とか頂ければ幸いです( ´艸`)

――――ガキンッ!!


 金属と金属がぶつかり合う音が街中に響き渡る。

 彼は自分の渾身の一撃が受けられた事により――いや、眼前の男を殺せなかった事に苛立ちを顔に出す。

 …………聞いていた話とは大分印象が違う人物だ。確か――ソウタとアキは言っていた。

 もっと温厚でアキとも仲良くしていたと聞いていたんだが……。


「――君、何者だ?僕が転生者だと知って出て来たのか?」

「私はこの人の――妹、です。それは知っています」

 

 知っているとも、一部始終を全て見ていたのだから。

 ――――アキが私を置いてコッソリ2人の元へ向かったのもすぐに気付き、パン屋の仕事を追う様に切り上げた。

 だから何故こんな状況になったかも把握している。

 ……本当はアキがソウタにやられる前に出て来て助けた方が良かったのかもしれない。だけどそれはいけない、彼の成長を妨げる事になると思って殺される限界まで様子を見ていた。

 ――――決して置いて行かれた事を根に持っているわけではない…………。


「妹……だと!? こいつは転移者だぞ!? この世界に妹何ている訳が無いだろう!!」

「私とこの人の関係は貴方には関係ありません。……この場は見逃がして貰えませんか……?」


 相手の武装は神槍グングニール――王扇では分が悪すぎる。私が選ばれた使い手ならば別なんだが私扱うとただの鉄扇へと成り下がってしまう……。

 今は何が何でも逃げた方が得策だろう。


「分かった、君は見逃してやろう。だが――そいつは別だ! そいつをこちらに差し出せば君の無事は保証しよう」

「―――――――っ」


 深呼吸し大きく息を吸う。仕方が無いか。命は一つしかない。

 後ろで寝ているアキを抱え上げそのままソウタの方へと歩いて行く。

 …………こんな騒動を起こしてしまったら生き延びたとしても、もうこの街では生きてはいけないだろう……。

 折角パン屋で働ける様になりお金の貰い方も分かったのに……。貰ったお金でパンも今後買えたはずなのに……。

 全く本当にもう――――――――――絶対責任取って貰うんだから!!!!




「ぜっっっったい嫌なこったバーカ!! 燃え尽きろ!!!! ――――爆炎爆発(エクスプロージョン)!!」

「――――な!」


 ――――ドガーンッ!!

 

 

 ソウタを中心として大砲を破裂させた様な爆発が起きる。そのまま炎が北門を燃やし辺り一帯が火の海と化す。

 見物していた街の人はアキとソウタの戦いが始まった辺りから巻き込まれない様にと避難していたので爆発には巻き込まれなかった。

 だが爆心地にいたソウタは炎でどうなっているか分からないが無傷ではないだろう――――かといって致命傷と言う訳でもないはず。聖騎士達と本物の妹のハルカらしき人物がソウタの無事を確認しに炎の方へと駆け寄る。

 ――今が逃げるチャンスだ、アキを抱えたまま南門の方角へと走り出す。


「おっと――こんな騒ぎを起こして逃げられると思わない事だな。その少年はソウタ殿がご執念なだけで興味も殺す理由は無いが、君は生かしてここを返すわけにはいかない」


 第3聖騎士隊隊長ハンシンク=テレシア――聖騎士隊隊長として研鑽を今は積んでいる次期勇者の供に転生者を除き一番近い存在…………。

 中々の大物が出て来たものだ。お荷物を抱えながら相手をするのは少々手間がかかる相手だ。だが、


「逃げられると思ってるよ! 今は貴方の相手をしている暇はないの!! それじゃバイバイ!!」


 ハンシンクが構えている槍で突きの動作を行うよりも速く、横を全力で駆けて抜けていく。


「っっっっな! 速い! っくそ! 全隊員に次ぐ、ソウタ殿は無事だ――――あの少女を追いかけろ!」


 追っ手を付けられたが指示が少し遅い――聖騎士が来る前に通りを歩いている人ごみを走る抜け、南門へと目指す。








「蒼汰君!! 怪我は大丈夫!?」

「ああ、少し火傷した位だから大丈夫だよ」


 余程心配だったのか、涙を流し抱きしめてくる春香ちゃん……。

 それにしてもあの男を逃がしてしまった……。悔しさで腸が煮えたぎりそうだ。

 自分の能力の確認の為とはいえあの場で少し遊んでしまった事を後悔する。


「大丈夫だとも、ハルカ殿。転生者は天の加護により上級以下の魔法を属性に問わず全て無効化(レジスト)するんだ。だがまあ今回は超級を使われたようだな、半分程しか無効化出来なかったみたいだな」

「それって全然無事じゃないですよ!! 待ってて蒼汰君、今治してあげるから――――光の精よ、我が魔力を糧とし癒しを求めん、ヒーリング」


 春香ちゃんが火傷の部位に手をかざし、詠唱終えるとみるみると火傷が治っていく。全くこの世界は――なんて凄い世界なんだ! 僕と春香ちゃんが救国の転生者なんて呼ばれ、前の世界と違ってとてつもない力を持っている。あの弱かった僕と春香ちゃんが……!

 それに比べてあの男は――――前の世界では無敵の強さを誇っていたというのにこの世界においては圧倒的無力だ! あの強かった常葉亜紀が!!

 本当にその事実を実感するたびに笑ってしまいそうだ。


「これで治ったけどまだ……痛い?」

「もう大丈夫だよ、春香ちゃん。ありがとう」


 だけどどんなに弱くてもあの男を生かしては置けない――――あの男の存在によって何が起きるかが分からない。

 何をしてでもここで必ず殺しておく必要がある……。


「皆さん。少し僕から離れて貰ってもいいですか……?」

「何をする気だソウタ殿?」

「確実にあの男を、ここで殺しておきます。今後の安心と安全の為に」

「……男の方をか。……それは分かった、だが何をするんだ?」

「……こうするんです!――――――――神器解放!!!!」




 

 黒光りするグングニルに赤い稲妻の様な魔力が纏わりつき、同時に体内の魔力が根こそぎ槍を持つ手の方へ流れていく。

 ――――投擲の構えを取る。経験も知識も無かったはずなのに今は何故かどうすればいいかが明確にわかる。

 

 思い出せ、あの顔を。殺したい位憎い――――常葉亜紀の顔を!!!!





「突き貫け!!!――――――グングニル!!!」




 ――――ヒュンッ!



 その言葉を発すると同時に意識的ではなく勝手に腕が槍を投げられる。

 槍は南門がある方へと弾丸のような速さで飛び去り確実にあの男の体を貫くだろう。


「な……何をしたんだ!?」

「神槍の真の力を解放しただけだよ」

「真の力だと!?」

「ああ、神槍グングニルの能力は絶対必中。狙った相手を必ず貫き、持ち主の元へと必ず帰ってくる7大神器の一つさ」

「神器…………聞いた事はあるがそんなあり得ない事が起きる武器がこの世に……?」


 ――――あるとも、そんな世界をも変える武器が七つも。まあ使える人間はそういないだろうけどね。解放すると総魔力量の半分を持っていくとんでも燃費の武器だし。


「見ていれば分かるさ――――帰って来たようだ!」


 黒光りする槍が行きと同じ様なスピードで戻って来て、頭上10mの所でピタッと止まり、落ちてくる。

 その矛先には赤い血がベットリと大量に付着していた――――役目をきちんと果たしたようだ。


「これを見てもまだ疑うか?」

「――信じられん、そんな武器があるなんて……」

「まあいいさ。春香ちゃん、これでもう安心だ。僕達の命を脅かす奴はもういない!」 

「本当に…………? もう大丈夫なの?」

「大丈夫だとも。安心して――――何があっても君だけは僕が守るから」


 そうとも。春香ちゃんを守るのはこれからは僕の仕事だ。貴方は守れなかったのだから、もう守る事すら出来ないんだから! 安心して春香ちゃんは僕に任せてくれ、常葉亜紀…………。








 


 同時刻 草原

 

 走りながら後ろを振り向く、どうやら追っ手は完全に撒いた様だ。

 …………全く、アキは何でこうも厄介事に巻き込まれるのだろうか……。

 まあ――出会った時のは私が原因なんだけどね。

 それでもたった3日でこの調子じゃ今後思いやられる……。

 ――――今回無事に逃げて来られたのはとても運が良かった……。

 私はどうにでもなるけどアキが生きて帰れた事は今後の事を考えると非常に大きな意味を持つ。

 自分が超えなければならない…………今後倒さなければならない相手との力量の差を今回の出来事でハッキリわかっただろう。

 目標も見え、痛い目も見たからあまり無茶な事を今後しないといいのだが…………その点に関しては王扇に任せよう。

 

 それにしてもまさか今回召喚された転生者が神器を所有しているとは……。

 


 ――――7大神器と呼ばれるうちの一つ、神槍グングニル。選定者が狙った敵へ槍の投擲を行った場合、絶対必中の呪いが掛けられている神々より造られた魔槍。




 …………絶対必中? いけないっ!! ソウタとまだ私達はそんなに距離が離れていない!!!


 

 おおよそ現在いる草原からセフィラの北門までの距離おおよそ10km。

 ――――間違いなく、ソウタの魔力量なら届いてしまう……!!

 

 自分の逃げきれたと思ってしまった油断と計算の甘さに気付いた時にはすでに遅かった。

 セフィラの街から超高速で殺意のこもった魔力の塊がこちらに寸分たがわずに飛んでくる。

 悪あがきで直進に走っていたのを方向を90度変え別方向へ走り出す。

 ――だが、流石は神器、修正を行いながら確実にこちらへ飛んでくる。


 ――――――――逃げられない!!!


 狙いは私が今抱えているアキだろう……。ならば次はどこに槍は刺さる? 必中であってこの槍、必殺ではない。

 

 走っていた足を止め、アキを地面に降ろし、前に立つ――まるで盾の代わりと言わんばかりに王扇を構える。

 

 槍がセフィラの南門付近を通り越したのを視認出来た。

 黒く赤いまるで人を呪い殺さんと言わんばかりの槍……。

 

 ――ここであの槍を止める!! 止められなくても絶対に致命傷は避けねばならない!

 ここでアキを――――15年間探し続けた人を殺させるわけにはいかない!!


「安心して、貴方が強くなるまで私が何があっても守って見せるんだから!!!」


 

 王扇を握る手に力を入れ、両足で地面を掴む様に踏ん張る。


 視認から1秒も経たないで目下5mとなる。


「は――――――っ!!!!」




 ――――ギャリンッ!!



 槍の矛先と王扇の側面が激しく衝突する。




「っっっっっくぅ!!」



 想像以上の重たい一撃に踏ん張る足が後ろに徐々に徐々にと数cmづつ下げられていく。

 槍の狙いは心臓――。ここで受け切らずに槍をそのまま通せば間違いなくアキは死ぬ…………。

 だが、もう数秒ほどしか槍を受けていられないだろう――――。


「――――なら、これでっっっ!!!」


 受けられた事により飛行速度が落ちた槍の側面を叩き飛ばし、横へ吹き飛ばす。

 しかし、槍の呪いはその程度では緩和すらされず、弾き飛ばされた所から更にアキを狙う。

 

 狙いは必中だが必殺ではない。


「痛いだろうけど――文句は受け付けないから!!」

 

 速度が遅くなっている槍を掴みとる。

 だがやはりその程度では止まらず私を引きずりながらアキの心臓へと進む呪いの槍……。

 


 止まらないなら狙いを変えてあげればいいだけの事!!

 槍の矛先が心臓へ近づき、あと数㎝で刺さるという所で――――槍の矛先を握り矛先を左肩へ向ける。


「――――はぁぁぁ!」


 槍が心臓へ軌道修正を行おうとするが、無理矢理矛先を肩へ突き刺す。

 矛先にアキの血が付着し、それにより槍の真価が発揮される。

 

 槍の軌道修正の力が無くなる――――代わりに肩へ突き刺さる力が強くなり、そのまま肩を貫通しそのまま地面をも貫通していく。

 高速で肩に槍が刺さり、貫通し風穴を開けられた事により傷口から大量の鮮血が噴き出し、アキの服を真っ赤に染めていく。


「ぐ――――ぁぁぁぁぁぁっ!」


 肩を貫かれた痛みに気絶していたにも関わらず目覚めたらしい。

 だが、今は傷を治したりする暇はない――――。

 槍はどこにいったのか確かめる為に周囲の確認を行う……。

 

 目に見える所にはいない…………。

 なら目に見えない地面の中の魔力を探索する――いた!! 場所は…………!!


「危ない――――!!」


 寝転がり痛がっているアキを抱えそのまま前へ全力で飛び転がる。


 

 ――――ヒュンッ!


 とさっきまでアキが寝ていた地面から槍が真上に飛んで行く。

 必中の呪いの役割を果たした槍はそのまま持ち主の方向へ飛び去って行く。

 …………どうやら、一難去ったらしい……。


「あ――――ぐ…………!」

「待ってて!! 直ぐ治すから!!」


 痛みにより叫んでいるアキの元へ駆けつける。

 今声を掛けても何を喋っているか分からないだろうから手に王扇を握らせ、傷口を光魔法で回復を行う。


「――ヒーリングパージ!」


 …………傷が酷く中級魔法では治らないだろうが上級魔法ならきっと治るはず――――。




「大丈夫? 怪我は痛くない……?」

「大丈夫じゃないな……。痛いし血が足らないのか凄くクラクラする……」


 それもそうだろう。上級魔法で治癒した為血は止まったが完全には傷は治らなかった……。

 更に傷は魔法でどれだけ治ったとしても血の量はどうしようもない。

 

「結構大量に血を流したからね……。とりあえず――脅威は一時的に去ったと思うから一度家に帰ろうと思うんだけど歩ける?」

「ああ……。なんとか、歩けるから……」


 ……歯切れが悪い。怪我の痛みと出血により意識も微妙だからだろう――――だけど多分一番の原因はきっと…………。


「――――私と王扇は傍にいるから……。今は今回の出来事をしっかり受け止めて欲しい。後、気休めかもしれないけど……お兄ちゃんは絶対何も悪くないよ、元気出してね」

「……………………ありがとう」


 身体の傷よりも心の傷は大きそうだ……。

 

 でも貴方は必ず乗り越えると私は信じている。

 

 ――――貴方は王扇に選ばれたのだから……。


 


 最後まで読んで頂きありがとうございます(*´ω`*)

 分かりましたかね?笑

 今回少し文字数が少なくなってしまってます。申し訳ありません( ;∀;)

 次話もすぐ投稿しようと思ってますのですぐ読みたい!とか思って下さる方がいればブックマークの方よろしくお願いします。

 最後に何か読んでみて思う所がある方はお時間あれば感想やレビューを頂ければ作品のレベルが上げて行けると思うのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ