表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄扇使いは成り上がる  作者: マルクゥ
1章 異世界突入編
7/14

邂逅

 今回はバトルシーンを書いてみたつもりだったのですがいやはやこれがまた難しくて上手く書けた感じがしないです(´;ω;`)


 読んでみて何か違和感などありましたら最後、お時間あれば感想とかを思うがままに言って貰えれば助かります"(-""-)"


 春香と蒼汰に会う為にサクラとオウセンと街へ向かう。

 森を抜け、草原を突き進み歩く事1時間半、セフィラの街の入り口に辿り着いた。

 セフィラの街に入り口に着いたと同時にある事を思い出す。サクラに絡んできた男達だ。もし2人を探している時や会っている最中に鉢合わせてしまったらまた面倒くさいことになりかねない。対処法を考えておこうと思ったがあの時何故サクラは絡まれていたんだ?


「サクラ、そう言えばまだ聞いてなかったんだが俺とサクラが会った日にいた男達になんで絡まれていたんだ?」

「あれ? まだ言ってなかった? 露店に並んでたパン食べたかったんだけどお金持っていなかったから盗んだらバレちゃってあんな事になっちゃったんだよね」

「へぇ?? えっとあの男達はじゃあパンを取り返しに、お金を払わせる為にあそこにいたのか?」

「そういう事」

「…………」


 それはつまり、俺は状況に流されて窃盗に加担したってことか! やべぇ……。あの人達1mmも悪くないじゃないか。


「サクラ」

「なに?」

「お店の場所分かるだろ?」

「うん」

「一緒に謝りに行くぞ!」

「嫌だ!! 何でそんなことしなくちゃいけないのよ!!」

「俺はサクラの一時的でも仮の保護者として窃盗を認める訳にはいかない! 大丈夫だ! 俺も一緒についていくから!」


 窃盗は色々駄目だよな……。


「やだやだ!! 絶対やだ! ていうか何でいつの間にか保護者になってるのよ!?」

「お兄ちゃんって呼ぶじゃん!? 俺を兄と思ってくれてるんだろ!!」

「馬鹿じゃないの!? からかってるだけに決まってるじゃん!」


 なにそれ!? めっちゃ傷つくんですけど!?


「それでも窃盗は認めん!! どうせ少し時間が余るんだ! 暇潰す位なら謝りに行くぞ! 後、今後お世話になる可能性のある街で後ろ指を指されたくない!」

「そんなに謝りたいなら一人で行けばいいじゃん!」

「それじゃ意味が無いの! 窃盗犯当人を連れて行かないと意味が無いの!!」

「もう、しつこいなあ! オウセンがいるから後ろ指を指す人がいればその都度倒せばいいじゃん!」

「なんて物騒な考えをしてるんだ!? 人間は平和的に生産性を大事にして生きて行かないと繁栄しないの!」

「繁栄なんて私に関係ないじゃん!」


 ああ言えばこう言いやがって!!


「考えてみろ! 誠心誠意込めて謝れば盗んだパン分働かされるはずだ! そこできちんとした成果を上げれば今後その店とか俺達のいい評判が広がって働き口が出来るかもしれないだろ! そしたらお金を稼げて食べたかったパンを好きなだけ食べれるようになるぞ!!」


 多分だが。


「……それ本当? パン食べ放題って」

「食べ放題かは知らんが持っているお金の分は買えると思うが……」

「業腹だけどじゃあ行く」


 折れた。この頑固で我儘娘が折れた。


「そんなにパンが食べたいのか?」

「食べたい。あの時も食べたかったのにお金を寄越せって言われて……。お金なんか知らなかったからどうしようもなくて、でも食べたかったからあの時は盗ったの」

「成程なぁ。けど盗っちゃ駄目なんだよな~」

「知ってるよそんな事。でもそれしか思い浮かばなかったもん」


 お金を知らなかったのか。どんな環境で育ったと聞きたいがあまり家庭の事を聞く訳にもいかないんだよな……。

 年相応に駄々を捏ね、かと思いきやたまに全てを見透かした様な事を言ったり色々と謎が多い少女だ。だが今は年相応の顔を見せてくれているから気にはしない、他にやる事もあり、気にする余裕が無い。


「じゃあ謝りに行こうか。場所に案内してくれ」

「……こっち」


 パン屋の露店へ案内されている際、ふと思う事があった。


「そういや、サクラ。最初会った時なんであんな無口だったんだ? 今なんてもううるさくて仕方が無い位なのに」

「いきなり現れた何て言っているか分かんない、なんで助けてくれたかも分からない人をお兄ちゃんは警戒せずに信用する?」

「……場合によっては」

「場合にはよるかもだけどあの時の私はそれに当てはまらなかっただけ」

「でもなんか1日と経たずになんか大分懐いたもんだな」

「懐いたってなによ! ひとを犬みたいに扱っちゃって! もう!」

「ごめんごめん、でもそうだろ? 出会った日と次の日とではなんか印象が違ったからビックリしてさ」

「お兄ちゃんがオウセンと会話しているのは分かったからね。オウセンに気に入られた事も。オウセンが気に入ったって事は私が警戒する必要は無くなるの。後、使い手を探していたってのもあるんだけどね」

「そうそう、それそれ。何でサクラがオウセンと会話出来ないのに俺が会話できるんだ? ずっと疑問に思っていたんだ」

「素質があるんだよ」

「なんの?」

「ないしょ! ほらほら、もう露店に着いたからこの話はまた今度!」


 ちょっと待てよと言いたかったが露店に着いたと言われ顔をサクラから周りの露店に向けると見覚えのあるマッチョ3人の男達が視界に入った。

 あちらさんもこちらを非常に鋭い眼光で見つめていらっしゃる。サクラに手を出しかけた男がパン屋でもう2人は隣の露店で野菜と果物らしきものを売っていていた。

 あんな強面の店主からよく盗み出したなこいつ……


「俺が前に出て先に謝るから後から着いてきて同じ様に謝るんだぞ?」

「……仕方が無いなぁ」


 深呼吸をしてパン屋の前まで行く。


「兄ちゃん等、戻ってくるとはいい度胸じゃ――――」

「この度は申し訳ございませんでした!!」

「……ごめんなさい」


 言葉を遮られ唖然とするパン屋、何か言いたそうな顔をするが言わせてやるものか! ここで叩き込む!


「この馬鹿が盗んだパン代を払いに来ました! と言いたい所なんですが私達無一文なもの払うお金がございません! なのでここで働かせて下さい! きっちりパン代を稼ぎます、いやそれ以上の働きをしますので!」


 頭を下げる。その際にサクラの頭も一緒に手で抑え込み下げさせる。こら、睨むな暴れるな!


「おいおい、目立って恥ずかしいからあんまり大きな声出すんじゃねえよ! 金無しだぁ? お前等、家は? 家族は?」


 パン屋の店主が恥ずかしそうにあたりを見回す。おや? これはいい流れじゃないか? 頭を上げ、サクラを抑えていた手も退ける。だから睨みなさんな。


「……家族はいない。家は森の方で野宿してる」

「おいおい、まじかよ。このご時世でそんな事あんのかよ。おい兄ちゃん、お前ん家で嬢ちゃんを面倒見てやれ、今回はそれでもういいから」


 何て優しいマッチョなんだ! 話が分かるってもんだ。


「俺はこの子の家に今居候させて貰ってる身なんで、家なんて素晴らしい物持ってないんで」

「おいおいおいおい類友かよ……。なあ嬢ちゃん、買えないっての分かってたのになんでパン盗ったんだ?」

「凄く美味しそうで……。どうしても食べたかったから……」


 それを聞いてパン屋の店主はにんやり笑い嬉しそうな声で叫ぶ。


「おいおい聞いたかよ!! どうしても食べたくなる位俺のパンは美味しそうだとよ! パン屋をやっててこれほど嬉しい言葉はないもんだねぇ!」

「良かったじゃねえか! 俺も言われてみてえぜ!」「羨ましいぜ!」


 横の露店の店主たちも嬉しそうな顔をしているがこの人達は盗った事や殴り飛ばされた事を怒っていないのか?


「怒ってないんですか? こいつが盗った事や殴っちゃったり色々した事……」

「いや、怒っていたさ。次見つけ出したらただじゃ置かねえとは思っていたんだがまさか何日もしない内に謝りに来るとは想像して無くてな。どんな顔していいか分からなかったがまあ話を聞いてみたらまあ娘と同じくらいの子にそんな事情があったなんて知ったら怒気も去るってもんだ。いいぜ、嬢ちゃんとついでに兄ちゃんもここで働ける時に働きな。パン代以上に働いてくれたらちゃんとその分の金は払ってやるからしっかり働きな!」


 まじか!? こんなあっさりいいのか!?


「本当ですか!? とても助かります! サクラ、ほらお前も頭を下げろ!」

「自分で下げるから触らないで!」


 そんなこんなで俺達はパン屋で働かせて貰える様になった。

 理想通りの展開になって自分でもびっくりする位上手くいってしまった。裏がある様な気がしてきた。


『それについては問題ないだろう。嘘を吐いていたり企んでる感じではない。疑う事はとても大事だが今回に限っては素直に言葉通りに受け取っておけ』


 オウセンがそう言うんだったらまあ大丈夫か。

 その後は客引きや売り子などのやり方を教わり、日によっては隣の店主等の元で働かされたりもするらしいが聞いている限りそこまで難しくも無さそうだった為特には問題ないだろう。

 教わりながら2時間ほど働いただろうか、陽が落ち始めて夕方になり始めた。

 そろそろサクラの話では2人がこの街に来るとの事だったのでパン屋での仕事を切り上げて探しに行こうと思っていた。


「おじさん、ちょっと今日はもう切り上げてたいんだけど大丈夫?」

「おう、パン代はとっくの昔に稼ぎ終わってるから終わりたい時に終わって貰ってもいいぞ。後俺はおじさんなんて年じゃまだねえ」

「ちょっと用事があるんで俺は切り上げるよ。用事が終わるまでサクラをここの店に置いといていい? 適当に今みたいに働かせてくれてればいいから」

「それはいいが……。兄ちゃんも転生者様達を見に行くんか?」


 兄ちゃんもって事は転生者が来るのはこの街でもうかなり有名になっているのか?


「そうだけど、転生者ってそんなにやっぱ凄いもんなのか? あんまり俺はその辺り詳しくなくてさ」

「そりゃあ凄いさ! 勇者様に続いてのこの世界の救世主様なんだからよ! そんなのも知らずに見に行こうとしてるんか?」

「まじかよ、救世主様なんて呼ばれてるのか……。凄いんだな」

「天が定めたの異世界の使者様だからな。兄ちゃん、まともな教育受けて来なかったのか? こんなの子供でも知ってるぞ?」

「色々と訳ありなもんで。とりあえずその救世主様達を見に行きたいからちょっとサクラの事お願いします」

「あいよ。ちゃんと後で拾いに来て働いた金でパンでも買ってってくれや」


 



 パン屋を去り、2人を探す。セフィラの街は門が北門と南門の2つだけらしくセフィロトの樹に繋がる門が南門らしい。

 俺は2人がどちらの門からやって来るのかが分からなかったがパン屋の店主の話を聞いている限り見物にかなりの人が集まる可能性が高い。場所は分からずとも人の流れがある方に、人が多い所へ向かえばもしかしたら2人を見つけられるかもしれない。

 大通りを見ていると北の門の方へと流れている人が多い。

 とりあえず向かうだけ向かってみるか……。




 

 北の門が眼前へと近づいて来るにつれて辺りの人が増え賑やかになっていく。

 

『どうやらこちらで合っていた様だな、高い魔力が近づいてくる』


 それって転生者の魔力なのか? というかそんなのも分かるんだな、まるでサ○ヤ人みたいだ。


『多分な。鍛錬は必要だが覚えると魔力の持ち主の位置と魔力量なら大体把握できる様になるぞ。魔力量=強さと言う訳ではないんだが魔力量が高い者は総じて強い傾向にあるから出来る様になれそれだけば不利な戦いをしなくても済むようになる。安心しろアキ、君にも近い内に覚えさせるからな』


 近い内にまたスパルタでしごかれるんだろうと思うと少しだけ憂鬱になる気持ちとちょっと異世界っぽい感じもあり、ワクワクもする。

 

『門の外を覗いてみろ。そろそろ視認できるくらいの距離に入ると思うのだが。むっ、数が少し多いな。20人程の警護がついているな』

  

 門の外を覗くと遠くの方に鎧を着た騎士の様な集団が歩いていた。春香と蒼汰の姿は残念ながらここからでは見えない。


『あれは聖騎士か! これはまた過保護な護衛を付けたものだな』


 聖騎士ってなんなんでしょうか、オウセンさん。


『王都には人間の国王がいるのだがその王直属の少数精鋭の護衛部隊だ。これは転生者との接触は少し難しそうだな』


 そうでもないだろう。声をかけて春香と蒼汰に聞こえさえすればきっと向こうから会いに来るさ。


『だといいがな』


 少しもしない内に騎士集団が北門の入り口までやってきた。全員がいかにもな防御力が高そうな黒い鎧を着ているが、先頭の1人だけ白基調の黒の装飾が所々されている少し違う鎧を着た騎士の姿が目についた。きっと鎧だけのせいではないだろう。自分の背丈よりも1.5倍程長い槍を持った金髪の長い髪の女性だからだ。


『いい所に気付いたな。あれが聖騎士隊の隊長だろう。よくその立ち振る舞いや仕草を見ておけよ。君はいつかあれを、そしてその後ろにいる転生者たちを超えなくてはならないんだからな』


 やっぱりあの騎士団や、その隊長の女性も結構強いのか?


『魔力量を分かりやすく数値にしてやろう。初級魔術の使用に1の魔力を必要としているならば隊員が大体500位であの隊長は1500ほどか。ついでにいうと君は1もないからざっと500倍~1500倍の強さだろう』


 絶望的じゃないですか!? そんなに差があるの!?


『この程度で絶望してたら今後が大変だぞ? 転生者の2人を守る為にその2人よりも強くなるんだろう君は?』


 そりゃそうだけどよ……。そういえば2人は数値にしたらどの位なんだ?


『あれは別格だな、3500はあるぞ』


 俺って結構無茶な高望みしているんじゃないか?


『それは君次第だ。あくまで魔力量を簡単に分かるよう数値で表しただけだからそこまで当てにもならんよ。それよりも何か言うらしいぞ、聞いておいた方がいいんじゃないか?』


 騎士団が街の中まで入ってきて先頭の隊長らしき人が一歩踏み出す。騒がしかった街の人達も女性騎士の圧に押されたのか静かになる。


「私は王都ニヴルヘイム直属第3聖騎士隊隊長ハンシンク=テレシアだ! 今回は救世の転生者、ハルカ殿とソウタ殿を神樹セフィロトへの案内を仕った! その為今回このセフィラの街で宿を借りさせてもらうが転生者のハルカ殿とソウタ殿は転生したばかりでお疲れだ! 世界を救う転生者を見て見たいという気持ちは分かるがあまり過度な接触は禁止とする為容赦してくれ!」


 ……今間違いなく春香と蒼汰と言った。間違いなく……。

 そのまま騎士団は人で出来た道を抜け街の中へ入り元々宿を取っていたのか迷う事無く進んでいく。

 そしてそ騎士団の後続に2人の、春香と蒼汰の姿が見えた。


「はるかぁぁぁぁ! そうたぁぁぁぁ!」


 人ごみをかき分け、叫びながら2人に近づく。

 やっと、やっと会えた……。

 2人の傍の方へと走り出し傍まで駆け寄る。


『止まれ、アキ!!』


 頭の中でオウセンの叫び声が響く。声に驚き足を止めた。

 オウセンの声で止まっただけであり、眼前に突き付けられていた槍には気づかなかった。


「良かったな少年。もう一歩踏み出していたら怪我をしていたな。先程の私の話を聞いていなかったのか? 2人は疲れている。過度な接触は遠慮してくれ」


 ハンシンク=テレシアと名乗った女性騎士がいつの間に槍を突き出していた。声を出し何をするんだと言いたかったが声が出ない。背中に滴る汗の感触だけははっきりと分かるが、身体が動かなくなった。

 鋭い眼光で睨みつけられ蛇に睨まれた蛙の様になっていたがハンシンクの顔が何かに気付いた様で一瞬顔が変わる。


「ん? その髪色と瞳の色、2人に近しいものがあるな。少年、君は何者だ?」

「……俺は、春香の、兄だ……」


 絞り出した声でそう言うと槍を降ろす。


「名は?」

「常葉、亜紀だ」


 女性騎士は名前を聞き何かに納得した様な顔で2人の傍まで歩いて行く。そのまま何て言っているか分からないが2人に話しかけ直ぐにこっちへ戻ってきた。


「残念だな少年。ハルカ殿に兄などいないらしい。ソウタ殿に至っては少年の顔は見覚えがあるが、転生する前の世界で死ぬ直前に見た顔が君らしい。私が何が言いたいか分かるか?」


 春香に兄がいない? どういう事だ? そんな馬鹿な事がある訳ないだろう。


『不味いぞアキ! ここは一旦逃げるぞ! 君の妹達の無事を確認できたんだ! 今回はそれで十分だろう!?』

「何を言っているんだ! そんな訳無いだろう! 春香!! 俺だ、亜紀だ!!」


 何でそんな不安そうな顔をするんだ春香……。何時もみたいに笑いかけてくれ。何で蒼汰はこっちを見て睨んでいるんだ……。あの時、助けられなかった事を恨んでいるのか……?


「私の質問に答えて欲しい物だが分からないなら言ってやろう。ソウタ殿は君が2人を前の世界で殺した人間だと仰っている。何かの間違いでこの世界に迷い込んだ転移者君、君の身柄を拘束させてもらう!」

「っな! 何を馬鹿な事を言っているんだ!? 蒼汰! 何を言っているんだ!? 蒼汰!」


 蒼汰へと叫ぶが返事が無くただただこちらを睨むだけで春香に至っては怯えている。

 

『走って逃げるんだ! 何者かに君はハメられたんだ! 多分だがあの2人の記憶は改竄されている! 君が2人を殺したと言うふうにな! 騎士達が君を捕らえる前にさっさと逃げるんだ!』


 ハンシンクは騎士達に俺を拘束する様に告げると隊の先頭へと戻っていった。代わりに騎士が5人俺に向かって走ってくる。

 集まった人達も騒ぎ出し、場は混乱していくが俺の頭の中はさらに混乱していた。

 だってそうだろ? もうちょっとハッピーな展開を期待していたのにこんな仕打ちはあんまりだろう。

 混乱ついでに頭が熱くなり、懐に入れていたオウセンを握ってしまった。

 オウセン、また力を貸してくれ。なんとしても2人と話したいんだ。


『無茶だ! 一度冷静になるんだ! 前の男達とはレベルが違うんだ! 今の君に勝てる相手ではない! 今はとにかく逃げるんだ!』


 オウセンの言葉を無視しオウセンを構える。俺が武装した事を確認すると騎士達も腰にかけていた剣を抜く。

 さっき槍を突き付けられていてよかった。あれほどのプレッシャーはこいつ等からは感じない。

 

『こうなってしまっては仕方が無い! 何が何でも囲まれるな! 後ろに下がりながら戦って時間を稼ぐんだ!』

 

 一触即発の雰囲気が漂い、今にも切りかかってきそうな騎士達だったが騎士達にある人物が近づき話しかけた事によって武装が解かれた。


「僕に任せて貰える? この人には前の世界で借りがあるんで」


 蒼汰が騎士達を後ろに下げさせ、俺の正面に立つ。

 借り? 俺の事を思い出してくれたのか?


「蒼汰! 俺だ、亜紀だ!」

「ああ、お前の顔には見覚えがある。あの時僕達を攫い、殺した張本人だ! 忘れる訳が無い、あの痛みと屈辱、そして何より僕の一番大切な春香ちゃんを殺した事を!」


 何を言っているんだ……? 攫ったのは俺じゃない、殺したのも偶然鉄筋が落ちてきたからだろう……。


「ソウタ殿、危険だ。ここは私達に任せて下がってくれ」

「テレシアさん、そういう訳にもいかない。きっとこいつは異世界でも僕達の事を殺しに来たんだ。前世での因縁は僕が綺麗に解消する。春香ちゃんの為にも。それと確認したい事もあるからね」


 確認したい事……?


「来い、グングニル!」

『グングニルだと!?』


 蒼汰の声が空に響き渡ると同時に空から1つの光が落ち、蒼汰の手の元へと収まる。


『あれは、神槍グングニル!! 今回の転生者は神器を与えられているだと!? 前言撤回だ! なりふり構わずさっさと逃げるんだアキ!!』


 その槍は光と同時に現れた。黒光りし宝石の様な輝きを放っている、蒼汰の身長ほどの長さの槍。


「こいつには僕がこの世界でどれくらい強いのか、実験台になって貰う」

「好きにしていいが、周りの街の人には危害を加えないでくれ」

「分かってる、それじゃあ行くよ!」


 その言葉と同時に蒼汰の姿が消える。先程まで目の前に立っていたはずなのに。


『右上段に両手で私を持って構えろ!! 何が起きても私を離すなよ!!』


言葉のままにオウセンを横に構えた瞬間身体全身に強い衝撃が走った。


ガキンッ!!


何が起きたかは分からないが音だけが耳に残りいつの間にか街の外まで吹き飛ばされていた。

外に吹き飛ばされたと気付いた時には地面を転がる。視界は不安定で吐き気が催し身体の感覚が無い。だがオウセンの声だけは聞こえる。


『しっかりしろ! 次が来るぞ!!』


 次が来ると言ってもどこからくるん――――。


「はぁぁぁぁぁぁぁ!」


 転がり終わった所で声が聞こえた―――。

 蒼汰が先回りしていた。

 

 ドスッ!


 そのまま腹に強い衝撃がまた走り、先程とは反対方向へ、街の中に蹴り飛ばされる。

 吐瀉物と血を撒き散らしながら街の中を転がる。良く意識があるもんだ。

 30mほどを二度外へ中へと吹き飛ばされ往復したものだからか流石に喋ったり立ち上がる力は無かった。

 


「あれだけ強かった――、この世界じゃ――もんなんだな……」


 また先回りしたようで転がり終わった先にやはり蒼汰が立っていた。

 視界と気分は最悪で耳もおかしくなったようだ、全然聞き取れない。

 

「もう自分の強さも分かった。死んでくれ――さん」 


 手に持つ槍を片手で振り上げる蒼汰。

 まさかだよな……。この世界で生きていくのは大変なんだろうとは思っていたが俺を殺す相手が春香の次に可愛がっていた蒼汰だとは思わなかった。

 死ぬ瞬間走馬燈を見るというが、確かにこの一瞬で色々な事が思い出される。春香と蒼汰との沢山の思い出が。

 ゆっくりと槍が振り下ろされ、反射的に目を瞑る。目元から滴る何かの感触が繊細に感じる。

 


 これはまた、最悪な最後だな。

 
















「全く、私に内緒で何してるんだか。ちょっと借りるね」


 

 聞き覚えのある可愛らしいく優しい声が耳に響いた後、手に握っていたオウセンの感覚と共に意識が無くなった。

 最後まで読んで頂きありがとうございます!

 ちょっとまた中途半端な場所で終わってしまい申し訳ありません(´;ω;`)

 またすぐ書いて投稿出来るよう頑張りますので早く読みたい!と思って下さる方がいればブックマークの方よろしくお願いします!

 また何か変だったなーとか思う所があれば感想やレビューを書いて頂ければ作品品質向上に繋がりますのでお時間がある方、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ